オフィス黄

オフィスと続編
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全∞ @all_zen_bu

オフィス黄① 「錦戸、午後の資料出来た??」 「はい!あとは数字が揃えばなんとか間に合います。」 「昨日の今日で忙しいけど、数字間違うと説得力なくなるから注意してね。」 営業課に配属されて組んだ主任の先輩。 営業車の運転も、重い資料にも、女だからって何一つ言い訳しない。

2014-07-22 00:03:39
全∞ @all_zen_bu

オフィス黄② いつもキリッとスーツ着こなして、何でも率先してやる姿を見せる。なんで毎年新人担当なのか、良く分かった。 でも。 営業車を野良猫って呼んだり(薄汚い色が似てるから) 営業カバンを凶器って呼んだり(それで痴漢捕まえたり) ちょっと変やけど可愛い先輩で。

2014-07-22 00:03:45
全∞ @all_zen_bu

オフィス黄③ 社会人として完璧に見える先輩に、早く一人前って認めてもらいたくて、俺は今日も張り切ってた。 「主任、運転代わりますよ。」 午後のプレゼンは、営業先に車で向かう。 「いいから錦戸は発表に集中。一人のプレゼンは初めてなんでしょ?準備にやり過ぎは無いよ。」

2014-07-22 00:03:54
全∞ @all_zen_bu

オフィス黄④ 駐車場でピシッと正論を言われ、すぐ引き下がる俺。 頭ん中に叩き込んだし、大丈夫やのに。 営業先の会議室で準備を始める。 パワーポインタ、紙の資料、商品見本…と。 30分以上余裕をもって、準備万端や。 先輩と改めて資料に目を通す。 と、すぐに先輩の表情が変わった。

2014-07-22 00:04:02
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オフィス黄⑤ 「錦戸、これ違うんじゃないかな??」 指摘されたのは、商品の効果を示す大事な数値やった。 先輩が自分の手持ち資料を出してくる。 「実験結果の数値の一覧。こことここ、1ヶ月で平均値出すと…」 「ホンマや…」 初めに注意されとったのに。

2014-07-22 00:04:10
全∞ @all_zen_bu

オフィス黄⑥ 「初歩的なミスね。Excelの式間違えたのかな。」 「すみません…」 冷や汗が出てきた。 先輩が自分の腕時計を見る。 「よし、この一覧下のコンビニでコピーしてきて。私より錦戸の方が早い。データは私が直しとく。あと資料は手書きね。」 不安そうな俺を見て先輩が笑う。

2014-07-22 00:04:19
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オフィス黄⑦ 「大丈夫!大事な数字だから、目立ってちょうどいいよ。さー行って。」 「はいっ!」 でも、動揺した俺は結局プレゼンもしどろもどろで…何度も先輩からフォローを貰う始末。 全部終わって駐車場に戻る。乗り込もうとする先輩に堪らず声を掛けた。 「主任!!…運転…代わります」

2014-07-22 00:04:27
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オフィス黄⑧ 先輩は少し間を置いて、 「…うん、頼むね。」 そう言って代わってくれた。 乗り込んで出発しようとすると、先輩が声を掛けてきた。 「錦戸、誰だってする失敗よ。そんなこの世の終わりみたいな顔しない!!…いい男が台無し。」 「……数字には気を付けろって一番に言われたのに」

2014-07-22 00:04:32
全∞ @all_zen_bu

オフィス黄⑨ 「本番もぐちゃぐちゃやし、全然一人前ちゃうし…」 「それでいいの。」 「……え?」 「一人前ってね、何でも一人で出来るってことじゃないんだよ?必要なら助けを求める事が出来るのも、一人前には大事なの。誰かと一緒に仕事を出来るのがホントの一人前だから。よく頑張ったね。」

2014-07-22 00:04:37
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オフィス黄⑩ 俺はハンドルに突っ伏した。 情けないけど泣きそうで。 失敗したのに『頑張ったね』やなんて。 一緒に仕事出来て、嬉しくて。 「泣くな錦戸!!男前が勿体ないぞ。」 頭をヨシヨシされて、俺はこの人に惚れた。 仕事でも、男としても、認められたい。 そう決めたんや。 end.

2014-07-22 00:04:43
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続黄1 「錦戸、ちょっと。」 「はい!!」 主任に呼ばれてデスクに向かう。 「急だけど、異動決まったから。」 「は??いや、まだ半年ですやん??俺…なんかやらかしましたか!?」 「悪い話じゃないよ。大丈夫。」 主任が笑う。 「とりあえず今夜空いてる??」 「へ??」

2014-08-22 12:52:15
全∞ @all_zen_bu

続黄2 思わず間抜けな声が出た。 「デートあるならいいけど、送別会多分忙しくてしてあげられないから、今夜なら私が奢ってあげるよ。」 「デートなんか、ありませんよ!!」 食い気味に返事する。 二人でなんて…千載一遇のチャンスや。 「そう。じゃあ定時に上がれるように頑張ろう。」

2014-08-22 12:52:19
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続黄3 仕事終わらせて先輩についていく。 雰囲気の良い、個室のあるバー。 「ここ、ご飯も美味しいのよ。」 勝手知ったる感じで店員に話しかける。 「カウンターか狭い個室しか空いてないって。どうする??仕事のこともあるから、やっぱ個室かな…。」 どうするって聞いといて、勝手に決める。

