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中森明夫氏による『KAGEROU』の個人的な感想

コラムニスト中森明夫氏のツイートをまとめました。 ※ネタバレありです。注意してください。 ※12/20編集しました。
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中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
『KAGEROU』読了。これはひどい! と思った。文章はひどい、比喩は陳腐、人物描写は平板、セリフは凡庸、構成は粗い…よっぽど途中でやめようかと思った。これがポプラ社小説大賞? ありえない! これが大ベストセラー? ふざけんな! 真面目に小説書いてるのバカらしくなった。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
それでもなんとか最後まで読み通した。結果…びっくりした。意外だ。なんと…感動した。正直に告白する。涙がこぼれた。近年、読んでもっとも心を動かされた小説の一つだ。このツイートをするかどうか随分、迷った。でも、いいや。…えいや! っと、やってやれと思った。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
最初に断っておきます。これはまったく私の個人的な感想です。文学としてどうかとか、賞に値するかとか、そういうことは知りません。ちゃんと書店でお金を払って買った一読者であり、かつ自身も小説を出版した新人作家として(そしてアイドル評論家として)の感想です。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
思いっきりネタバレなので注意! ストーリー。40歳の男が借金に追われ自殺しようとする。止めたのは臓器移植団体の職員。男は自分の全臓器・身体を提供する代わりに家族にお金を遺す。病院に収容され、自分の心臓を提供することになる20歳の女性と出会い、一時の逃避行。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
…てなストーリーはどうでもいい。私が注目したのは心臓を失った男が人工心臓を埋め込む設定。なんとそれが…ゼンマイ仕掛けなのだ! ありえない!? 大ブーイング。わずかに肯定的評価してる大森望氏でさえ呆れていた。つまり映画化してもゼンマイ仕掛けの心臓のシーンはありえないでしょうと。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
KAGEROUネタバレ注意! …寝転がって読んでた私が、起き上がったのはこの場面だ。機械装置に繋がれてた男が機械を引きちぎり自らのゼンマイ仕掛けの心臓のネジを巻きながら、見そめた二十歳の美少女と逃避行、穴に潜りこんで愛を語る。この場面で不覚にも涙がこぼれた。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
断言しよう! 『KAGEROU』は水嶋ヒロの私小説だ巨大な機械に繋がれてかろうじて生きていたのは芸能人としての彼自身だ。病を患う二十歳の美少女は絢香そのものだ。彼女との想いを遂げるために彼は巨大な機械(=芸能プロ)から自らの身体を引きちぎった。それは自らの命を賭した決断だった!
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
そう気づいてから私はずっと泣きっぱなしだった。泣きながら『KAGEROU』を読んだ。病の少女・絢香と結ばれた瞬間から水嶋ヒロは芸能プロから仕事を干された。芸能人としての彼はその生命をおびやかされた。比喩ではない。おそらく彼は自殺を考えたのではないか? もしや絢香との心中も…。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
なぜ断言できるか? 私自身がそうだから。私は水嶋ヒロとよく似たタイプだと思う。自信家で一見、楽天的…。そういうタイプの男が追い込まれて自殺を考えた時、どうするか? 冗談を言うのだ。『KAGEROU』に散見されるダジャレ、腰くだけギャグがその証拠。あれは必死の男のギャグだ。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
『KAGEROU』の評でもっとも批判的なのは書評家の豊崎由美さん@toyozakishatyouのもの。その豊崎さんが唯一、評価するのは主人公がゼンマイ仕掛けの心臓のネジを巻き忘れないこと。さすが豊崎社長! たしかにあの場面は感動的だ。…なぜか?
