雉子と鶏　松屋新宿歌舞伎町店

リプライしたいマン @tisaktm

ーーーーーー　某日。

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鶏、…本名佐久間虎雄は、日蝕鳥の首領である雉子をつれ、松屋新宿歌舞伎町店にきていた。

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なぜ連れ立ってチェーンの牛丼屋に来たかという理由について、とかく忘れっぽい鶏はすでに失念していたが、実際は雉子が牛丼屋に行ったことがないという会話が発端だ。

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長い歴史を終了し、いまは工事のパネルで覆われているコマ劇前を横切り、店の自動ドアをくぐる。同時に、イラッシャイマセ、といういくつかの声が飛んだ。

ラグラージGX待ちのタル @OkZunda

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ラグラージGX待ちのタル @OkZunda

【都内・"松屋"新宿歌舞伎町店】

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雉子】やけに浮足立ったように歩みを進める、いや寧ろ現世から浮いているとまでも思われそうな男が一人、その前を行く壁のような男につれられるように街中を歩いている。暇を持て余した学生、せわしなく歩き回るサラリーマン、どのような日常からもかけ離れた独自の空気を持つこの二人は

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雉子】――あろうことかその辺の飯屋へ入店していく。 しかも牛丼屋。 付け加えるならチェーン店。 言ってしまえば、”松屋”。

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雉子】「いやあ、いやあ、何十年ぶりの牛丼じゃろうな！儂ぃが食うた牛丼はそらもうぼっそぼそとしてて不味かったもんじゃが、当時はこれがまたとない馳走でなあ…」 思い出話に浸る雉子を余所に、目の前の男 ―鶏と呼ばれるその男― は牛丼屋の自動ドアを潜る。

リプライしたいマン @tisaktm

@tis_hikuidori 「おう、雉子兄ィ。食券かうんだぜ」そういって、店の入り口にある券売機を指差す。「俺ァプレミアムキムチ牛めし特盛で」

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雉子】元気よく出迎えてくれる店員に気分の良い入店を果たしながら、店内に立ち込める匂いに腹の底を擽られるほどに惹かれる雉子。

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@tisaktm 雉子】「食券！はあ～、これで注文するんじゃな…」 まるで今初めて食券機に触れたかのような感嘆の声を上げながら袖を捲る。 「鶏！ひよ！貴様の薦めぁなんじゃ！？」 おおげさなほどに狙いを定めている。

リプライしたいマン @tisaktm

@tis_hikuidori 「この牛めしっつーのが、まあ基本だな。」何もトッピングされていない牛丼をはじめに指差しつつ、順番にスライドしていく「ネギたま牛めし、おろしポン酢牛めし…まあ、なんでもそこそこ美味いとおもうぜ」

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@tisaktm 雉子】鶏の指差した「牛めし」のボタンから指で追いかけながらふんふんと頷いて見せる。 「……なんじゃあよぉわからんが、店を理解するためには基本、じゃな！」 手を始点へ戻し、指が折れそうになるほどに強くボタンを押す。

リプライしたいマン @tisaktm

@tis_hikuidori …鶏は「うまい」「ふつう」「まずい」という三種類の、ひどく大ざっぱな味覚しかないため、人に何かをすすめるのが若干苦手だ。頭をかきつつ説明し終わり、とりあえずは注文が決まったのでホッとする。「おい、壊れるだろ。機械の方がよ」

リプライしたいマン @tisaktm

店員に食券を出し、運よく二つ空いていたカウンター席に座る。四つ子と一緒に時々来ると、彼らは好きずきに「つゆだく」だとかなんだとかオプション頼んでいるのだが、鶏はそういった細かいことはしない。

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雉子】鶏の心境をしってか知らずか、しゃがみこんで食券の出口を凝視する。食券が出てきた瞬間に掴みとり、自分の「牛めし」と書かれた食券をカウンターに出した。

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雉子】先に座った鶏の隣に座る。今日は「連れてきてもらった」からかやけに大人しくついていくが、店内の匂いをしきりに嗅ごうと鼻をヒクヒクさせているところを見るに心の中は牛めしに占拠されている様子。

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@tis_hikuidori 「すぐ出てくっから、一服してる間もねえんだな」そういってぼやいて、雉子のぶんも茶をいれる。「これ食い終ったらうちの店くるか」

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雉子】「うまそうじゃな…」 隣の客の食事を凝視しながら、早く食わせろという抗議を抑え込むように腹を撫でさする。

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@tisaktm 雉子】そうなのかと一言呟いて茶を受け取る。鶏からの提案が余程嬉しかったのか、「おう、連れていけ！」と歯を見せて笑っている。

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雉子】久々に鶏と二人で語り合う時間をとれたのが余程嬉しかったのか、足でとんとんとリズムを刻みながら食事を待つ。聞いた話によるとあっという間に出来上がるらしく、心の中でいつの間にか数を数えはじめていた。

リプライしたいマン @tisaktm

@tis_hikuidori 「鶉もあとで来る」短く補足して、あとは待つ。雉子のひっきりなしの催促に相槌しつつ、ほどなく牛めしは届くだろう。この店の店員は仕事が早いのだから。

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@tis_hikuidori －－－－－－－－－－－－－－　某日のこと。　―　了　―

ラグラージGX待ちのタル @OkZunda

@tisaktm 雉子】普段から見慣れてはいるものの、鶉はまだ小さい。孫のような子が来てくれるとあれば雉子はまたしても顔を綻ばせた。 「今日はいべんとっちゅうもんが続くのお！」齢40をとうに超えている雉子はまるで父親に連れられた子供のように今日と言う日を楽しんでいるようだ。