2014-08-22 12:52:24
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続黄4 てゆーか、狭めの個室って、絶対カップル仕様の狭さやろな…。主任分かっとるんかな?? 俺はラッキーやけど。 案内された部屋は案の定横並びに座るタイプの部屋で。 主任の顔が一瞬アレ?ってなる。部屋変えるって言うかと思ったけど、あっさりまぁいっか、と独り言言ってさっさと座った。

2014-08-22 12:52:30
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続黄5 「とりあえずおめでとう。」 「異動ってなんすか??」 「本社から若手推薦するように指示があって、それに推したの。そしたら選考通ったの。本社勤務だよ。」 「ホンマですか!?」 「うん。あんたなら胸張って推薦出来るなって。部長と私のハンコ押したから、しっかりやってよ錦戸。」

2014-08-22 12:52:36
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続黄6 「が、頑張ります。」 主任が俺を認めてくれたんや。 そう思ったら嬉しくて、アルコールも進んだ。 「それにしても、顔が良くて、仕事も出来て…錦戸はほんとに良い男だね。モテるんだろねぇ。」 「なんすか、それ。」 「女がほっとかないよ。ほんと、有望だもん。モテるんだろなぁ。」

2014-08-22 12:52:44
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続黄7 前から主任は俺のコト良い男とか、モテるとか言うんやけど、今日は言い方が妙に引っ掛かる。 多分お互いお酒が入ってるせいやと思うけど。 「別にモテませんよ、俺。」 「またまたぁ。」 「いや、仮にモテたとしても、誉めてます??それ。」 「誉めてるよ??」 「そうやろか??」

2014-08-22 12:52:49
全∞ @all_zen_bu

続黄8 「なんか馬鹿にされてる気がしますよ。」 「なんでよ!?人気ないよりモテたほうが絶対いいじゃない。人間関係だって円滑だし。」 「100人に好きって言われるより、自分が好きになった1人に好きになってもらうほうが、ずっと大事で難しいと思いますよ??」 主任が口を噤んだ。

2014-08-22 12:52:56
全∞ @all_zen_bu

続黄9 「…うん、そうかぁ。」 「先輩そーゆーとこ、鈍いんちゃいます?」 「うん、悪いとこだ。ごめんね。」 言いながら残ってたワインを飲み干した。 「別に鈍くてもええですけど、困ることもあんねん。」 「なに?」 「例えば、好きになった1人って、誰か分かります?」 「錦戸の?」

2014-08-22 12:53:05
全∞ @all_zen_bu

続黄10 「え…知らな、いけど。ん?私知ってる人なのかな?」 「ほら、鈍いやん。」 お酒の力借りて、言う。 不意をついて、隣の主任に顔を近づけた。 「もしかしたら自分かも、なんて…少しも思ってへんやろ?」 キョトンとした顔でまばたきをする、主任の目を見たままキスした。

2014-08-22 12:53:11
全∞ @all_zen_bu

続黄11 主任が固まってる。 「俺は主任のコト、ずっと見てましたよ。」 言ってもう一度唇を重ねた。 年下って馬鹿にされんように。かといってガツガツせんように。頭ん中でいろんなコト、一瞬で考えた。 上唇と下唇交互に食べるように啄んで。 顔見て、目を合わせてからゆっくり舌入れた。

2014-08-22 12:53:23
全∞ @all_zen_bu

続黄12 ゆっくり離れると主任が戸惑った様子で、手の甲で自分の口を隠した。 「錦戸、キス…本気過ぎ。」 「本気やもん。なんでも手を抜くなって主任が教えてくれたんやん?」 「それは…仕事でしょ?」 言いながら主任は首を振った。 「ダメ、酔っ払ってる。お手洗い…行く。」

2014-08-22 12:53:35
全∞ @all_zen_bu

続黄13 立ち上がった主任の腕を掴んだ。 ビクリと肩を震わせて、動きが止まる。 それから逃げるように身を引こうとした。 「怖いん?何される?って顔に書いてある。」 言いながら立ち上がって、両肩掴んで引き寄せた。 「逃がさんし。」 すぐ奥まで舌入れて、好きなだけ口内をまさぐった。

2014-08-22 12:53:44
全∞ @all_zen_bu

続黄14 「っ、んは…ぁ」 息継ぎさせないくらい長いキスをした。 主任の足がふらつく。 「もっ…ぅ」 唇を離すと息を上げて俺の胸に倒れてきた。そのまま腰を強く抱き寄せて支える。 「ん…立てな、い…。」 お酒と相まって、腰砕けたみたいにフラフラしてる。

2014-08-22 12:53:49
全∞ @all_zen_bu

続黄15 多分経験は少なくない主任やけど、明らかに動揺してる。 仕事中には見せない顔。 どうにか理性を保とうと葛藤してる、その耳元で囁いた。 「感じすぎやで。」 言うと、身をよじって離れようとする。 「錦戸が、変な気に…させるから…でしょ。」 「ん。もっと変な気になる??」

2014-08-22 12:53:55