薬椰→ヴェール 【変化】

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レート @reeet_tete

「ねぇ、くすりや」 『やくや!!なんだよ』 何時ものようにからかい交じりに翡翠に呼ばれ、反射的に返事をすれば楽しそうに笑う。 「君、ヴェールのことをどう思っているんですか?」 『は?』 意味が分からないと胡乱な視線を向ければ、面白いものを発見したときと同じ笑顔を向けられる。

2015-03-13 22:14:18
レート @reeet_tete

『どう思ってるって……友達?』 「その割には私よりも、親しくしているようですけど」 『……そうか?』 「えぇ、安心しているようにも見えます。まぁ、私は初めて会った時のことがありますからねぇ」 くすくすときれいに微笑む。マグカップを片手にぼんやりとヴェールのことを思い出す。

2015-03-13 22:16:33
レート @reeet_tete

初めて会ったときは純粋に綺麗だと思った。柔らかそうな白い髪、均整のとれた体つき、透き通るような白い肌。なによりも目を引いたのは、暗い輝きを放っていたエメラルドの瞳。 『あの目を何とかしたいと思ったんだよなぁ』 「目?」 『そ、初めて会ったときさ、ものすごく暗い目してたじゃん』

2015-03-13 22:19:10
レート @reeet_tete

「確かに。あ、こいつ叩き切ってやろうかなと思いましたもの」 『おいいいい!?』 「今はしません」 翡翠の物騒な言葉に驚く。いまだに慣れない、言動だ。 『それでさ、あの目ががこう明るい光を宿したらどれだけきれいなんだろうなぁって思った』 ずずっとマグカップの中身、黒豆茶をすする。

2015-03-13 22:20:53
レート @reeet_tete

「確かにヴェールの目は美しいですね」 『うん、まるで本物のエメラルドをはめ込んだみたいだからさ』 あれが輝いたらどれだけきれいなんだろう、一度でいいから見てみたい。 翡翠が物言いたげな視線を向けてくる。こいつの瞳もきれいな夕焼け色だ。 『なんだよ』 「……はぁ」

2015-03-13 22:24:44
レート @reeet_tete

『人の顔見て溜息吐くな!失礼な!』 「はいはいすみませんねぇ」 なにかを考え込む翡翠。 『最近はよく笑うようになったよなヴェール』 瞳にもだいぶ明るい光が満ち始めている。 「あなたが近くにいるからですよ」 『俺が?』 「あなたに救われたといっていました」 『そなの?』 初耳だ

2015-03-13 22:26:59
レート @reeet_tete

「君はヴェールの特別なんですよ」 『……』 何となく返事ができなかった。視線をさまよわせれば、苦笑する。 「気づくのにはまだまだかかるようですね」 『なにが?』 「自分で気づいてください」 思わず文句を言おうとした瞬間。 [こんにちは] 「こんにちは、ヴェール」 『ちはー』

2015-03-13 22:37:10
レート @reeet_tete

「君はヴェールの特別なんですよ」 『……』 何となく返事ができなかった。視線をさまよわせれば、苦笑する。 「気づくのにはまだまだかかるようですね」 『なにが?』 「自分で気づいてください」 思わず文句を言おうとした瞬間。 [こんにちは] 「こんにちは、ヴェール」 『ちはー』

2015-03-13 22:37:10
レート @reeet_tete

薬屋の扉が開いてヴェールが中に入ってきた。 薬椰に優しく微笑むのを見て、さりげなく翡翠は席を外す。 『今日も散歩?』 [えぇ] 『なんか、面白いことあった?』 [んーとくには] 何時もと同じように会話をする。ふと、瞳を見つめる。 エメラルドが真っ直ぐに自分を見つめていた。

2015-03-13 22:52:02
レート @reeet_tete

前まではまったくこちらを見ようとしない瞳が、いつからだっただろうか。自分を見つめるようになったのは。 意識するとなぜか心臓の鼓動が大きく聞こえた。 『?』 [どうしました?] 『なんでもない』 首をかしげていれば、おかしそうに微笑む。よく笑うようになった。素直に思った。

2015-03-13 22:55:27
レート @reeet_tete

『もっと笑ってほしい』 [はい?] ぽろっとこぼれた言葉は届かなかったらしい。なぜかホッとした。 「これはこれは」 戻ってきた翡翠はひどく楽しそうだ。 「ヴェール、もう一押しの様ですよ」 [そうですか?] 二人の会話に耳を傾けつつ、自分の変化に戸惑う薬椰であった。 ~Fin~

2015-03-13 22:58:51