では踊りますか。いかにも堅物という風情の太刀に手を伸べれば困惑げな微笑が返される。と、兄の代わりに俺がと小生意気な黒手袋が割って入った。異国の節を口ずさみ拍子を踏む。それは何の曲です。石積みの遊戯の唄だと。折れそうな首の童が言いざまひらり身を翻す。/まわる #刀刀 #同題刀剣SS
2015-05-01 14:34:25@sasa_sep_2nd 視界が歪むのは眼鏡が無いせいだと思いたい。蜂蜜色をした瞳が間近にあるのは兄弟愛の一環と信じたい。主の寝所に侍るは懐刀の務めだが、それが我が身に降りかかり肉体の変化まで伴うとは予想だにしなかった。舌を吸われて目玉が蕩ける。/くらり #刀刀 #同題刀剣SS
2015-04-30 02:38:04@sasa_sep_2nd 縒られた一本の糸が複雑に編まれて透かし模様を作る。古来それは祈りの一種であったという。叩かれ焼かれて紋を生じる我らも、あるいは神へと通ずるだろうか。とまれ、天に坐す父も、地にあり戦を重ねるあるじも、主であることに変わりは無い。/レース #同題刀剣SS
2015-04-29 03:05:44@sasa_sep_2nd おどろかせあおりはやしてしりからげがらんどうほどよくひびくやみ/スピーカー #刀刀 #同題刀剣SS
2015-04-27 01:13:27@sasa_sep_2nd 掘り崩されると困る畦には彼岸花を植える。毒のある茎を嫌って獣が寄り付かない。その花は主の墓の周囲にも生けられていたか。あまりに賑々しい紅は喪にそぐわぬと忌まれたか、或いは毒をも恐れぬ獣の所業か。俺は掘り返され、新たな朱を纏う。/曼珠沙華 #同題刀剣SS
2015-04-25 01:47:43@sasa_sep_2nd 縁側で午睡を決め込む五匹の仔虎と少年。匂いを嗅ぎ付けた狐と本体が加わる。其れは虫がつくものですか。大きな小狐は鵺を虫干しするという獅子王に疑問を投げかける。知らねえけどなんか気持ちよさそうじゃん? 傍らでたぬきが高鼾で眠る。/陽だまり #同題刀剣SS
2015-04-24 09:36:32いつの間にか寝てた。さて、ここは何時の何処だ。時間遡行とやらをするようになってから俺の前には歴代の持ち主が次々と現れては消え、なかにはひどい折檻をする者もいたから油断ならない。…鶴。一声呼ばれる。温かい布団、障子越しの朝日。俺は全てを思い出す/寝ぼけまなこ #男刀 #同題刀剣SS
2015-04-21 02:37:37時間遡行とやらをするようになってから、足元がひどく覚束ない。この時分に俺は何処にいた、墓穴の中か暴かれて持ち去られたか、その同じ地平に再び立つ意義とは。考える程に淡く霞んでゆく。…鶴。煙草の匂いがする。乾いた掌が頬に触れる。俺は俺を取り戻す。/寝ぼけまなこ #男刀 #同題刀剣SS
2015-04-22 10:13:12@sasa_sep_2nd 口と口とがぶつかっただけ、とはならぬらしい。上気した頬も荒い息遣いも、常の無愛想とは程遠い。ただ一度の接触のみで甚だしい反応があるとは興味が湧く。手を伸ばし首を抱くと素直に抱き返してきた。全く、人の身体は退屈しない。/つまみぐい #刀刀 #同題刀剣SS
2015-04-20 20:41:56@sasa_sep_2nd そんなにひとりがいいなら、君は長生きをしなよね。ぷつりぷつり、山盛りの絹さやの筋を抜きながら光忠が言う。ああ、順番というものだ。籠からくすねて仔虎の鼻先にひらつかせる鶴丸が同調する。最後の時に浮かぶのが、あの青い匂いだなんて。/終わり #同題刀剣SS
2015-04-19 13:44:57