とめさんのまとめchapter3

とめさんの小説まとめchapter3 登場 円まい子 佐古谷怜明 丸川伊八 続きを読む
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tome @tomekawa

ここ数年で、日本の犯罪率は上昇傾向にある。しかし、それが数字、及びデータとして残される事はない。犯罪率の上昇傾向は、少なからず起きている事だが、しかし、全体数から見れば、ごく僅かだ。はっきりと言ってしまえば、その僅かとは、起きている事にすら気づかない事もある。そして、その犯罪の内

2015-05-04 00:42:34
tome @tomekawa

容とは、いわゆる、凶悪犯罪として数えられているものが、多いだ。社会で、そのような犯罪を増やしている者達は、雨が降り注ぎ、ぞっとしたような冷たさと夕方と思えないような薄暗さの中を、好んで活動するものも多い。無論、犯罪を犯す者達の全員が、好んでいると断言はしない。その傾向が、強いのも

2015-05-04 00:48:04
tome @tomekawa

事実なのだ。何故、この日本国家において、凶悪な犯罪が増えつつあるのか。それも、この日本最大の都会――東京を活動の中心としていながら、彼らは、捕まりにくいのだ。その理由を知る者は、この都会に置いて、いったいどれだけ居るだろう。いや、東京で暮らしている一般人達は、それを知る事は出来な

2015-05-04 00:57:20
tome @tomekawa

い。何故なら、彼らは、この現代社会に隠れ潜んでいるからだ。ほとんどが表に出ることがなく、決して、社会の舞台に立とうとはしない。まるで、現代社会を隠れ蓑にしているように、巧妙に、そして寄生虫のような細やかさをもって、身を潜ませている。……そして、それを補うように、彼らは元々一般人に

2015-05-04 01:01:10
tome @tomekawa

見つかりにくいのだ。……そして、この隠れる暮らしているという法則は、誰が決めたわけでもない。いつしか、者達の中で、表に出さないように、という暗黙の了解となったのだ。その者達の中にはいつしか、隠す事を誇りにしながら、表に出す事を嫌う者まで出てくるようになった。しかし、その理由は蓋を

2015-05-04 01:03:32
tome @tomekawa

開けてみると、ある一つの理由が多くを締めている。――現代社会と相反している。反社会的である。そういった者達が多いのだ。つまり、国の法律を守るための組織、警察との相性が非常に悪い。それでいて、彼らは犯罪に手を述べているのだから、この東京に独自のアンダーグラウンドを、着々と築きつつあ

2015-05-04 01:07:17
tome @tomekawa

るのだ。何より驚きなのは――昔から存在する反社会的勢力である、右翼組織や、暴力団、若者のギャングや暴走族といった組織を、軽々と越えていった事だろう。最早、そういう組織構造すら、今やその者達の配下、もしくは一部として取り込まれてしまっているのだ。まるで、一夜にして生まれ出てきたもう

2015-05-04 01:09:41
tome @tomekawa

一つの社会のように、一瞬で勢力図を塗り替えた。それから、その者達の手によって、今まで積み上げてきたものを瓦解させ、新しくしていくのに時間はかからなかった。暗黙の了解があるなどのちょっと知らなければわからないような、彼らなりのルールもそういった過程で出来上がったのである。そう――誰

2015-05-04 01:11:18
tome @tomekawa

が決めたわけでもない。しかし、彼らは確かに存在している。その中に、理念や理想など微塵も持たない。乱痴気騒ぎに身を投じている者も居た。喧騒と狂乱を好み、活動に対して何ら、覆い隠そうとはしない。全てをさらけ出しはしないが、何時そうなっても可笑しくはない、爆弾のような存在。自分達の活動

2015-05-04 01:13:06
tome @tomekawa

で行われる乱痴気騒ぎを通じて、一種の陶酔に近い感覚を共感している。ここ、東京の有楽町にある地下クラブを拠点とする彼らもまた、、そういう者達であった。薄暗い地下に潜みながら、その実、欲に欲を振りかけたような、酒と狂乱に耽る匂い。乱痴気騒ぎを飽きる事なく行っている。ただ、この地下クラ

2015-05-04 01:14:07
tome @tomekawa

ブは、他と違う所が幾つかある。社会の裏に属する者達ならではの嗜みみであろうか。クラブの内装は、派手なものばかりだ。巨大なディスプレイ。専用のカウンター。入り口は狭く、階段から降りなければ入れない。トイレへ続く廊下の扉。様々な角度からライトアップ可能な機材と映像用の機材複数。中には

2015-05-04 01:14:45
tome @tomekawa

壊れているものも存在しているので、整備されているかどうかはわからない。その割にはいかにも高そうな音楽機材なども揃っている事から、資金源はそれなりに持っていることがわかる。内装は、こういう所にしては、比較的綺麗な方だ。座るソファーに関しても、やわらかな質感と手触りの良い高級な素材だ

