2軒目【それを恋と呼ぼうよスピンオフ】

かおり @orange_shake_

【宴の後・1】 いそいそと帰っていった亮の背中を見ながら笑ってしまう。 あんなラブラブやのに、あいつは何を不安になっとんねん。 あれ、ラブラブって死語？ あとは…こいつらやな。 爆睡と号泣を見て溜息。こいつらのせいで全然酔われへんかったわ。まあ、ええけど。

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【宴の後・2】 「すんません、お会計お願いしますぅ」 会計を済ませて、問題はこいつらをどう帰らすかや。 ヨコはともかく、大倉これ1人で帰されへん、というか起きる気配ないやん。 …ごめん、許して。 心の中で"彼女"に謝罪しながら、大倉の携帯から着信履歴の1番上を呼び出す。

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【宴の後・3】 『はぁい…たーくん？』 「すんません、村上ですぅ」 『…またですか。(笑)』 電話に出た"彼女"は、俺の声を聞いただけで全てを察したらしい。 ほんま、よぉできた彼女やで。 「ごめんなぁ、毎回毎回…」 『こちらのセリフです。いつもご迷惑おかけしちゃって。』

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【宴の後・4】 『今、どこですか？』 「◯◯ってとこ。わかる？」 『わかります。あ、すぐ行くんでもう置いて帰ってもらって大丈夫ですよ！』 「さすがにおるわ！(笑)」 電話を切って本当にすぐやってきた彼女は、細くて可愛らしいのに色々と強い子で。 『ほら、たーくん起きて！』

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【宴の後・5】 "うっひゃあ！つめたぁい！" 大倉の耳に氷を詰め込んで起こす。良い子は真似したらあかんやつ。 『はい、帰るよ！村上さんにご挨拶！』 "んふふぅ、信ちゃんごちそうさま〜♡" 『本当すみません、ご迷惑おかけしました。』 大倉の頭を掴んで下げさせる。オカンか。

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【宴の後・6】 『もしまたご一緒させていただけるなら、その時はこの人に払わせて下さいね！』 ほんま、姐さん女房って言葉がぴったりやな。 彼女に抱きついたでっかい身体を引きずって、颯爽と店を出て行った。 【宴の後・おしまい】

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【姐さん女房・1】 『なぁ、怒っとるぅ？』 「…別に、怒ってないけど。」 『じゃあ何でこっち見てくれへんの？』 繋いだ手をぶんぶん振りながら膨れてる。 「たーくん前見てないから、私が見てないと危ないから。」 『むー…見とるし。』

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【姐さん女房・2】 思いっきり首がこっち向いてますけど。 あなたの目はどこについてるんですか。 『酔っ払ったから怒っとんのぉ？』 「そんなことじゃ怒らない。」 『じゃあ何ぃ？』 もう、そんな可愛い顔しないで。 また甘やかしてしまいそうになっちゃうから。

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【姐さん女房・3】 「む、村上さんに迷惑かけすぎなんだよばか」 『…なんやぁ、そんなこと？♡』 「そんなこと、って…」 家に辿り着く。 鍵を開けて中に入ると、繋いでた手が離れてあっという間に彼の身体に包まれて。 『信ちゃんは俺らの面倒見るのも嫌いじゃないからええのー♡』

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【姐さん女房・4】 「それ村上さんが言うならまだしも、迷惑かけた張本人が言うかなぁ」 呆れながらも彼の背中に手を回す。 まあ、そうなんだろうけど。 私だって何回酔っぱらいのお迎えに行ったかわからないけど、全然嫌にならないんだもん。

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【姐さん女房・5】 おいしいもの食べて飲んで、大好きな人に囲まれて本当に幸せそうなたーくんの笑顔が、大好き。 『なーぁ、ラーメン食べたいー。』 出た。飲んだ後は絶対これなんだから。 「太っちゃうよー？」 美味しそうな顔、私も見たいけど。 今ドラマやってるし…ね？

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【姐さん女房・6】 『むー…』 口をむにゃむにゃしながらむぎゅむぎゅくっついてきて。 『あ！じゃああれ言うて♡』 「あれ…？」 『ラーメンがあかんなら、別の九州の味！ほらーはやくー♡』 「…ああ、」 鹿児島出身の私。 そう、彼が言わせたいのは。

