「イン・リタリエイション・フォー・ハーシュ・リアリティ」#1

テキスト・カラテ・チャレンジ!
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ジュセー @shiroboshi2

◆テキスト・カラテ・チャレンジ◆ #S57Ninja このタグで感想だったり実況だったりしてくれるとありがたく思います

2015-05-11 21:20:17
ジュセー @shiroboshi2

◆テキスト・カラテ・チャレンジ◆ 「イン・リタリエイション・フォー・ハーシュ・リアリティ」 #S57Ninja

2015-05-11 21:26:28
ジュセー @shiroboshi2

POWPOWPOW……重金属を含んだ酸性雨が降り続く猥雑な街をサイレンが飾る。また、喧騒の声や上空を飛ぶマグロ・ツェッペリンの欺瞞的広告音声も連なっている。 その光景をボンヤリと見る浮浪者の側を大衆は通り過ぎて行く。脇目も振らずに。 1 #S57Ninja

2015-05-11 21:34:55
ジュセー @shiroboshi2

「ザッケンナコラー!」「アイエエエ!!」誰か不運なサラリマンがヤクザに因縁をつけられているようだが、人々の流れはモーゼの海割りめいて分かれ、通り過ぎていく。大衆は皆、電子の小窓を覗き……あるいは音を聴き……目前の現実をシャットダウンしている。 2 #S57Ninja

2015-05-11 21:43:31
ジュセー @shiroboshi2

喧騒。無関心。欺瞞。ここはネオサイタマ。電子的・物理的に鎖国された日本の首都。有り触れた光景。 3 #S57Ninja

2015-05-11 21:47:21
ジュセー @shiroboshi2

「満足しています」「今あなた!」「よく仇」。雨に濡れボヤけたネオン光で彩られた胡乱な看板が明滅する。混沌が蔓延るこの街は、いつまでも明るく、騒々しい……表通りは。 4 #S57Ninja

2015-05-11 21:56:17
ジュセー @shiroboshi2

酷く明るい表通りの毒々しい光は絶えることことが無い。一方、路地を一つでも入れば、そこに待ち受けるものは闇。闇だ。その闇に導かれるようにして歩く男あり。身なりはだらしなく、風采の上がらぬ男だが、所々にサラリマンの特徴が見て取れる。5 #S57Ninja

2015-05-11 22:04:33
ジュセー @shiroboshi2

男は半ば夢遊病めいて何か呟きながら路地を歩き、歩き……やがてゴミ捨て場に辿り着いた。そして座り込んだ。何を捨てるための物なのかわからない程巨大なゴミ箱が男を見下ろす。彼は疲れ果てているようだった。 6 #S57Ninja

2015-05-11 22:10:50
ジュセー @shiroboshi2

「ナンデ?降格ナンデ?」男は涙を流しながら、壊れたテープレコーダーのように同じ言葉を繰り返していた。 「ナンデ?降格ナンデ?」彼はすぐ側に落ちている廃棄UNIXの破片を掴み、壁に投げつける。小さな音を立て、破片は再び冷たい地面に落ちた。7 #S57Ninja

2015-05-11 22:17:23
ジュセー @shiroboshi2

「ナンデ?メアナマ=サンが昇格ナンデ?……賄賂な?」悲壮感に溢れていた彼の顔は段々と醜い憎悪に変わってゆく。「畜生……俺の方が優秀で実直で、家族も居て」彼の脳裏に浮かぶは最愛の家族の笑顔。今日は妻との記念日であった。8 #S57Ninja

2015-05-11 22:26:03
ジュセー @shiroboshi2

「畜生、畜生!帰れないよなぁ……帰りたくないよなぁ……」男は泣き崩れ、誰に向けるわけでもない罵詈雑言を喚き散らし、俯いた。「疲れた。もう、やめだ。やめよう。何もかも」彼は俯き、黙り込んだ。9 #S57Ninja

2015-05-11 22:34:37
ジュセー @shiroboshi2

泣き疲れた男は今、微睡みの中にいた。現実と夢との境界線が曖昧になっていく。家族の姿がボンヤリと浮かぶ。暗い顔をしていた。「やめろ」家族は霧散した。次に浮かんだのはメアナマの顔だ。ハッキリとしている。男を侮蔑するような顔だった。「やめろ」メアナマは霧散した。10 #S57Ninja

