オフィス緑

オフィスと続編
1
全∞ @all_zen_bu

オフィス緑① 食堂が美味しいって評判の本社に異動になった。初日から、何食えるんやろってワクワクしてた。 日替わり定食が二種類。これが名物なんやな。A Bどっちにしよー。迷うわ!! お昼時で混雑する食堂で列に並ぶ。 食券を出して注文。 「日替わりAひとつ。」

2014-07-25 00:29:55
全∞ @all_zen_bu

オフィス緑② 「A定ひとつ。」 ニコリともしないメガネっ子が、愛想なく注文を繰り返した。 カウンター越しに身を乗り出して声を掛けた。 「なぁなぁ、オマケしてくれへん??」 「は?無理です。大盛りは100円払ってください。」 「いや、大盛りちゃうねん。オマケやねん、オマケ♡」

2014-07-25 00:30:05
全∞ @all_zen_bu

オフィス緑③ 「出来ませ…」 言いかけたメガネっ子を突き飛ばすように別のおばちゃんが飛んでくる。 「オマケね、オマケ!!いいのよ、私が入れてあげるからぁ♡」 「やったぁ、おばちゃんおおきに!明日も来るからよろしくなぁ♪」 憮然とした表情でメガネっ子は調理場に引っ込んだ。

2014-07-25 00:30:10
全∞ @all_zen_bu

オフィス緑④ 次の日から、おばちゃん達が入れ替わり立ち替わりオマケしてくれるようになった。その後ろで、我関せずって顔で調理するメガネっ子が、気になったけど。 今日はいつもよりかなり遅くなってもうた。いつものおばちゃんたちの姿は無い。 代わりにメガネっ子がカウンターの中におった。

2014-07-25 00:30:14
全∞ @all_zen_bu

オフィス緑⑤ 「日替わりAは…」 「売り切れです。」 「日替わりB…」 「売り切れです。」 食い気味ww 「あの、何があります?」 「メニュー表見てください。」 「…あ、はい…じゃあ、カレー。」 「はい。」 注文を受けてメガネっ子が下がろうとするから急いで続けた。 「あと天丼。」

2014-07-25 00:30:20
全∞ @all_zen_bu

オフィス緑⑥ 「…は!?天丼!?」 「うん、天丼!!」 「食べ過ぎだし、バランス悪いしお勧めできない食べ方ですね。900円です。」 「あの~オマケ…」 「無理です。お金払ってください。」 メガネっ子が冷たく言い放って手を差し出した。 「……プラス3キロってとこですかね。」

2014-07-25 00:30:24
全∞ @all_zen_bu

オフィス緑⑦ 俺を見据えて突然そう言った。心当たりはある。 「異動してまだ2週間くらいですよね?太りすぎです。」 「言わんとって!!」思わず耳を塞いだ。 「食堂のみんなが甘やかすから、当然の結果です。栄養士としては黙ってられませんね。」 「栄養士なん?」 「調理師でもあります。」

2014-07-25 00:30:29
全∞ @all_zen_bu

オフィス緑⑨ 「だってあんたが作ったやつ、美味しいんやもん、しゃあ無いやん。太ったのあんたのせいやで?責任取ってや!!」 アカン、アカン、言うたらアカン。 「責任て…お門違いも甚だしいですね。」 「だからぁ…お昼ご飯だけちゃうくて、カロリー計算してくれへん??」 言うてもうた。

2014-07-25 00:30:46
全∞ @all_zen_bu

オフィス緑⑩ メガネっ子、固まっとる。 「好きになってもうた。ご飯だけじゃなくて、あんたのこと。」 なにゆうてんねやろ、俺。 「ちょっと、何言ってるかよく分かりません。食事のカロリーなら計算してあげますけど…それだけじゃないんですか?好きってなんですか?」 理解できないって顔で。

2014-07-25 00:30:53
全∞ @all_zen_bu

オフィス緑⑪ 「それだけやないです。それ以外のことも、それ以上のことも…したい。」 メガネっ子の口がポカンと開いたまま塞がらない。思い切り身を乗り出してその唇に迫ったら。 「衛生管理!!」 いきなり叫んで、殴られた(笑) どうしよう。好きになってもうた。 end.

2014-07-25 00:31:26
全∞ @all_zen_bu

続緑1 勢いで告白めいたことして、キスまで迫ってビンタされて。 あの子にすっかり無視されるようになってしもた。食堂でしか会えへんのに。 周りにはおらんタイプやったからどうやってアプローチしたらええか分からんくて、柄にもなく焦った。 強引に行った結果がこれや。あぁ、もう後悔。

2014-09-17 19:01:31
全∞ @all_zen_bu

続緑2 栄養士と調理師の資格あるくらい真面目やねんから、時間かけなアカンかったんに、勢いで押したのはまずかった。しゃーないから食堂のおばちゃんら巻き込んで情報を集めた。 シフト聞き出して、俺も時間休暇取って、仕事終わりに待ち伏せる。 あーこんなに緊張するん、いつぶりやろ。

2014-09-17 19:01:34
全∞ @all_zen_bu

続緑3 通用門から人が出てきた。 あの子かな?? 顔を上げたら驚いて目を丸くした彼女と目が合った。 (え…めっちゃ……可愛い) 髪下ろしてて、白いシャツにデニム。 食堂の三角巾と割烹着しか見たことなかってん。 自分が赤くなるのが分かった。アカン、恥ずい!!

