テセウスの船

バケツで修理を繰り返して、完全に置き換わった艦娘は、 果たして同一のものなのだろうか?
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かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

体の一部を損壊→バケツで修復、を繰り返していたら失った箇所がちょうど一人分になった艦娘……?

2015-04-07 06:12:51
かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

「ほしいな、あなたの、あたま」 首のないわたしが、私の声で呼びかける。 すがりつく。しがみつく。首を締め上げる。 「ちょうだい、ちょうだい、ちょうだい」 ……いつもそこで目が覚める。

2015-04-07 06:14:23
かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

「……どのくらい眠ってた、って?」 「数分くらいね。バケツ修理からしたら誤差みたいなものよ」 「そうなんだ、って」 「……また、あの夢を見てたの?」 「……」 「一度、カウンセリングを受けたら?」 「大丈夫、ろーちゃんは、大丈夫だから」

2015-04-07 06:16:08
かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

「ねぇ」 「なに?」 「もし、ろーちゃんが自分の頭を失ったら……バケツで修理って、出来るの?」 「さぁね。私が着任してから、そういう事例はないけど」 「……そうなんだ」 「やめてよ?死者が居ないのがうちの鎮守府の自慢なんだから」

2015-04-07 06:18:33
かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

「今度の海域はどこなの?またオリョール?」 「サブ島沖だって」 「今攻略中の海域でちね」 「……なんとかなるよ。うちの提督は『わきまえてる』から」 「………」 「……あれ、今、声がしたって……」 「大丈夫?」 「うん、大丈夫、って」

2015-04-07 06:21:20
かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

「爆雷、直上!」 「!!」 <爆発音> 「旗艦を狙ってくるなんて……生意気なのね!」 「次、来るわ!」 「……避けきった、って……!」 カチッ <爆発音>

2015-04-07 06:23:56
かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

「新型の敷設機雷か」 「ええ。それが運悪く頸部に命中。旗艦、呂500は大破。艦隊はそのまま帰還しました」 「……大丈夫なのか?」 「なんとも言えませんね……あっ、提督、治療中の彼女は見ないほうがいいかと」 「うっ、おええええええ」 「……だから言ったのに」

2015-04-07 06:26:45
かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

「そろたそろた」 「からだがそろた」 「あとはあなたになりかわるだけ」 「あなたのかわりにいきるだけ」 「……やめて」 「なにもちがわない、なにもかわらない」 「わたしはあなた、あなたはわたし」 「あなたはうしなわれた。わたしはすべてをえた」 「やめて!」

2015-04-07 06:29:37
かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

「……!」 「気がついたでちか」 「……」 「心配しなくても、ろーちゃんは無事に元通り、でちよ」 「ねぇ、でっち」 「でっちはやめるでち」 「……テセウスの船、って知ってる?」 「知ってるでち」 「ろーちゃんは……あちこち修理されたろーちゃんは、本当にろーちゃんなのかな」

2015-04-07 06:31:31
かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

「何を言うでち。ろーちゃんは、ろーちゃんでち」 「……」 「さ、傷が治ったら出撃でち。機雷への対策もできてるでち」 「……うん」

2015-04-07 06:33:31
かげひと(ΦωΦ) @KGHT_2

でっちと、わたし。 病室を出て行く2人を、 わたしは、見つめていた。 この世に形のないわたしは、 わたしに形を奪われて。 こうして、彷徨うしか、なかった。 ……もし、わたしが轟沈したら。 もし、わたしが死んだ日には。 わたしは、わたしを取り戻せるだろうか?

2015-04-07 06:35:01