こころはくさりません

守衛＠BOOTH通販 @kokeshi_morie

ソンビ泉くん ある日突然散布されたウィルスに感染し、軽度のソンビ状態となってしまった今泉くん。半抗体の持ち主であったため完全にソンビ化しなかったが、徐々に侵食は進んでいる。アンチウイルス薬を作るための非検体。完全抗体を所持する荒北と暮らすことを強いられている。

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@morie_kokeshi 脳みそは上手く回らず、人格は崩壊の一途である。荒北さんのことが、だいすき。荒北に自分からウィルスが感染することを恐れており、なかなか触れようとはしてこない。いつか自分がいなくなっても、荒北さんには笑っていてほしい。

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人口の三分の一は感染者。稀に不完全抗体を持つ軽度のソンビ化が起こる。今泉はこれ。抗体は所持しないが未だ人間である人たちは、シェルターで暮らしている。不完全抗体ソンビからの感染は稀だが可能性はゼロではない。アンチウイルス薬の研究のため、不完全抗体ソンビまたは完全抗体を持つ人間は

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@morie_kokeshi 研究対象となる。完全抗体の安全性と、ソンビ化の進度をはかるために、稀に両者の共同生活が認可される。報告義務は月に一回。 ソンビ化が進むと体が溶ける。水に触れると融解してしまう。ある程度重度の侵食になった半抗体ソンビは意識のある内に入水するケースが多い

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@morie_kokeshi 縫えば治ります、千切れてもくっつきます、でもそれは人ではない象徴のようで彼らを苛みます。仕方がないことです。

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@morie_kokeshi 今泉くんの担当研究者は東堂さんだったり。おなじ半抗体ゾンビに黒田がいる。同じ檻に入れておいたのですが、一度腕同士がくっついてしまう事件が起きてからは、もう会っていません。

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@morie_kokeshi 荒北さんが今泉の飼育者に選ばれたのはたまたま。半抗体ゾンビの腕には検体番号が刻まれている。今泉は１７０２１７５。ちなみに黒田は１１２１２。あの夏から一度も会っていない、お互いのことなんて何も知らない荒北さんと今泉くんです。

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@morie_kokeshi というのはちょっと語弊があるかも。今泉くんは、ずっと荒北さんが好きでした。何も知らなくても。あの夏の思い出さえあれば生きていけると、そう思って生きてきました。ウィルスの散布が、起こるまでは。

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@morie_kokeshi 黒田さんと今泉くんの腕がくっついてしまったのは、簡単に言うと黒田さんの方が融解度が早いからです。黒田さんは今泉くんの気持ちを知っていました。自分の気持ちも知っていました。ですから、共有する事にしました。切り離された後の黒田さんは、まだ東堂さんの部屋に

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@morie_kokeshi 「何故あんなことをしたんだ」「…」「11212。答えろ」「…」「…黒田」「いまいずみは」「…」「いまいずみはきっとあのひとのことがすきなんだ。おれもあのひとのことがすきだった。わかってやれるのはおれだけだった」「……」「おれだけがわかってやれた」

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あらきたさんのことがすきなのに、おれのもううまくまわらないあたまではそれをつたえるのはむずかしい。それはとてもかなしいことだけれど、それでいいのだともおもう。あらきたさんはおれにやさしくしてくれる。でも、おれはあらきたさんになにもかえすことができない。

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おれのからだはふつうのばけものよりはすこし、じょうぶだ。それでもはんぶんくさっているのだから、いつかはくずれてしまうだろう。 あらきたさんはおれとてをつなぐ。あたたかいてで。けれど、おれがふれると、あらきたさんまでくさっていってしまいそうで、こわい。

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「あ、」「え？」「うで、とれました」「……っ」「だいじょうぶですか、？よごれてませんか？」「…っせ、てめーの心配しろヨ」「…？　だいじょうぶですよ、すぐにくっつきます。はりをください」「また縫うのォ？」「？？　ほかにほうほう、しりません…」　とか言う会話

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「どうしよう、あらきたさん」「………」「からだ、とける」「……ウン」「おれ、もうふろ、はいれないですね」「………そうだネ」「……ちかよらないで」「………」「これからどんどん、くさくなっていくから」「……」「おれまだあらきたさんにきらわれたくない、です」　とかそういう

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おれがふつうのにんげんのままだったら、すきになってもらえただろうか、とか、きすとかしてくれたんだろうかとか考えてしまう。……いや、荒北さんはどんな君でも好きです…

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「だきしめないで」「さわらないで」「ちかよらないで」が増えていく。言った後に、ごめんなさい、って硬くなった表情筋を崩しながら笑う。荒北さんのところから抜けだしてはじめて、「すきでした」って言えるような関係で、一緒にいる限りはずっと言えないまま。言う時にはもう

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皮膚がどろりと落ちる。そのたびに、今泉は困ったような顔をして笑った。「ごめんなさい」吐き出される言葉はいつだって謝罪の一辺倒。随分と滑舌の悪くなった声が、ぶちまけた水のように重く畳にしみこんでいく。浅黒くなった膚。日々きつくなる異臭。オレは毎日、今泉がもう死んでいる事を実感する。

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かたっぽのめだまがおちた。てのひらにころがりでたそれをみて、さいしょにかんがえたのは、どうしようっていうばくぜんとしたかなしみだった。ああ、どうしよう。ついに、ついに、おれはあのひとのことをみることさえかなわなくなるのか。ああ、いやだなあ。

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どうしてもふれることができないから。ずっときれいなままでいてください。きっとおれのことをわすれてしあわせになって。しあわせになってほしいんです。それでほんとうに、ほんとうにさいごのときだけ、きっとじごくにいるだろうおれをおもいだしてくれれば、それでいいから。

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ゾンビは水に誘拐する。荒北さんはワクチン剤探し続けてるんだけど、今泉くんはもう諦めてるので、どろどろになってしまう前に荒北さんの目の前から消えて静かな海で一人で眠るのが希望なんです

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ゾンビ泉くんは自分はきっと地獄に行くのだと思っている。あんなにいい人である荒北さんの意識を独占して、自分の為に傷つけて、こんな人間でも何でもない自分の為に彼が傷つく現実に悲しみを抱いているので