1 あー…いつ見てもきれいやなあ サラサラの髪 スラリと伸びた手足 俺の憧れ… あの笑顔で勧誘されて フラフラとバスケ部に入ってもうた 球技苦手やし 大体男子と女子別々やん それにも気づかんかった俺は いまだに補欠なんやけど 隣のコートのあのひとを 見てるだけで幸せやー
2014-05-13 21:37:412 "おいマル!よそ見すんな‼︎" 「は、はい!」 また怒られた 女子のコートに聞こえるやん まあ俺のことなんか 気にしてないやろけど 新入部員も入ってくるし ちょっとはしっかりせなな 今日も体育館は 見学の新入生でいっぱい どうみても女の子が多い 理由ははっきりしてる
2014-05-13 21:37:543 みんな俺が目当て…なわけない 男バスのキャプテン、横山先輩 男前でバスケもうまい 寡黙でやさしくて とにかく男からみてもカッコええねん 入部するかどうかはともかく 噂の横山先輩を一目見ようと 女の子が集まってくる 俺のことなんか だーれも見てないねんけど 緊張してまう
2014-05-13 21:38:074 練習が終わって あのひとと横山先輩が しゃべってる お互いバスケ部のキャプテン同士 出身中学も一緒らしいし 仲良さそう 美男美女っていうん 絵になるなー ギャラリーもざわついてる やっぱ女の子はみんな 横山先輩みたいな男が ええんかな 横山先輩やったら しゃあないか
2014-05-13 21:38:225 『隆ちゃん…隆ちゃん!』 え?隆ちゃん? 「…へ?えぇ?」 『なにボーッと見とれてるの?』 「なにって…その…なんもないわ おまえこそなんでここ」 こいつは俺の幼なじみ そういや今年この学校に 受かったっていうてたな 『バスケ部のマネージャーに なってあげる!』
2014-05-13 21:38:406 「は?なってあげる…て おまえも横山先輩狙いかー?」 『え?よこやま…?』 ごちゃごちゃやってたら みんな寄ってくる "どうしたどうしたー" "マネージャーになってくれんの?" みんなやいやい言い出す "マルの彼女かー?" 誰かが言った一言が 体育館に響きわたった
2014-05-13 21:38:597 へ?なに急に静かになってんねん 横山先輩たちも振り返る みんなが俺を見る 「ち…ちゃうちゃう!ただの幼なじみー!家が近所なだけー」 "ほんまかー顔赤いぞー!" あのひとにも聞こえてもうたんちゃう 違う!違うってー! 彼女なんかおらん 俺が…俺が好きなんはー!
2014-05-13 21:39:238 『フンそんな全力で否定しなくても いーのに…隆ちゃん一緒に帰ろ!』 「あーその隆ちゃんていうのん やめてくれへん?」 『だってーじゃあなんて呼ぶの?』 「そらおまえ丸山先輩やろ」 『ぷっ!んーまあ努力するね』 笑いながら走り出す… なんかこいつにかき回されそうな俺
2014-05-13 21:39:459 あのひとにつり合うような 男になりたい 考えた結果…早起きして 自主練することに決めた こんなに早く登校したん初めてや 案外気持ちええもんやな 颯爽と体育館へ向かう俺 え?誰かおる? 体育館に伸びた渡り廊下に たたずんでるのは憧れのあのひと はわわ…思わず隠れる俺
2014-05-14 22:03:2310 なんで隠れてんねん 普通に挨拶したらええのに いやふたりきりになれるチャンス? わーどうしよ…焦る〜 扉の陰でひとり悶える俺 意を決して出て行こうとして はっとした 先輩…泣いてる? 渡り廊下のフェンスにもたれて どこを見てるんやろ 確かに頬に涙が光ってた
2014-05-14 22:03:3611 隆ちゃんはひとつ年上の幼なじみ 小さい頃はうちのお兄ちゃんと 隆ちゃんと私…いつも3人で遊んだ 男まさりでわがままな私に ふたりはいつも優しくて いつの頃からか 大きくなったら隆ちゃんの お嫁さんになるって決めてた 隆ちゃんにとっては ただの幼なじみなんだろうけど
2014-05-14 22:03:5012 隆ちゃんが高校生になって バスケ部に入ったっていうから マネージャーになろうって決めた 晴れて同じ学校に合格して やっと念願が叶った 一緒に登校しようと早起きして 誘いに行ったのに 今日はもう出かけたって 朝練とか聞いてないよ? 慌てて追いかける
2014-05-14 22:04:0713 見たらあかんもん見てしもた なんで泣いてるかわからんけど みーひんかったことにしよと思った そーっと後退りする…その時 『隆ちゃん…?なにしてんの?』 「わっ、おまえ!シーっ」 思わず口を塞いで校舎に戻る わけもわからず暴れるけど とりあえず離れたとこまで連れてくる
2014-05-14 22:04:2514 「ごめん…!」 『ちょっ…なに?隆ちゃん』 「行こ」 『練習しないの?』 「うん、ちょっと腹痛なってきた トイレ行ってくるわ〜」 『もう!』 バタバタ走って行く隆ちゃん… さっき渡り廊下にいたの △△先輩だったよね なにかあったのかな…?