2015-05-11 22:40:08
ジュセー @shiroboshi2

【テキスト・カラテ・チャレンジ・アイキャッチ】 #S57Ninja

2015-05-11 22:42:37
ジュセー @shiroboshi2

【テキスト・カラテ・チャレンジ・アイキャッチ】 #S57Ninja

2015-05-12 23:13:24
ジュセー @shiroboshi2

泣き疲れた男は今、微睡みの中にいた。現実と夢との境界線が曖昧になっていく。家族の姿がボンヤリと浮かぶ。暗い顔をしていた。「やめろ」家族は霧散した。次に浮かんだのはメアナマの顔だ。ハッキリとしている。男を侮蔑するような顔だった。「やめろ」メアナマは霧散した。10 #S57Ninja

2015-05-12 23:22:28
ジュセー @shiroboshi2

微睡みを彷徨う男のニューロンに、過去の幸福体験が押し寄せる。かつては喜ばしいと思えた体験も、今この時は鋭いカタナとなって男を刺し貫いていた。「やめろ」制止をする度、カタナは鋭さを増していき、彼の心を抉っていく。 11 #S57Ninja

2015-05-12 23:34:24
ジュセー @shiroboshi2

ソーマト・リコールめいて浮かぶ想い出達。家族。メアナマ。同僚。社長。家族。メアナマ。ニンジャ。同僚。家族。ニンジャ。ニンジャ……ニンジャ?うつらうつらと、男は目前に立つ者を見た。ニンジャ。「ニンジャ?……やめろ」男は自嘲気味な表情をしながら言った。 12 #S57Ninja

2015-05-12 23:39:56
ジュセー @shiroboshi2

疲れ果てて、有りもしない存在すら認め出したか。男は笑った。哀れな笑みだった。「起きよ」想像存在は彼に話しかけた。「やめろ」男は言った。ニンジャは霧散しなかった。「起きよ」「起きたくない」男は泣き、笑い、震える声で言った。現実に帰りたくはなかった。 13 #S57Ninja

2015-05-12 23:43:34
ジュセー @shiroboshi2

「やめろ。やめてくれ。消えてくれ」男は懇願した。有り得るはずの無い存在は、依然としてそこにある。「起きよ」男は首を横に振った。「いやだ」「起きよ」男は首を横に振った。「やめろ」「……起きよ、無力な非ニンジャよ!」「アイエッ!?」男は目前の存在を仰ぎ見た。 14 #S57Ninja

2015-05-12 23:53:34
ジュセー @shiroboshi2

ナムサン!おお、見よ、男が不確定存在であると思っていたそれは確かな現実として存在しているではないか!ニンジャ。ニンジャである!ニンジャは、男の目の前に!「アイエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」当然男は失禁! 15 #S57Ninja

2015-05-13 00:07:45
ジュセー @shiroboshi2

ワインレッドの装束に身を包んだ長身のニンジャは男を見下ろし、「落ち着きたまえ」と言った。「アイエエエ!アイエエエ!ニンジャ!ニンジャ!」男は錯乱している。「落ち着きたまえ。息を吸い、吐くことを思い出せ。君はそれを実行することができる」 「アイエエ……」 16 #S57Ninja

2015-05-13 00:19:56
ジュセー @shiroboshi2

男は言われるがまま、荒い深呼吸を繰り返した。ニンジャはそんな彼を慈悲深い目で見ていた。最も、それは人に向けての目ではなく、小動物や昆虫に向ける類の目であったが……男に、そのような事を確認する程の余裕は当然無い。 17 #S57Ninja

2015-05-13 00:28:06
ジュセー @shiroboshi2

「落ち着いたかね」「……ア、アイエエエ……」男は地に座り込み、嗚咽する。逃げようかと思ったが叶わなかった。まるで地面が強い磁力を帯びているかのように感じた。恐怖で身動きが出来ないのだ。「落ち着いたかね」「……アッハイ」男はくしゃくしゃになった顔で答えた。18 #S57Ninja

2015-05-13 00:36:04
ジュセー @shiroboshi2

男の返事を聞くと、ニンジャは両手を胸の前で合わせた。そして、尊大なオジギをした。「ドーモ。はじめまして。リタリエイションです。名乗りたまえ」「ド、ドーモ……マゴイ、マゴイ・シューです」男は、マゴイは怯えながら、この恐るべきニンジャに名乗った。19 #S57Ninja

2015-05-13 00:51:31
ジュセー @shiroboshi2

「マゴイ=サンか。君は、ミヤモト・マサシのコトワザを実践しようというのかね?」「エッ」マゴイは唖然とした。言葉の意味が理解できなかったからである。「ふむ?その様子から察するに違うのか。いや何、寝ているとうまくいった、の実践を試みているのかと思ったのだよ」20 #S57Ninja

2015-05-13 01:01:36