20150703_ある旅人と雨

#もらったお題を全部まとめて一つにする オリジナル、タイトル未定なんか前回の続編みたいになっているけど特に何の予定もありません。ごりょうしょうください。■途中磁気嵐やばかったです
0
ユらウはきろくをつける @lusgycoautl

戦争 扇風機 ダッシュ オーガニック 浮遊島 ゴミ箱 ロブスター さなぎ コミュニケーション不全 カエルチャン お題いただきましたゆえにがんばります

2015-07-03 01:49:09
テキストカラテ用yulou @glscat

……「記録完了。ウェイブ、おいで」「ナー」地図に二度目のルートを記録した少女は、地図入れにそれを戻した。「撥水呪文どれだっけ……」「ナーン」「これだ。ありがとう」少女の周囲に青い光が閃き、彼女を包み込んで消えた。少女は広場の泉に飛び込んだ。 1

2015-07-08 22:08:44
テキストカラテ用yulou @glscat

それは水面から眺めるよりも遥かに幻想的な光景であった。色とりどりの魔石が水底に育ち、水中を照らしている。少女は記録用の魔石を取り出し、その光景を撮影した。広い。やはりこの状態の維持には魔石が一役買っているのだろう。(砂漠って魔石たくさん出来るんだったなあ)…… 2

2015-07-08 22:11:44
テキストカラテ用yulou @glscat

……「何故滅亡したのか、だな」ドラゴン……砂漠色の鱗から、少女はキイロと呼ぶことにした……は、葡萄のごとく鈴なりになった林檎を一粒啄ばんだ。薬も成長促進呪文も不使用、オーガニックだ。「一説にあった通りなら、ここは魔法の力で滅びたんだって」「そうだ、私はそれを見ていた」 3

2015-07-08 22:14:16
テキストカラテ用yulou @glscat

キイロは懐かしむように空色の林檎を咀嚼しながら続ける。「巨大な魔法だった。あれがこの辺りを平地に変えたのだ」一瞬で、消えてしまったのだという。さらに、続けて放たれた致死呪文は街にいた人間を一瞬で消し去った。少女は眉を寄せた。今は存在しない呪文だ。 4

2015-07-08 22:18:10
テキストカラテ用yulou @glscat

「ドラゴンは平気だったの?」「あの程度の魔法は防ぐなど造作もないのでな」キイロは頷き、少女の相棒たる獣「ウェイブ」を見やった。「あれは珍しいな。随分と遠くから来たのか」「飛竜に運ばれてたのを助けたら懐かれて。それから相棒なんだ」「美味いからな」「美味い」「ウナー」…… 5

2015-07-08 22:46:32
テキストカラテ用yulou @glscat

ジリリリリリ!ジリリリリリ!少女はベッドから跳ね起き、目覚まし時計を探す!「……!」あった!丁寧に止め、時刻を確認する。「寝坊時刻」の文字。だが朝食にギリギリ間に合う時間だ!「……!!」可能な限りの速度で着替え、ダッシュで部屋を飛び出す! 7

2015-07-08 22:48:24
テキストカラテ用yulou @glscat

「うわあああ!」少女は悲鳴を上げた!角から起こしに来たらしい少年が飛び出してきたのだ!咄嗟に飛び越えて壁に着地しながら少女は彼を見やる。その動きに二度目の驚きを覚えたらしい少年はしかし、口を開いた。「あの、あの、朝」言葉になっていない。「ごめんね」 8

2015-07-08 22:50:06
テキストカラテ用yulou @glscat

ここは砂漠との境目に位置する中規模の拠点だ。まだ古代遺跡までは距離があるものの、緑が多く果物も採れるために訪れる者は多い。「元々はここも遺跡でなあ」「そっか、ここもギリギリ巻き込まれて……」「ああ」かつてあった大きな戦争。ギルドがその際に滅んだ町を修繕し、建て直したのだ。 9

2015-07-08 22:54:05
テキストカラテ用yulou @glscat

例の巨大な古代都市の遺跡も同じようにしていくのが彼らギルドの目標の一つであるという。少女がしているのはその最初の段階である。ただ、彼女は一介の旅人……冒険者とも言う……であり、調査は本来彼女の本分ではない。だが、提示された報酬はその不満を覆すのに十分であった。 10

2015-07-08 22:54:20
テキストカラテ用yulou @glscat

「あんたも立派な一員だな」「はは……」初老手前のギルド隊員が「青い」林檎を放って寄越すのを取りながら、少女は苦笑いした。「本格的に一員になったら転移許可証欲しいですね」「ギルマスに声かけてみるがいいさ。二つ返事でOK貰えるだろ」言いながら隊員はシャク、と林檎を齧る。 11

2015-07-08 22:56:05
テキストカラテ用yulou @glscat

外は重く暗い曇り空だった。蛙たちがまばらにやがて一斉に鳴き出す。雨が降り出した。まばらに雨粒がつく窓から、少女は外を見やる。「こりゃ島だな」それを見ていた隊員が呟いた。「珍しいですね、街の上を通るなんて」「ああ。これからどんどん降るぞ」浮遊島の雨雲は極めて局地的だ。 12

2015-07-08 22:57:14
テキストカラテ用yulou @glscat

あっという間に本降りになった雨の中を、飛空艇が飛び立つ。「飛空艇、この雨なのに飛ぶんですね」「まあな。雷鳴っちまうとダメだが」隊員が言ったその時、空が閃いた。「ダメだー!」叫ぶ彼女をよそに、飛空艇は悠々と飛び去っていく。「雷防げるやつが乗ってんだろ」「ああ……」 13

2015-07-08 22:59:11