【第四部-参】雲龍がお礼にくれたもの #見つめる時雨

雲龍 龍鳳
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龍鳳視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「皆さん、任務お疲れさまでした。今日はゆっくり休んで下さいね」 提督が穏やかに微笑みながら言います。私達は提督に敬礼をし、そして部屋を後にしました。 「…ふぅ」 今回も無事に任務を終えることが出来たことで、私はほっと胸を撫で下ろしました。

2015-03-23 21:30:39
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…護衛した客船に乗ってた女の子、すごい一生懸命に私の艦載機に手を振ってたな…。ふふ。私は微笑ましい気持ちを胸に、疲れた体を洗い流そうとお風呂へ向かおうとしました。でも、その時私の背中にずっしりと何かがのしかかって来ました。 「…きゃっ!?」

2015-03-23 21:35:35
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「雲龍…!?わっ、わっ…倒れちゃいますー!」 雲龍は私よりも背が高い。そんな雲龍に遠慮なしに体重をかけられたらバランスが…きゃあ!? 「…大丈夫?」 「…謝る気があるんでしたら、まずどいてくれませんか…」 主に胸が押し潰されて痛いです…。

2015-03-23 21:40:35
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「で、いきなり何なんでしょうか…」 ようやくどいてもらい、私に覆いかぶさってきた理由を尋ねる。…でも、その答えは彼女の口からではなく、別のところから聞こえてきました。 「…あ」 大きなおなかの音。勿論、目の前にいる彼女のもの。 「…お腹空いたんですね」

2015-03-23 21:45:36
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私は雲龍を食堂へ連れていきました。間宮さんは既に店仕舞いをしていたので、私が作ることにしたんです。食堂にある台所は自由に使えるようになっているので、私はたまにこうして誰かに料理を振舞ってみたり。雲龍は今回僚艦として活躍してくれたので、そのお礼も兼ねていました。

2015-03-23 21:50:35
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

時雨が言うには、雲龍にはあまり刺激の強すぎない、胃に優しい料理が良いとのこと。おっきな身体の割には繊細なようです。…何だか庇護欲が湧いてきます。私は台所を物色しながら、美味しく食べてくれそうなものを考えました。…あ、パスタがある。

2015-03-23 21:55:35
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私はエプロンを身に着け、台所の前に立ちました。沸騰したお湯でパスタを茹でながら、並行して大根をおろしていきます。ベーコンは細切りにし、しめじを石づきでほぐした後、油を引いたフライパンでベーコンとしめじを炒めます。火が通ったら、大根おろしと調味料を入れて一煮立ち。

2015-03-23 22:00:51
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

隣で雲龍が目をキラキラさせながら私の手元を見ています。まるで子どものよう。ふふ。 「あと少しで出来ますからね」 雲龍はうんうん、と頷きながら、再び食い入るように見て来ました。…本当に何でしょう、この可愛い生きものは。

2015-03-23 22:05:36
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「はい、お待たせしました。大根おろしときのこの和風パスタです」 「わぁ…」 「ふふ、冷めないうちに召し上がれ」 雲龍は両手を合わせて「いただきます」と言うと、お箸を伸ばしました。雲龍の口にするするとパスタが吸い込まれていきます。 「…美味しい」

2015-03-23 22:10:37
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

雲龍はペースは遅いながらもその手は止まらず、気づけば全部食べていました。 「ごちそうさま」 食後のお茶を啜りながら、雲龍は満足そうに言いました。 「お粗末さまでした。綺麗に食べてくれましたね」 「ええ、とても美味しかったもの」 「そうですか。作った甲斐がありました」

2015-03-23 22:15:35
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「じゃあ私は片付けがありますから、雲龍はもう今日は部屋に戻ってゆっくりしてください」 時計を見るともうこんな時間。明日は私も雲龍も一応非番だけれど、緊急の任務が入るかもしれません。それを考えると早めに寝て欲しく思いました。 「あ、待って、龍鳳」 「はい?」