2014-05-14 22:04:5715 『先輩!おはようございます』 "え?あ…おはよ!" 『どうかしました?』 "え?" 『今、泣いてるみたいだったから』 "ストレートに聞くんだね" 『すいません』 "好きな人…見てた" 『え…』 "毎朝ここから見てるの" ここからって…校門 登校してくる人を見てるの?
2014-05-17 23:53:4516 『好きな人…』 "叶わない片想いなんだ…" 『なんか意外です…先輩もてるのに』 "全然!さ、行こっか" いつも通りの先輩に戻って 3年の校舎に走っていく 私も行こ… 反対側の校舎に入って歩いていると トイレから隆ちゃんが出てきた
2014-05-17 23:54:1217 『本当にトイレだったの?』 「何してたん」 『△△先輩と話してた』 「なんて?」 『言っていいの?』 「え、ええよ…」 『毎朝あそこで好きな人見てるって』 「…へ…え」 『隆ちゃん…ショック?』 「なんでやねん!ほら行くで」
2014-05-17 23:54:3118 なんでやろ…? あんまりショックちゃうわ あんなに先輩のこと 好きやと思てたけど 好きな人て誰やろ… あのひとが片想いするような 誰にしても俺が敵う相手やないのは はっきりしてる うまくいけばええのになー 負け惜しみやなくそう思えた #エイトで妄想
2014-05-17 23:54:4819 『テスト前だから部活ないよね』 「おーそうやな」 『隆ちゃん、図書室で放課後一緒に 勉強しよ!借りたい本もあるし』 「はあ?いややし、俺帰るで」 『ケチ!もう一緒に帰ってあげない』 「誰も頼んでないし」 『ふん!』 あーあ…またやっちゃった なんで可愛くなれないかな
2014-05-20 19:02:0420 放課後… 図書室で古文の訳本を借りる ふと思いついて書棚の間を歩く 『あ、あった…』 分厚い本を持ったまま 背伸びして本を取ろうとすると 後ろからきれいな手が伸びてきた "これ?バスケのルールブック" 『横山先輩!』 あ、笑われた 『よく考えたらルール知らなくて…』
2014-05-20 19:02:1721 "バスケのこと知らんのに マネージャーになったんや? マルのため…?" 『そんなんじゃないんです!…ただの 幼なじみで…隆ちゃんは全然相手にしてくれなくて…えっと』 "ふ…バスケのルールやったら テスト終わったら教えたるよ 今日は帰って勉強し" 頭をぽんぽんと叩かれる
2014-05-20 19:02:2922 "今日はマル、一緒じゃないん?" 『一緒に勉強しよって言ったけど いややーって先に帰っちゃいました』 話しながら下足室に下りていくと 雨が降り出してる "うわ、雨ふってきたやん" 『私、傘持ってます…どうぞ』 "どうぞって…いや…そしたら 俺も入れてくれる?"
2014-05-20 19:02:4323 学校のアイドル横山先輩と 相合傘してるなんて 誰かに見られたら大変… ヒヤヒヤしながら下向いて歩いた 私の小さい折りたたみ傘を さしかけてくれてるけど 先輩ほとんど入れてなくて なるべく先輩が濡れないように そばに寄って歩く 隆ちゃんは濡れずに帰れたかな…
2014-05-20 19:02:5924 部室に忘れ物して取りに行ってたら 雨降ってきた あいつ傘持ってへんかな? さっき怒らせたけど 図書室のぞいてみよかな 本降りになり出した校庭を走る あ! 見たことあるオレンジの傘 あいつと… …横山先輩⁈ え…思わず足が止まった #エイトで妄想
2014-05-20 19:03:4525 あれあいつと横山先輩… なんで先輩と…? 図書室で勉強するんちゃうん いつのまにかそばに来て えらそうに言うてくるんちゃうん 隆ちゃん傘持ってないのー? しょうがないなー入れたげる! …って しおらしくうつ向いて 先輩と寄り添って なんか…違うやん 違うやん…
2014-05-21 23:27:36