加賀のロードショー: 001: にゃしいのいけにえ

浅利グラタン @dariushawker

妙高「私にどうしろと言うにゃしぃ」 足柄「戦場が! 勝利が私を呼んでいるにゃしぃ!」 羽黒「ごめんにゃしぃっ!」 那智「なんだこれは」

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高雄「にゃしぃ、と言って差し上げますわ」 鳥海「にゃしぃが鳥海です」 愛宕「ぱんぱかにゃしぃ!」 摩耶「なんだよこれ」

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那智「おお摩耶、教えてくれ!」 摩耶「なんなんだよ! なんなんだよ一体?!」 「「にゃしぃってなんだ?!」」

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にゃしぃ…… にゃしぃ…… 　 那智「……行ったか」 摩耶「……提督までコレかよ」 摩耶が叩き落とした『二周年にゃしい!』と書かれた掛け軸を見て、那智が言った。 「摩耶、ひとつ頼まれてほしい」 「なんだよ」 「私が、ああなったら。 私を、沈めてほしい」 「……そっくり返すぜ」

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「那智! 摩耶! こちらへ!」 大鳳が矢を放つ。にゃしぃ、と叫びが上がる。 にゃしぃ。にゃしぃ。しかしそれでも、包囲は狭まる。 「摩耶! 急いで!」 扶桑が金属バットを振る。にゃしぃ、と叫びが上がる。 にゃしぃ。にゃしぃ。火器でもない武器では、艦娘には足止め程度にしかならない。

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にゃしい。 にゃしい。 「にゃしい」 「姉貴! 正気に戻ってくれよ!」 にゃしい。 にゃしい。 「畜生ーッ!」 摩耶が、にゃしいの群れに埋もれていく。 手を伸ばすが、届かない。 「摩耶ーッ!」 「那智さんッ! もう無理ですッ!」 「止めるな大鳳ッ! 摩耶ーッ!!」

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「山城、大丈夫?」 「にゃしい」 ごつり。 扶桑が金属バットで殴る。 　 ひとつ安心してほしい。 山城の頭部は健在だ。 4万馬力で殴られてこわれるようでは、海戦はできない。 「大丈夫?」 「……にゃ、にゃしい」 　 扶桑が金属バットを振りかぶる。 「姉さまッ山城は正気にッ!」

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「じゃあ山城、何か覚えていることは?」 「姉さまに殴られたとき、逃げなければ――そう感じて、目が覚めました」 「すると、逃げたのは――にゃしい!」 明石が、突然あの声を挙げた。 扶桑が金属バットで殴る。 「明石、落ち着いた?」 「……解ってきました……にゃしいとは、宇宙とは!」

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ひときわ海風の強い埠頭。 那智はその時を待っていた。 水平線に艦影。 遠征艦隊だ。 「戻ったか睦月……」 扶桑と山城が、にゃしいと鳴く艦娘たちを塞き止めている。 そうしている間に、睦月を迎えねばならない。 ここがわたしの戦場だ。 「作戦完了のお知らせなのです!」

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「いわば、意味の寄生虫なんですよ」 対物ライフルを組み立てながら、明石が言う。 「寄生虫。 ツツガムシとかの?」 扶桑が金属バットを振るう。 長門が、にゃしい、と唸って後退した。 【姉さま、裏手は大丈夫でした】 山城から入電。その 背景で、にゃしい、ぐわぁんと、金属のぶつかる音。

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寄生虫の生活環――繁殖サイクル。 越冬地と繁殖地を渡る鳥のように、寄生虫は中間宿主と終宿主の間を渡る。 「全部が全部というわけではないですけれど」 『間違った』宿主に感染したときだけ、劇症の病変となる場合もある。 「わたしたちは、あれの『正しい』宿主ではなかったんです」

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「つまり、だ」思う通りを言えばいい、那智よ。 自らに言い聞かせる。 「睦月はすごい」 「にゃっ?!」 「睦月は、とても、すごい」 まあまあ、と如月も眼を丸くする。 「いくら言っても足りないくらいだ」 「……なら、もっと褒めるがよいぞ! 褒めて伸びるタイプにゃしぃ!」

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にゃしい。 睦月の声が虚空にまで響いた。 一拍をおいて、鎮守府のそこここから、木霊のように声が返る。 にゃしい。 にゃしい。 にゃしい。 にゃしいにゃしい にゃしいにゃしいにゃしいにゃしいにゃしい その風が如月の髪を揺らし、那智の脇を走りぬけ、睦月に殺到し、そして消えた。

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「わたしは、何を……?」 頭を押さえて長門が立ち上がる。 大鳳はあらためて意識を彩雲に集中する。 長門以外の艦娘たちも、押しなべて同様と見えた。 式からの視界の端に、泣きじゃくる摩耶と、それを囲む高雄たちが映った。