新生の門出

オレと僕とオレ達と @larme_rain

虹村さん、虹村さん。 「おー？」 前、言ったっスよね。お願いがあるって。あれ、今いいっスか？ 「…内容によるが、まぁ、いいけど。なんだよ」 んと、あのね。

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(鏡の前に座した侭、ふわりと首に布巻きつけ) 「いいのかよ？俺が切っても」 襟足のとこ、ちょっと短くするくらいでいいっスよ。 「そうじゃなくて。俺素人だぜ？」 でも弟さんの髪、切ってたんでしょ？ 「まぁな」 大丈夫っスよ、後でちゃんと整えて貰うから。

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「それならいーけど」 …最初から店に行けって、思わないんスか？ 「言って欲しいのかよ？」 ううん。ありがと。 「へいへい。寝るんじゃねーぞ」 寝る程長くかけなくていいっスよ。 「そりゃそーか(首に沿うように伸びた髪掬うとしゃきんと鋏で細い糸を切り始め)

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ねぇ、虹村さん。 「動くと切りすぎっから動くなよ。で、なんだ」 俺ね、知ってたんだ。 「何を」 虹村さんは事あるごとに、俺を振り回すくらい騒いで、巻き込んで。嵐みたいに、このお屋敷を駆け抜けて。凄く理不尽な思いもしたし、疲れたけど。 ずっと、俺を元気づけようとしてくれてたこと。

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泣いてばっかで、塞ぎ込んで、中学の頃と別人みたいになっちゃった俺を、最初に見た時。虹村さん、びっくりしてたっスよね。でも、何も訊かなかった。久し振りだなって、何も変わらずに、相変わらず手加減なしでばしばし叩いてきて。赤司っちあたりから聞いたと思うけど、俺には何も訊かなかった。

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あの時の虹村さんの声、驚きはしてたけど、昔のままだった。むしろ昔以上に、きらきらしてて、あったかくて。元気づけようとしてくれてるんだなって、分かっちゃったけど。でも、俺は、嬉しかった。嬉しかったんスよ。 「…」

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虹村さん。俺ね、先輩には恵まれたと思う。勿論アホみたいな先輩も、ケーベツするような人もいたけど。高校の、笠松先輩も、小堀先輩も、森山先輩も、早川先輩も、中村先輩も。みんなソンケーしてて、大好きなんスよ。俺、今だって、あのチーム、大好きだから。あの青が、大好きだから。

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でもね、恵まれたのって、高校だけじゃないって。今、そう思う。 虹村さん。俺、虹村さんが先輩で、虹村さんの後輩になれて、よかったっス。ありがと。

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「………」 ……えと、虹村s「べっらべらべらべらよぉーく回る口だなぁテメェはよぉ」 っぐ、ちょ、しま、虹村さんしま、絞まってる、絞まってる！ 「おう、絞めてるからな」 はさみ、はさみあぶな、苦し…！(腕ばしばし)

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し、ぬかと思った…！ 「それなりに本気で絞めた」 アンタただえさえ手加減苦手なのに本気でやりにくるっスかふつー！ 「ワリィワリィ、これも俺の愛だ」 愛が苦しい！

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「ま、お前に限った事じゃねぇが、本ッ当にクソ可愛くない後輩だったよ、ホント」 あは。 「俺が苦労して入った一軍にひょいひょいお手軽に入るしクソみてぇに成長速度はえぇしホントマジムカついたわ」 そうっスよねぇ。 「けどま、揃いも揃ってガキンチョみてぇだったわ」

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「クソ可愛くなかったけどよ。それでも俺にとっちゃ可愛い後輩な事に変わりはねぇからな。今までも、これから先も」 、……にじ「ほれ、こんなんでいいのか？(後ろ見えるように鏡構え)」 ……うん。ありがと、虹村さん。 「ん。」

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@tos (奥の部屋、ひとり。締め切った暗い部屋の中、向かいの闇が人影を象り) 『…ホントに、いいんスか』 …ん。 『外の世界は怖いもんや汚いモンばっかスよ。その目が治ってない今、やっぱり毒でしかないし、無茶だと思うんスけどねぇ」 ……いきなりは、多分、難しいかな。

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@tos ……でも。もう、決めたから。 『……そ。んじゃまぁ、頑張ればいいんじゃないスかね。』 うん。ねぇ、 『何スか』 俺の代わりに、いてくれて、ありがと。 『……俺はアンタっスよ、自分に礼言うとかサムいっスわ』 あはは。

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@tos 『……じゃ、ただいまってやつ？』 …うん。おかえり。

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俺のこの目はまだ、世界を拒む。見えない筈の汚いものも、怖いものも、沢山映す。でも、それだけじゃない。俺にしか見えない、綺麗な色だって、ある。 だったら俺は、見えるもの全部、俺の糧にする。俺が持たない色を全部纏って、俺の武器にしていく。どんな色だって、俺として、纏ってみせる。

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俺の涙はもう、代わりに流すものじゃないから。その必要はもう、なくなったから。俺は俺の足で、この目で、全部の色を受け止めて、生きていく。 俺はもう、変わっていかなきゃいけないから。

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ーーーさぁ。 新生黄瀬涼太、始動っスよ！