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
追い込まれた水嶋ヒロが必死で自らのハートのネジを巻きながら書いたのだろうから! 穴に逃げ込んだ男のゼンマイ仕掛けの心臓のネジを少女が巻いてあげる場面。そこで不覚にも私は涙を流した。まぎれもなく水嶋ヒロと絢香が互いを励ましあい、なんとか生き延びようとするその姿が浮かんだ。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
『KAGEROU』はひどい小説だと非難されている。文学の名に値しないとも言われる。その受賞は出来レースとも疑われている。しかし…。これだけは言いたい。人気スターである青年がすべてを投げ打って愛する女性と生き延びるために本気で書いた小説なのだ! その「本気」に撃たれた。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
水嶋ヒロが小説を書いていた頃、私もまた小説を書いていた。私の『アナーキー・イン・ザ・JP』は『KAGEROU』の百分の一の売り上げにも達しないかもしれない。それでもその「本気」では負けていない。だからこそ彼の「本気」もよくわかる。伝わってくる。本気で小説を書いたものどうしとして。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
『KAGEROU』は再生の物語だ。主人公が一度死んで甦るように、俳優・水嶋ヒロもまた死んで作家・齋藤智裕として再生を果たす。そんな祈りがこめられている。かげろうという名の昆虫が短くもはかない命を生き、次代に生命を託すように。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
『KAGEROU』を読み終わってわかった。水嶋ヒロは(物語中の)ヤスオであり、齋藤智裕はキョウヤなのだ、と。これは一度死んで、生き延びる男の物語だ。よくできた小説や良質の文学を求める読者にはお薦めしない。今、自らのハートのネジを巻いて必死で生きている人にこそ薦めたい。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
補足です。『KAGEROU』には個人的に感動しましたが、小説としては失敗作だとは思います。あくまで小説としての完成度を求める方にはお薦めしません。失敗の理由は多々ありますが大きいところを指摘しておきます。医学用語を駆使して中途半端にリアリスティックにしているところ。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
そのためゼンマイ仕掛けの人工心臓が出てきた時点で「ありえない!」と思ってしまう。私はゼンマイ仕掛けの人工心臓のほうを活かすべきだと思う。この小説の魅力はそちらにある。そのため医学用語や中途半端にリアリスティックな部分は捨てて最初からファンタジーとして描くべきだった。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
著者の齋藤智裕氏はカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』に影響を受けていると思いますが、カズオの件の作品では医学用語がほとんど出てきません。最初からシチュエーションのアイデア一発勝負で(SF作品ともなりえたものを)あくまでファンタジーとして押しきっています。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
映画化した場合、ゼンマイ仕掛けの人工心臓の場面はありえないとの指摘があります。これはティム・バートン監督の『シザーハンズ』のような映画にするべき。ジョニー・デップが両手がハサミになった青年の悲喜劇を好演して感動させた。私がファンタジーにするべきとはそういう意味です。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
『KAGEROU』を文学に近づけるにはシュールなシチュエーションを最大限に活かし、かつ描写の精度を上げる鍛錬が必要。ラテンアメリカ文学が参考になる。作家・齋藤智裕さんにはコルタサル短篇集『悪魔の涎・追い求める男』(岩波文庫)の一読をお薦めします。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
私は『アナーキー・イン・ザ・JP』という小説を先頃出版しました。二年間かけて他の仕事を断っての小説執筆は相当の覚悟と労力を要した。経済的にも苦しかった。小説について本気で考えている人間の一人だと思います。そういう人間が『KAGEROU』をちゃんと評するのは意味があると考えました。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
読者は自由に作品を評する権利がある。しかしプロの目にしか見えないこともあります。『KAGEROU』は高額賞金の小説賞を受賞し、しかも受賞者が有名俳優であったためベストセラーが約束されていたような作品です。それですごく優遇されているように言われる。が、私の目にはそう見えません。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
本を出版する工程。刷り出した原稿をゲラと呼び、それを直す作業を最低三回はやります(三校)。著者、編集者、校正者、校閲者があたる。主に校正は文字や表記、校閲は内容の間違いをチェックする。『KAGEROU』がそれをちゃんとなされていたか正直、疑問に思います。
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
232頁の間違いにシールを貼られたことが話題になっています。40万部もシール貼り!? しかも間違いの内容を知って仰天しました。三校を経て印刷されるまでこの間違いに気づかないなんて絶対にありえないことです。編集者、校閲者はまともに原稿を読んでいたのでしょうか?
中森明夫☆自伝小説『青い秋』出版! @a_i_jp
『KAGEROU』には直すべき間違いが多くある。ラストで紹介される人物は「現在は看護学校に通学」とあるのに「職業・無職」とある。「職業・看護学生」でしょ!(その前の前の人物は「職業・高校生」となってるから学生が無職じゃない)。こんなのは編集者や校閲者が直してあげるべき。
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コメント

lastline@Romancing BA・KE3 @lastline 2010年12月18日
自分の物語だ!て思える作品が最も心を打つのだろうか。そして、そんな作品に出会うのは難しい
Shun Fukuzawa @yukichi 2010年12月18日
要するにボリス・ヴィアン「うたかたの日々」の翻案? あれも心臓抜きという心臓に埋める機械(?)が出てくる。
merumi @merumi02 2010年12月18日
水嶋ヒロとしての背景が感動を呼ぶのか。
てつ @TETSU1002 2010年12月18日
そうか、俺達はKAGEROUの本質を見誤っていたんだ!KAGEROUは水嶋ヒロの自伝を客体化し、かつファンタジー小説化した作品だったんだ!