2015-05-04 01:16:18
tome @tomekawa

とわかる。面白いのは、壁にはドラム缶が設置されている事だ。面白い事に、柔らかいソファーを選ばず、このドラム缶に座っている者達が居る。クラブの中は、高級クラブを意識して作られているのか、クラシックなデザインで統一されている。黒く磨かれた発電床は、踏むと黒い床の上を薄暗くてらしてくれ

2015-05-04 01:16:55
tome @tomekawa

る。壁はブラックライトによって薄暗い碧色に照らされている。煙草の煙で、時折煙たい事もある。しかも吸い殻は皆、床に捨てている。吸い殻の落ち具合から考え絵も床は綺麗に磨かれていた事に、最初、疑問を抱く者達も多いが、よく床を見ていると、三台ぐらいの円形型のロボット掃除機がせわしなく動い

2015-05-04 01:17:33
tome @tomekawa

ているのがわかる。ここに来たものはその内装の豪華さに圧倒されるものだが、……招かれた客は違った。その者は、周囲を見渡して、そのクラブの中心にある黒いソファーの上に、堂々と、傲慢に腰を沈めれば、まるで、この場所は自分のものだと言わんばかりの態度を見せる。然し、その姿に違和感を覚える

2015-05-04 01:19:47
tome @tomekawa

者はいない。「随分、金持ってるじゃねーか、上出来だ」 クラブの中に居る者達の視線を気にも留めず、傲岸不遜に、改めてソファーの中心へ、深く腰沈ませて座り、足を組み、頼んでおいたショットグラスを一気に煽る。その後この場にいる全員を一瞥した後、嘲笑って見せた、この女の名は――円まい子。

2015-05-04 01:21:37
tome @tomekawa

――――――――Chapter 3「過激派」―――――――― 馬鹿な、味あってはならない快楽などあるものか!―F・モーリアック

2015-05-04 01:22:03
tome @tomekawa

激しく粒の大きい雨が降り注ぐ。滴が、冷たいコンクリートの車道に跳ね返る。車がその上を滑るように通り過ぎて行く。今にもスリップしそうなぐらい、コンクリートの上は水溜まりを作っている。雨の上を通り過ぎる車は数少ない。その車道の脇で、濡れる雨など気にせずに居る者達が居た。彼らは数人で固

2015-05-04 01:25:00
tome @tomekawa

まっており、激しい雨が打ち付ける中、傘もささずに、その雨を避けもせず、車道からちょうど影になる路地の奥にいた。駐輪場で、彼らは全部で、六人いた。輪を描いて、彼らは様々に、その駐輪場から、一点に視線を注いでいる。「さむっ、何でこんな雨降ってんのに」一人、女らしい声が聞こえれば、野次

2015-05-04 01:25:59
tome @tomekawa

を飛ばすのは、白髪の男。このカラフルな髪の毛の中で唯一色無しは、ある意味、特徴的であるといえよう。「手前、今、ちゃん付けしただろッッ!」ミオと呼ばれた男の何か、事線に触れてしまったのか、雨に流されないほどの怒声をあげれば、自転車がいくつも倒れる音が聞こえてくる。激しく鉄が擦れ、盛

2015-05-04 01:26:33
tome @tomekawa

大に転倒する自転車達の音は、激しく降り注ぐ雨の音が相殺してしまう。その喧騒を聞いても誰も動揺しない。「おいおい、相手は俺じゃねえだろう」茶化した男の声を聞けば、息を荒くしていたミオが、思い出したかのように振り返る。そのミオの先には怯えるように、女性が一人、後ずさり、逃げようとして

2015-05-04 01:27:31
tome @tomekawa

いる。携帯電話は取り上げられたのか、持っていないのか、警察を呼ぶ気配ではない。その女性の髪の毛を掴めば、ミオが引きずる。「あいつ、飽きないよね」「労力が有り余ってんだろ、労力が」「だったら、バイトして金稼げっつうの」飛んでくる野次は、どれも個人的なものばかりで、言いたい放題だ。女

2015-05-04 01:27:54
tome @tomekawa

性を心配する余地など無い。ミオの怒声が、女性の悲鳴と重なる。打ち付ける雨の向こうへ女性が逃げようとしても、ミオの腕が、怯えている女性の髪の毛を掴んで、引き倒そうとする。「おい」その一言で、ミオの腕が止まった。横から飛んできた声の方角を、その場に居た全員が振り向く。そこにいるのは、

2015-05-04 01:28:37
tome @tomekawa

駐輪場の倒れていない誰ともわからない自転車の上に座り、ガムをかみながら、女性に暴力をふるおうとするミオに注がれている。爬虫類のような瞳に、長い紫色の瞳、どこかパンクロッカーにも見えなくもない、長いトレンチコートを羽織った若い男が、一度、被害者になろうとしている女性の方を一瞥した後

2015-05-04 01:28:51
tome @tomekawa

、ミオに再び視線を戻す。「ついさっき、言ったな」ガムをかみながら、気だるそうにミオを見れば、ミオは女性に掴んでいる髪の毛の腕を緩める。「わかってるって、多少は」緩めてやると、被害者の女性から完全に手を離すことはないまま、見下ろしている。さて、どうしてやろうかと、考えている素振りを

2015-05-04 01:29:19
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