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【姐さん女房・7】 「たーくん、わっぜか好き♡」 方言萌えって、全然理解できなかったけど。 『うきゃー！♡可愛い可愛い♡もう1回！』 「えー、じゃあたーくんも言って？」 『俺も！お前のこと、わーっぜか好っきやでぇ♡』

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【姐さん女房・8】 真似してくれたんだけど、関西弁混じってるし。(笑) うん、方言も可愛いのかもしれない。 結局、彼なら何でもいいのです。 【姐さん女房・おしまい】

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【宴の後の後・1】 「次は…こいつか…」 姐さん女房に担がれて帰っていった爆睡王子を見届けると、 "ひなぁー…" 「お前はいつまで泣くねん」 だいたい、何で泣いとるかもわからへんし。 「1人で帰れるか？」 "嫌や！置いて帰らんといて！" あーもーめんどくさい！

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【宴の後の後・2】 びーびー泣いてる33歳児の肩を担いで、家まで送ってくことにした。 どこまで手ぇかかるねん… 「重っ…」 痩せたとは言うても、筋肉量増えてるから重いなやっぱり。 "ひなぁ、俺らもっと頑張ろなぁ…" 「…おん。まずは自力で歩くとこからな。」

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【宴の後の後・3】 ヨコの家に着いた。 「ヨコ、鍵どこや」 "え〜？鍵？えーっとぉ、鍵、鍵…かぎ…" 「おいお前まさかやと思うけど。」 "鍵あらへん！！" 「………。」 もう、置いて帰ってええ？ 俺、ここまでちゃんと連れてきたし。

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【宴の後の後・4】 てか、なんで部屋の中まで送ろうとしたんや俺は。 鍵とか聞かんとさっさと帰ったら良かったんやな、おん、今のくだり一旦なかったことにしよ。 「じゃあなヨコ、おやすみ！」 "待ってヒナ！鍵あらへん！" なかったことには…できんかった。

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【宴の後の後・5】 「なんやねんお前はもぉぉ！いつもどこに入れとんねん！」 "え、いつもは、ここのポケットかケツのポケットか、カバンのここか…" 「どれかにせぇ！」 なんで入れるとこ決めとかんねん、そうやってあちこち入れとるからわからんなるんやろ！ 『あの…』 「ん？」

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【宴の後の後・6】 後ろを振り返ると、大人しそうな女性。 あ、この人… 隣にいた33歳児を見れば、案の定さっきまでのぐでぐではどこへやらキリッとしとるし。 なんやねん酔うてたんちゃうんかい。 「あ、すんません通れます？」 オートロックの前を占領されて、困ってたんやろうな。

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【宴の後の後・7】 確か、ヨコの部屋の隣に住んでる子。 で、片想いのお相手。 確かにふわっとした雰囲気で可愛らしい人やなぁ… 『あの…どうかされたんですか？』 俺やなくてヨコに話しかけてるから、隣人ってことはわかってるみたいやし。 考え方によっては、これってチャンスちゃう？

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【宴の後の後・8】 "いえ何も「そーなんすよー！この男ね、鍵なくしてもうたんですわぁ！」…おい、ヒナ！" カッコつけたかったんか知らんけど、鍵なくしたこと隠そうとしてるヨコの言葉を遮ったった。 だって、俺これ以上何も出来へんし。

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【宴の後の後・9】 同じマンションの人の方が、まだ何とかしてくれそうちゃう？ 『え。それは大変…とりあえず、ここじゃ何なので入ります？』 "いや、でも「ほんまですかぁ？いやぁ、助かりますわ！じゃ、あとよろしくお願いしますぅ！」"

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【宴の後の後・10】 まだゴチャゴチャ言いだしそうなヨコを押し付けて、俺は逃げることにした。 ここまでやったんやから十分やんな？ 「じゃあなヨコ、おやすみ！」 "おい待てってヒナ！" 知らんわ！ええパス出したんやから、後は勝手に頑張ってくれ！ 【宴の後の後・おしまい】

かおり @orange_shake_

【隣人物語・1】 「ちょっと待ってて下さいね、えっと…」 何この状況。 当たり前のように部屋に通されて、呆気にとられてるうちにお茶まで出されて。 こんなありえへん状況やのに、出されたのがコーヒーでも紅茶でもなく湯のみに入った緑茶ってとこが何かええな、なんて冷静に考えてたり。