這いよるぎょろりんbot @goryolin 2010年12月18日
まさか,中森明夫先生がその人だったとは! RT @a_i_jp: それでもなんとか最後まで読み通した。結果…びっくりした。意外だ。なんと…感動した。正直に告白する。涙がこぼれた。近年、読んでもっとも心を動かされた小説の一つだ。
TAKEO Yamada @_takeoyamada_ 2010年12月18日
RT @a_i_jp: 『KAGEROU』はひどい小説だと非難されている。文学の名に値しないとも言われる。その受賞は出来レースとも疑われている。しかし…。これだけは言いたい。人気スターである青年がすべてを投げ打って愛する女性と生き延びるために本気で書いた小説なのだ! その「本気」に撃たれた。
ヨシカル @watiki 2010年12月18日
なんで小説読むのに書き手の背景まで知らなくちゃいけないんだよw
古いさぶろう @y_18_old 2010年12月18日
そもそも水嶋ヒロさんを知らないし、絢香さん?という人も知らない人にはひきつづきどうでもいい。
あんばっさだー @CantenFox 2010年12月18日
知らなければいけない、のではなく、知っていれば作品の見方が変わる、内容の理解が深まる、という話だと思うよ。中森氏も別に作品を批評する場合は作者の人生を知らなければいけないなんて書いてないし。
あかさたな @emesh 2010年12月18日
Amazonのレビューで内容を読まないで、面白がるよりはよっぽど生産的だな。
らいむさん @RIME3726 2010年12月18日
尚更読んでみたい、と思った。
チーコ @kuramicks 2010年12月18日
ヒロファンは是非読んどけってこったな。私はファンではないし特に興味が惹かれる要素もないので数年後図書館に入ったら読むかもしれない。
hazy moon @hazy_moon 2010年12月19日
@yukichi 『うたかたの日々』に出てくる心臓抜きはその名のとおり心臓を抜くための器具です。ボリス・ヴィアンの恋人がサルトルのところに行ったので、彼をモデルにしたバルトルが心臓を抜かれることに……
辻よしたか @ytsuji2001 2010年12月19日
最近、小説とは、縁遠いなぁ。中森明夫さんて、うまいなぁ。買ってしまいそう。KAGEROU
セルフ執事 @SF_yomi 2010年12月19日
エンターテイメントに関して別の見解を持っていて、ゼンマイ仕掛けの心臓を批判するのは野暮だけども、ゼンマイ仕掛けの心臓をキチンと作品に馴染ませてるか? は問うべきだと思うよ。
うまむら™ @UmaMurak 2010年12月20日
中森明夫も、もう終わりだな・・・こんなこと言ってるレベルじゃ一般人と変わらないし、こんなの批評じゃない。単なる感想文。
@yoru_owa 2010年12月20日
感想だって断ってるのにこんなの批評じゃないとか・・・(笑)たしかにKAGEROUはいがいと面白かったにゃあ。すくなくともポプラ社小説大賞に見あった作品だった。
13号 @13gou 2010年12月21日
ちょっと読みたくなった
のへむ @kamikuzudarake 2010年12月21日
たまげたなぁ。amazonレビューや2chで読む価値ないと判断してバカにして見てたけどこれじゃ少し読みたくなっちゃうじゃないか
はくいきしろい @T__J 2010年12月22日
【中森明夫氏による『KAGEROU』の個人的な感想】熱い…
藤堂考山 @ko_zan 2010年12月22日
なるほど、あの作品の惹き付けられてる「あの感じ」はホンキさであるという見解ねぇ。つーか、流石は中森明夫氏だなぁ。俺は、「あの感じ」を的確に表現できなかったから、すごくすっとした。若干、「アナーキー・イン・ザ・JP」だって,色々細部はあるよwwwと言いたくなったけどwあれも、同じような「あの感じ」がある小説だもんなぁ。
もるのがわ ちょうすけ @1983216 2010年12月25日
どっかのライターの人が纏めてたネタバレあらすじ見る限りだと結構面白そうだったなあ。ちゃんとしたプロのスタッフで映画化したら傑作になるかも。
新刊『泰国パパイヤ削り--あこがれのスーパースターと一緒に仕事する方法--』発売。 @whitestoner 2011年2月4日
 この人の書いてることのほうがひどい。  なんでこんなに文学という虚栄的価値観を無意味にふりかざして感想文書き流してるんだろう?  500枚の小説属性の作文書くことがそんなにえらいことか?
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