詠歌百首　於水無月十三日十四日

沙弥惨状 @seymour_o

それ詠歌は必ずしも好むにのみよらじ、即ち好まずは詠む故なしとは僻事なるを、さすがに此道を打ち捨てば身の由もまことにおぼえずなりぬべし。されば今より #詠歌百首 とて詠み出だしてむ。題は堀河百首にならひつつ、歌詠むにことよせて連ぬる、いざ推して参る。

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玉津島春とともにぞ立ちにけるいや高からむ和歌の浦波 #詠歌百首 立春

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散りうせぬ葉をたがまつとなけれども身は子日より引きに引きてむ #詠歌百首 子日

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隔てをもあはれぶべきは春霞誰も立ち入るよしのありけり #詠歌百首 霞

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憂き世しも生くれば人にさきがけてまづながめつる鶯の声 #詠歌百首 鶯

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いにしへの沢の水茎かばかりを若菜のうちにつむかひやなき #詠歌百首 若菜

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白山や消えせぬ雪をかきためてまたふることのかひのありとは #詠歌百首 残雪

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わが袖にいく世を過ぐる形見とて梅の香のもととむるよしもが #詠歌百首 梅

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いにしへの白玉ならぬ言だにも青柳のいとくり返してむ #詠歌百首 柳

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憂き身にも折らでは過ぎじ思ひやるおどろの道の跡の蕨を #詠歌百首 早蕨

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散るごとになほまさりけるながめかなくらぶの山の言の葉櫻 #詠歌百首 櫻

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ながらへむその年ごとに春雨のふること止まぬ世の名にし負へ #詠歌百首 春雨

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厭ふべき道なきものは敷島や駒こそ捨てて帰る世にまれ #詠歌百首 春駒

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問ひてまし雲居の雁の行末にかくてなれよむ人のありやと #詠歌百首 帰雁

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今更に木陰とめてもおぼつかなならひのよすが呼子鳥にて #詠歌百首 呼子鳥

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世の中にまかせて朽つる苗代や引く人なくて古き荒小田 #詠歌百首 苗代

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一道をかけば憂き世に菫咲く野となつかしみ寝もすべきものを #詠歌百首 菫菜

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唐衣かけてもしのぶ杜若書きつくしてむかひはなくとも #詠歌百首 杜若

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久しくもまつはり来つる藤波に立ち返るこそめでたかりけれ #詠歌百首 藤

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今ははやさかりをしのぶ井出の水かはづ鳴きそふ山吹の花 #詠歌百首 欵冬

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来む年の春やいかにしながめやる惜しさにかへて積もる言の葉 #詠歌百首 三月尽

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世の中の人は衣をかへつとも新たの袖はかけて思はじ #詠歌百首 更衣

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住みわびて身をうの花のながめだに踏み入る先は敷島の道 #詠歌百首 卯花

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またも引くそのかみ山の葵草かくあふ日なきことは知りつつ #詠歌百首 葵

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時鳥鳴けど鳴かねどいにしへはここらそへたるながめなりけり #詠歌百首 郭公