#リプきた単語で三題噺 「さかな」「アイドル」「ラーメン」

22作目
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ネッシー @0ZaALZilA

あんまり時間かけるのもあれなので、「さかな」「アイドル」「ラーメン」投下 #リプきた単語で三題噺

2015-05-01 01:29:53
ネッシー @0ZaALZilA

「ねぇ、さかなラーメンって知ってる?」 「何それ」 「噂くらいは聞いたことあるでしょう?この世のものとは思えない味らしいって」 巷を賑わせている「さかなラーメン」の噂。知らぬ者はいないし、そのため、耳にしない日はない。しがない清掃員の彼らでさえ。

2015-05-01 01:30:19
ネッシー @0ZaALZilA

「俺が聞きたいのは、さかなラーメンが実在してるかどうかってことや、見た目がどんななのかってことさ」 「そんなもん知りませんよ」 噂は噂止まりで、その実在性は実際疑わしいのだが。だからこそ、皆が夢中になって想像を巡らせているのだろう。

2015-05-01 01:30:40
ネッシー @0ZaALZilA

何せ『さかな』ときて『ラーメン』なのだから、二重に知的好奇心をくすぐる。 「これまた噂ですが、近くにさかなラーメンを食せる場所があるらしいですよ」 「確かじゃねえんだろうけど、まあいいさ。ここ最近の飯には飽き飽きだ」

2015-05-01 01:31:24
ネッシー @0ZaALZilA

ポリポリと音を立てながら、昼食をほおばる青年。 水で無理やり飲み込んだのを見計らい、青年の同僚が、 「都合はそちらに合わせます」 と言うので、青年は答えた。 「そんじゃ、明日にでも」 即答だった。 ☆ 「想像がつかないぜ。だってよ、さかなにラーメンだぜ?」

2015-05-01 01:31:55
ネッシー @0ZaALZilA

「テンション高いですね」 「それはもう。普段の飯とは段違いなんだろうな。いつもの飯は何だろう…餌?そう餌って表現するべきなんじゃねえかな」 夜道を散策する男が二人。そのうち一人は、やけにテンションが高めだ。まだ見ぬ未知の料理に心躍らせている様は、まるで遊園地へ向かう子供のよう。

2015-05-01 01:32:37
ネッシー @0ZaALZilA

「どうやら、食べ物に相当な不満があるようですね」 「ああそうさ、食べ物って言っていいかさえ怪しい…」 「…残念だよ。貴方は、この国の在り方に反した」 発砲音。誰に当てるでもなく、地面に一発。威嚇射撃だ。つまり、力にもの言わせての脅し。 「くそっ…政府の人間が俺を試したってわけか」

2015-05-01 01:33:17
ネッシー @0ZaALZilA

元同僚の政府の犬が、青年に拳銃を突きつける。 「したところで、どうなる?」 「施設で教育プログラムを2週間ほど行ってもらうだけさ。死にはしない」 「要は洗脳じゃねえ…かっ!」 言いきる前に青年は、足を思い切り蹴り上げ、砂を舞わせた。 風と相まって、ガンナーへの眼潰しとなる。

2015-05-01 01:33:40
ネッシー @0ZaALZilA

「くっ…待て!」 「誰が待つかよ!」 砂を拭う狙撃手から、猛ダッシュで距離を取る青年。出来る限り、入り組んだ場所へ。 気づけば、見慣れぬ廃屋に逃げ込んでいた。 「ここまで、行けば、撒けたかな…ハァッ、ハァッ…」 息を切らし、座り込んで、青年の視界が一段下がる。

2015-05-01 01:34:12
ネッシー @0ZaALZilA

そこで気が付いた。廃墟の中に、丼が一つ。 「こ…これはっ!」 器に満ちたスープ。 波がかかった細麺。 そこに焼き魚が横たわる。 「は、ははっ…あった…!あったんだ!さかなラーメンは、存在したんだ!」

2015-05-01 01:34:39
ネッシー @0ZaALZilA

豪快に、素手で麺を掴みにかかる。しかし、掬えない。スープに阻まれる。 爪が剥がれんばかりの勢いで削り取ろうとしても、麺一本もつまめない。 「くそっ…喰えねェ…喰えねェよ…」 そこにはさかなも、ラーメンも無かった。 器に入っているのは、埃を被った、ただの食品サンプルに過ぎない。

2015-05-01 01:35:03
ネッシー @0ZaALZilA

空腹は、注意力を削いでいき、終いには命の危機が迫っていることさえ忘れさせる。 無数の弾丸が放たれ、哀れな貧民の細躯を穿つ。穿つ。 「無駄な抵抗をやめ、旧世代の食物への幻想を捨てれば良かったものを…」 「ちく……しょう」 満たされない腹に数多の鉛を食らい、青年は事切れた。 ☆

2015-05-01 01:35:32
ネッシー @0ZaALZilA

「アイドル idol」というのは、大辞泉の説明によると、 「1 偶像、2 崇拝される人や物、3 あこがれの的。熱狂的なファンをもつ人。」とある。 荒れ果て渇ききった大地、有機的な食料など、とうに枯渇し。 工場で生産された固形栄養剤で命を繋ぐ人類。

2015-05-01 01:36:10
ネッシー @0ZaALZilA

料理なんてものはもはや――不可視で、触れることもできないような、想像上の偶像(アイドル)。

2015-05-01 01:36:21