もとあった場所に戻るだけ少しだけ悲しくなるのははみ出た分だけ /すべて終わってそれから #一薬版深夜の真剣創作60分一本勝負 #刀剣短歌
2016-10-15 23:42:53一/ほんものにみいられたというまなこならみてやろうおれにおとうとをみるな 二/さとられたたくらみのいたたまれなさよとらわれたたなごころのぬくみ 三/どちらかといえばだんをとるもくてきではいごをとられたがんさくのまけ #刀剣短歌
2016-01-29 00:28:26@sasa_sep_2nd 四/機械織り化繊100%おしきせを羽織ってみればあのひとのにおい 五/節くれだつ枝に憩える南国の蝶に似ている微酔の睫毛 六/珈琲の味の冷たいはんぶんこ帰りみちみちとけてく共犯 #刀剣短歌
2016-01-29 00:29:31@sasa_sep_2nd 七/局長と兄と贋作とを脱いだ誰も見てないあなたがほしい 八/砂浜で追いかけあおう彼我ともに潮風に朽ちるはがねなれども 九/ふたりきり今月今夜が蜜の月明日の涙に曇らせはせじ 十/めをとじるまえとめざめたすぐあとのおなじそうぼうちがうめのいろ #刀剣短歌
2016-01-29 00:32:17我が陣営事情をふまえた薬研一期 さにわ注意
帰陣し、開かれた手入部屋に装備をなくした弟を連れ込む。放せ、自分で歩ける。近侍がその様ですか、本職に任せて大人しくしていなさい。言い放ち音高く閉めた戸に凭れた。外套に隠した深傷が痛む。二度と負けたくない。失いたくない。私は弟を守れなかった。/激録本丸24時 #刀刀 #同題刀剣SS
2015-04-10 01:34:23@sasa_sep_2nd 様ァねえな、兄さん。主に損傷を見咎められた私を薬研が嗤う。病床は空いてるってのに、何を痩せ我慢しているんだか。…なに、側仕えの役割を演じている者に倣ったまでのこと。私たちは兄弟だ。癇にさわるところばかり似ている。/激録本丸24時 #刀刀 #同題刀剣SS
2015-04-11 16:21:03@sasa_sep_2nd 手入部屋を出た薬研はくるくるとよく働く。資材の備蓄を検め部隊編成について長谷部と議論を交わし、夕食の献立をチェックして五虎退の虎を撫でる。進んで他者に交わって生きようとしているように見える。似た性格が生まれの故なら、似ない性質は渡った主の違いだろうか。
2015-04-12 22:43:57@sasa_sep_2nd 兵を統べるべき審神者は仔猫の姿をしており、一番に喚ばれた加州は面食らったという。次いで具現化した薬研は、おそらくそこで自らの役割を定めた。私が参じた時には陣営は既に大所帯で、皆の世話を焼く近侍が取り仕切っていた。消失した薬研の体は、決して頑丈ではない。
2015-04-15 14:34:53@sasa_sep_2nd 身に過ぎた役目なのではないか。幾度となく繰り返した進言も兄さんは心配しすぎだと容れられることはなく、私は口煩い兄と成り果てている。にゃあ。黄金色の仔猫が膝に乗ってきて丸くなった。…弟を重用してくださってありがとうございます、主。柔らかい毛並みを撫でる。
2015-04-15 20:53:19@sasa_sep_2nd 仔猫はごろごろと喉を鳴らし腹を晒す。縁側で昼寝をしたのだろう、日だまりの匂いがする。無防備に懐にもぐり込む相の主は、私の損傷を嗅ぎつけ咎めるように鳴き続けた。…私を叱っては頂けませんか、弟を守れなかったのです。緑色の目が細められ、寝息が聞こえはじめる。
2015-04-15 22:24:42@sasa_sep_2nd おねむか大将、いいな。近寄ってきた薬研が仔猫を抱き上げぞんざいに撫でる。起こしてしまうよ。一度寝たら起きねえ。自分の方が主の扱いを心得ていると言いたげで目を伏せる。と、薬研はぐっすり眠っている仔猫を腹の上に載せて畳に寝そべった。黒い髪が私の膝に流れる。
2015-04-17 15:04:40@sasa_sep_2nd …私は怒っているのですが。許して貰おうと思ってる。仔猫の顎の下を擽りながら薬研は淡々と続ける。俺はもう頑健になれそうにないし、これからも心配かける。俺の性分だ、兄さんのせいじゃない。…ならば私も性分です。たとえお前が今より丈夫でも、私はお前が心配です。
2015-04-18 12:42:26@sasa_sep_2nd 意地っ張りだなぁ。お互いですよ。薬研はにっと笑う。他の弟より大人びてしまった印象が、悪戯っぽく幼くなる。大将のおかげで皆に会えたし兄さんの小言も聞ける。喧しくて悪かったね。そうじゃなくちゃ兄さんじゃない…。薬研は大欠伸をし、つられてこちらも欠伸が出る。
2015-04-22 13:20:06@sasa_sep_2nd 損傷したしくたびれた、晩飯できたら起こしてくれ。風邪をひくよ。あったかいからへいき。語尾をあやふやにして瞼が落ちる。眼鏡を外させて畳み、上着を脱いで身体に掛けてやった。薄い背中、深い寝息に消耗の大きさを思う。…お前がそうなら、私もいま少し強くならねば。
2015-04-23 14:11:31初期刀とさにわと最初の短刀