本格心霊体験ビデオ　ミヤコ幼稚園を包む影　セクション４（完）

コセン・ニンジャ @kosn_ninja

これまでのあらすじ・色々あった。その過程で色々失った。だが、宿敵であるカンザキの居城、巨大トマト要塞に、俺はついにたどり着いたのだ。決戦は近い… ＃ksnjyb

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夕陽に照らし出された赤い道。まだ燃料の入ったジェットパックを脱ぎ捨て、巨大トマトの外殻を俺は往く。幼稚園、研究所、たくさんの俺、トマトまり、ライジング無農薬、ヘリパイロットのベン、ミヤコ幼稚園のみんな。これまでの道のりが走馬灯のように脳裏を駆ける。 ＃ksnjyb

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何故に歩む？人類を救うため？いや違う。俺たちの、ミヤコ幼稚園のささやかで楽しい日々を守るため？それもある。だが、真の理由は自らのケジメの為だ。あの時研究所で、自分の分身の全てを廃棄した時、俺はカンザキに復讐する事を心に決めた。故にあの事実にも何とか耐えられたのだ。＃ksnjyb

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憎しみ…怒り…絶望…焦燥…幾多の感情が混ざろうとも、幾多の思考が入り乱れようとも、その中に迷いは無い。迷いは、余計なものは、あの研究所で全て捨ててきたのだから。おお、なんと心の軽きものか、それのなんと心地良きものか。おかげで俺は、 ＃ksnjyb

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敵を無慈悲に薙ぎ裂く、一振りの大鎌となれるのだから。 ＃ksnjyb

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【本格心霊体験ビデオ ミヤコ幼稚園を包む影 セクション4 後編 】 ＃ksnjyb

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直径100メートルほどの大穴。歩くうちにそれが前方に見えてきた。エクトプラズムの吸入口だろう。現に今、新たなエクトプラズムが彼方から飛んできて、吸い込まれるように穴の中へと入っていった。覗き込んでも底は見えない。ただ、暗き深淵があるのみだ。 ＃ksnjyb

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底無き深淵に潜むは、元凶たる科学者カンザキと、謎に満ちた天使。トマトまりは天使が俺を待っている、と言っていた。俺に殺されるために待っているのだと。彼女が自らそれを望む理由はわからない。だが、待っているというなら向かわねばならぬ。俺は大穴に飛び込んだ。 ＃ksnjyb

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「窓を死守しろ！一匹も中に入れるな！」「ギャー！トイレの窓から侵入された！」「トイレごと封鎖するんだ！」「魔力切れだ！」「こっちは弾がない！」「ち、ちんこ…」「非戦闘員は全員キッチンに下がれ！」「たろりんが気絶した！」幼稚園の中はまさに鉄火場というべき光景だ。 ＃ksnjyb

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大地を埋め尽くすかのようなトマトモンスターの群れが、幼稚園を取り囲んで中に侵入せんとしているのだ。我々を始末するために。それを幼稚園のメンバーが押しとどめている状況だ。「シェパード大佐！大丈夫か！？」「！…ああ大丈夫だ」イツキの声。名前を呼ばれて私は咄嗟に反応した。＃ksnjyb

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「クソッ！せいやぁ！」イツキが、窓から身を乗り出して侵入を計るトマトモンスターにテッコのストレートをお見舞いした。「ARGG！」ブチュ！という破裂音と共にトマトモンスターは弾け、トマトジュースを床に撒き散らす。プシュー、テッコが高温ガスを排気した。 ＃ksnjyb

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「「ARGGG！」」だが、トマトモンスターの数は減る気配を見せず、外の景色が赤い洪水なのは変わりない。BANG！BANG！私は窓の外めがけ、拳銃でブラインドショットした。すまない我が妻マリア、我が娘メアリー。私は愛するお前たちを見捨て、人類の未来を選んだのだ。 ＃ksnjyb

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あの監禁施設で、お前たちの死体は見つかってはいない。そう聞いている。だが、こんな事態になってしまった以上、財団は私の裏切りを許しはしないだろう。報復は確実に実行される。すまない…すまない…マリア…メアリー…あの日はメアリーの誕生日だった筈なのに…私は… ＃ksnjyb

