【紫煙天龍】70年目の三式弾

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午前4時、ふあぁ…変な時間に目が覚めたってのに…お前まだ起きてるのか？

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「午前5時！！はい！！ろーちゃんです！！」

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午前6時、お前らおはよう。なんか4時頃に一度大和を見かけた様なそうでも無い様な…？

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午前10時、今日はちょっと午後に予定があるから急がないといけないんだよなぁ…

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午前11時。多摩と球磨を追い返すだけの簡単なお仕事を済ませた('ω申)

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午後2時　よし、そろそろだな。サクッと済ませて来よう

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先日のトラック泊地周辺での作戦の時、報酬に主砲を貰った。今日はそのテストだ 「大和ー！！聞こえるかー！！」拡声器で歪んだ提督の声が防波堤から聞こえる「まずは三式弾から発射テストだー！！暴発だけ気を付けろー！！」「…」「大和？」「ひゃいっ！？」

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耳栓を外して大和の傍へ向かう「昼に食い過ぎたか？変な物食わされたか？」「い、いえ、大丈夫です。始めましょう、三式弾からですね？」「おう、ちょっと待て、離れて耳栓詰めるから」「了解です」

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試製51cm砲…砲声から何から恐ろしいな…「あーあ、久々に艤装着けて海上に出たと思ったらこれか…耳鳴りがする気がする」「…」「ん？大和？」「ひゃいぃ！？なんでしゅか天龍しゃん！？」「何を動揺してんだよ…」なんだろう、今日の大和は何かが…

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「はいはい、ふたりともご苦労様ー。早ければ来週くらいから本格的な訓練を予定してるけど、それまで大和にはもう何回かテストで付き合って貰うかもだからよろしくな」「はい！」「じゃあ一服してから解散すっかー」「提督、ちょっと付き合え」「ん？おう」

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最寄の喫煙所なう「提督、大和がおかしい」「艤装から変な音でもしたか？硝煙に変な臭いが混じってたか？」「大和本人がおかしいんだ、どこか上の空でな…」「ふむ…あっ、そうか、やべぇことしたな…」「どうした？」「今年は70年の節目だろ？」「それが？」

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「1945年4月7日14時20分頃。戦艦大和は天一号作戦にて沖縄へ向かう途中、アメリカ軍の艦載機から攻撃を受けて…」「あっ…」「そういえば、スケジュール組んだ時は気づかなかったけど…」「本当ならアイツをひとりにしたりあの時のメンバーで過ごさせたり…」

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「どうする提督？」「お前は大和の様子を見ててやれ、途中で龍田と大淀呼んで来てくれ、さすがにひとりでは仕事を片付けられない。サクッと仕事片付けておれも合流する」「わかった」

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探すと言っても…よし、入渠ドックから「北上さん、お背中流しますね」「ありがとねー、大井っちー」「うふふ、北上さんの背中、いつ見ても素敵…ああ、うなじもなんて色っぽいのかしら…」「どしたの大井っち？ぼそぼそ聞こえるけど？」「あっ、なんでもないです！」

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うーん…おや？リス…と？「(ｷｮﾛｷｮﾛ)かわいいでちゅねー、どこから入って来たんでちゅかー？この辺りの子でちゅかー？」…そっとしておこう

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大和を見つけた。屋上から海を眺めていた「…大和」「あっ、天龍さん」「お前、あの時間…」「えぇ、あの時のことを考えていました」大和は南の方へ向き直った「あの時共に戦ってくれた皆さんのこと、忘れられないんです」「当たり前だ、お前は当事者なんだから」

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「吸うか？」大和は無言で俺の手の中からバットを1本抜いて火を着けた「…ふぅ。忘れないとか色々言って当日だけ騒ぐ連中は大半が部外者、本気かファッションかは別にして、な。当事者のお前は忘れたいことだってあるだろ？」「それは…はい…」

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「そうだよ」後ろから提督の声が聞こえた「大和、天龍、場所移すぞ。来い」「おうよ」「はい」

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提督に連れて来られたのは、鎮守府の敷地の外。防波堤の先端だった「こんなとこに来てどうすんだ？」「こういう日はな、献杯するに限る」「"かんぱい"？」「"けんぱい"だよ」提督が持って来たビニール袋には角とコーラとプラのコップと氷が入っていた

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「それでは。第一遊撃部隊と、日米両軍の天一号作戦における戦死者への追悼の意を込めて、献杯」「「献杯」」静かにコップを合わせ、コークハイを口に含む「…はー、やっぱりコーラはたばこと相性が良い」「あっ、提督お前」「ここは禁煙じゃない、遠慮すんな」

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無言で杯を傾けていたが、提督が口を開いた「すまんな大和。あの時間に放っておいてやるべきだったのに」「気にしないでください。今朝、鎮守府の慰霊碑にお供えして、お線香もあげて来ましたから」「いや、3.11みたいに時間も気にしたいところだ」

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深く煙を吸い込んで、吐き出し、また口を開く「おれが何を言ってもどうにもならないけどな。あの日のことを知ってる立場であるお前には、今日を静かに過ごす権利があった。それをいくらでもずらせるこっちの都合で邪魔した。何も言わず謝罪させろ」

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「私は…今こうやって、皆さんと過ごしている日常が大好きで、大切なんです。あの頃のことを想うのは1分もあれば出来ますけど、皆さんとの日常は、今日までの日々がなければ築くことの出来ない物ですから。だから、気にしないでください、本当に」

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「…これ以上はお互い譲らず終わらないだろうな。とりあえず、今年も終戦記念日の礼砲、頼む」「えぇ、謹んでお受けします」「提督、各艦合計70発までだからな、わかってるな？」「わか…ってるぞ？」「各艦70発づつで申請しようとしてたの知ってるぞ」「うぐ」