2015-03-23 22:20:36
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…あの、何をしてるんですか…?」 雲龍の声に振り向くと、私は正面から抱き締められました。…これは何なんでしょう…。 「龍鳳、ありがとう。お礼がしたいのだけれど、私、今は何もあげられないから」 …これはお礼代わりということなんでしょうか?…相変わらず不思議なひとです。

2015-03-23 22:25:36
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…まぁ、気持ち良くないこともないです。でも料理のお礼にハグだなんて、私初めてですよ。 「ふふ、ありがとうございます」 …あ、でも、もしこの状態を誰かに見られたら誤解されそう…。そろそろ離れてもらわないと…。 「雲龍、もうそろそろ…」

2015-03-23 22:30:39
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「きゃあ…!?」 突然、耳にむずがゆさ走りました。私は自分の身に何が起こったのか、一瞬わかりませんでした。しかし、それが私の耳にもう一度走ったとき、ようやくその正体に気づきました。 「う、雲龍…!?や、やめ…」 雲龍が、私の耳を指で撫でていました。

2015-03-23 22:35:35
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「やっぱり」 「な、何がやっぱり何ですかぁ…!?」 「天城もね、耳をこうされるの好きなのよ」 「わ、私は好きってわけじゃ…んぁっ」 脚の力が抜け、しゃがみ込んでしまいそうになりましたが、私は雲龍に抱き留められました。

2015-03-23 22:45:35
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「い、悪戯はやめて下さい…あっ…」 雲龍の指が私の耳殻を沿って這っていきます。やだ…何でこんなこと…。雲龍の腕から抜け出そうにも、しっかりと抱きしめられていて叶いません。 「龍鳳って、とても感じやすいのね。…気持ちいい?」

2015-03-23 22:50:36
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「だ、駄目です…!こ、こういうことは…好きな人とするものでしょう…」 精一杯の力を振り絞って、私は雲龍の身体を押しました。雲龍の腕はやんわりと解け、私は解放されました。…というか私も何言ってるんだろう…。抗議の方向性がずれてるような…。

2015-03-23 22:55:34
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…本当に雲龍はよくわかりません。もしかして、これもお礼なんでしょうか…?悪意と言うか、そういうものが一切感じられませんでした。 「…良くなかった?」 「そ、そういう問題じゃないです!」 …正直感じちゃいましたけど…!

2015-03-23 23:00:53
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「何が問題なの?」 「だから、こういうことは…」 「好きな人と?」 「そ、そうです!」 「じゃあ、問題ないわ」 …え?それは一体どういう…。

2015-03-23 23:05:37
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私の頬に、雲龍の両手が添えられました。そしてゆっくりと雲龍が近づいて来て…。 「ふぇ!?ちょ、ちょっ…」 しっとりとした感触。…彼女の唇が、私のそれに重なっていました。え?何…何が起きてるの?どうして、私…雲龍とキスしてるの…!?

2015-03-23 23:10:39
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ぬるりと、生温かいものが唇を割って入ってきました。それは私の舌を探し当てると、絡みつくように纏わりついてきました。 「あっ…んっ…んぅ…!?」 私は雲龍の身体を何度も叩きました。でも、 「ふぁ…んっ…んんー…!?」 舌を思い切り吸われ、私の力は抜けていきました。

2015-03-23 23:17:18
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…唇を解放された後、私は少しの間呆然としていました。わけがわからない。その一言でした。…そんな私に、雲龍はいつもと同じ口調で言いました。 「私、貴女のこと、好きよ。だから問題ないわ」 …雲龍が?私を…?

2015-03-23 23:20:35
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…私って昔馴染みがとても少ないから、貴女がここにいるのを知ってすごい安心したの。最後の機動部隊を共にした、貴女が。それに今日みたいに料理を作ってくれたり、優しくしてくれる。だから、好き」 え…え…。

2015-03-23 23:25:36
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

でも…雲龍は時雨のことが好きなんじゃ…?…彼女にそれを聞く気力は、私には残っていませんでした…。 「…もうこんな時間。あんまり遅いと天城が心配するから戻るわね。…おやすみ、龍鳳。今日はごちそうさま。また食べたいわ」 …そう言って、雲龍は戻っていきました。

2015-03-23 23:30:35