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「「「「「ARGGGGG！」」」」」「だめだ！数が多すぎる！」「何かいい手は無いか！？」「誰かが外に出て囮に…」「だめです！一人も欠けてはいけません！」私は…「誰か、ナイフでも何でもいい。近接武器をくれ」「大佐！？」「いいから、よこせ」「大佐…何で泣いてるんだよ？」＃ksnjyb

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いつの間にか泣いていたらしい。らしくも無い、これでも軍では冷徹幹部で通している筈なのに。頬を伝う涙を拭った。「…これを」私はオオトリから差し出された大剣を受け取る。それは窓から差す夕陽を受け、青い刀身にわずかな赤みを帯びている。いい剣だ。私の大往生に相応しい。 ＃ksnjyb

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「大佐…」「いいから。私は死なないさ」それは嘘だ。私はここで死ぬ。イツキとこっぺぱんが戸に付いた。「3カウントだ。3数えたら開けてくれ」「…了解」二人とも暗い顔をしている。私を仲間と思っているのか？それは違う。私は妻と娘を見捨てた大罪人だ。「1…2…3…今だ！」 ＃ksnjyb

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「私が外に出たら、皆は弾を節約してくれ」それは、私が時間を稼いでいる間、皆の戦力をいたずらに減らさせ無い為である。「大佐！援護射撃は！？」「必要ない。戸を開けてくれ」マリア…メアリー…すまんな。私はもうすぐそちらに行く。お前たちに会ったら、どんな顔をすればいい？＃ksnjyb

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戸が開いた瞬間、トマトモンスター達が雪崩めいて次々と飛び込んできた。「せいやあああ！！」私は衰えつつある肉体に鞭を打ち、大剣を振るう。「「「ARGGGGGG！」」」青い刀身が閃き、トマトモンスター達をジュースに変えていく。不思議だ、私は死を恐れていない。 ＃ksnjyb

コセン・ニンジャ @kosn_ninja

「せいやあああ！！！」「「「ARGGGGG！」」」返し刀でもう一振りすると、トマトモンスター達がジュースになり、一瞬、外に出る為の空間が空いた。私はそこに身を押し込み、外に飛びだした。無慈悲な赤い洪水が押し寄せてくる。剣を構え、神に祈る。どうか、妻と娘に祝福を。 ＃ksnjyb

コセン・ニンジャ @kosn_ninja

罪深き私はここで、この幼稚園を守りきって見せます。だから、だから…「「「ARGGGGGGG！」」」トマトモンスターの波が迫る。「せいやああああああ！！」私は大剣を振り上げた。「シェパード大佐アアアアア！」私を呼ぶ声……… ＃ksnjyb

コセン・ニンジャ @kosn_ninja

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コセン・ニンジャ @kosn_ninja

落下、落下、落下…どれだけ落ちていくのだろうか？いつまで落ちていくのだろうか？大穴に飛び込んでからかなり経った気がする。上には月ほどの大きさにまで縮んだ大穴から、光が見える。だが、俺の周りにあるのは果てのない暗闇だけだ。 ＃ksnjyb

コセン・ニンジャ @kosn_ninja

俺は、研究所で邂逅したプロトタイプの事を思った。彼女が俺に伝えたかった事。俺が彼女に聞きたかった事。会ったのはあのクソ研究所で、しかも培養槽のガラス越しの一回だけの筈なのに、なぜか彼女の事が気になって仕方ない。そう思った時、不意に足裏に地面の感触を感じた。 ＃ksnjyb

コセン・ニンジャ @kosn_ninja

何故か、殆ど足に衝撃が無い。俺は辺りを見回した。白砂の砂漠と常闇の空。砂漠は表面にたえず白い輝きをたたえながら、あちこちに丘のような盛り上がりを作り、真っ暗な夜空はそこに一切の光の存在を許さず、澱んだ闇を空に貼り付けている。ひたすらに寂しく、幻想的な風景だ。＃ksnjyb