2014-09-17 19:01:39
全∞ @all_zen_bu

続緑4 驚いた顔からすぐ冷ややかな顔になって、あの子が俺の前を通り過ぎる。 「あの!!待って!!」 「電車の時間があるので。」 「あ、じゃあ駅まで!!」 「あなた…今仕事中ですよね??」 「いや、休み取ってん。」 「……」 あの子が一瞬沈黙する。その隣をとりあえず一緒に歩いた。

2014-09-17 19:01:42
全∞ @all_zen_bu

続緑5 「あの、謝らせて??こないだの…」 「……」 「驚かせたやろ??急に…その、」 「あなたにはあんなのが普通なんでしょう??」 「いや、ちゃうねん!!」 「あいにくですけど、私はあんなことされて好きになったりしませんから。」 「あー、そんなこと言わんで…傷つくわ…。」

2014-09-17 19:01:47
全∞ @all_zen_bu

続緑6 「傷つくって…あなたが??」 「そらそやろ。好きな人にそんな軽蔑されたら泣きそうやわ。」 「……」 またあの子が黙る。 「あんな、お詫びさせて欲しいのと…チャンスくれへんかな??ごはん食べに行くとか。」 「……」 「なんでも付き合うで??買い物とか運動とか遊園地とか♡」

2014-09-17 19:01:51
全∞ @all_zen_bu

続緑7 「迎えにも行くし!!」 「結構です。」 「ほんなら映画は??ほら、最近公開したレストランが舞台の、シェフのやつあったやん??料理好きやろ??」 チラッと目が合う。 お、反応あった!! 「実は招待券貰ってん。なぁ、それだけでええから。」 ホンマは招待券なんて無いけど(笑)

2014-09-17 19:01:55
全∞ @all_zen_bu

続緑8 「あれは…見たいと思ってました。」 「ほんなら今度の土曜は??」 「……映画だけなら。」 「うん、うん!!」 「じゃあ、ここで失礼します。」 ちょうど駅に着いた。 あの子が頭を下げたから、こっちもつられてお辞儀する。 顔を上げたらあの子が笑ってた。 「なに笑てんのー??」

2014-09-17 19:01:59
全∞ @all_zen_bu

続緑9 「だって私の方が年下だし、ただの社食の社員なのに、そんな深々お辞儀なんて、可笑しいです。」 笑いながら改札を通る。 「あ、じゃあこう??」 俺は嬉しくて、右手を大きく振った。 「それも可笑しい。」 あの子が周りをチラッと見回して、恥ずかしそうに笑った。 「失礼します。」

2014-09-17 19:02:01
全∞ @all_zen_bu

続緑10 約束の日の前日。 仕事が残って定時に上がれなくて、一旦屋上の喫煙室に休憩に行った。 (あれ??) あの子が落ち着かない様子で喫煙室の周りをうろうろしとる。 「どないしたん??」 声を掛けたらまっすぐ近付いてきた。 「明日、行きません。」 「え…??ええっ!?」

2014-09-17 19:02:06
全∞ @all_zen_bu

続緑11 思いもよらない言葉に焦る。 「なんで??都合悪くなったん??」 「違います。あなたとはそういう風に、会わないってことです。この先もずっと。」 なんか、怒っとる…?? 「俺、なんかした!?」 「してないんじゃないですか?? 会社で女性と抱き合うのが、あなたの普通なら。」

2014-09-17 19:02:10
全∞ @all_zen_bu

続緑12 冷ややかな視線。 すぐ返事出来なかったのは、心当たりがあったから。 会社の受付嬢をフった時抱きつかれた。それ見られたんかも。 この子と付き合いたかったから。 けど、説明しても言い訳がましいやんな。 「話はそれだけです。失礼します。」 言うて帰ろうとするあの子を止めた。

2014-09-17 19:02:14
全∞ @all_zen_bu

続緑13 「待ってや。」 あの子が俺を一瞥する。 「ちゃうねん!!ホンマに彼女なんておらんねん。……気ぃ悪くさせたら、ごめん。」 「謝らなくて結構です。あなたの暇潰しに付き合うつもりありませんから。…どうせ周りにいないタイプで、珍しかっただけ。」 「そんな、こと!!」

2014-09-17 19:02:18
全∞ @all_zen_bu

続緑14 否定しようとする俺を、遮るように続ける。 「分かってますから。 あなたみたいに黙ってても周りが放っておかないような人が、本気で社食の地味な社員相手にするわけないって。」 フイと横を向いた横顔に、うっすら涙が浮かんで見えた。

2014-09-17 19:02:22
全∞ @all_zen_bu

続緑15 わざとやない。けど傷付けてしまった。 「色恋とは縁遠いですけど…私、そこまで鈍くない。」 呟くように、小さな声。 「信じてもらえん??俺本気やで。」 「遊ばれるのは、御免です。」 「そんなこと、言わんとって!! 俺の方から、好きになったんやから…!!」

2014-09-17 19:02:33