7番のおまつり

素敵タグに便乗してみた結果。新旧7番(旧多め)のどちらかもしくは両方と、その日の背番号の誰か、の小話まとめ。 最終日だけちょっと違います。
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ゆち @yuzuen

【7/1】若いな、と思っていた。生気に満ち溢れている姿が純粋に羨ましいという意味で。「じーさんか」しみじみと呟いていたら、横から突っ込みが入る。「達海さんも若いですよ、その年にしては」ピッチの上の7番と、今はベンチにどっかりと座る、過去に対峙していた7番とに目を向けて。 #7番祭

2015-07-01 00:07:43
ゆち @yuzuen

【7/2】「後藤ー、暑いー」「もう夏だからな」「アイス食いたい。今すぐ」「今?」「明らかに仕事中の後藤さんパシリにする気かよ…」黒田は俺への助け船、ではなく、単に達海への文句が言いたかっただけらしい。「うん、仕事中だね」「だろ?」「だからー、アイス食って落ち着けって話」 #7番祭

2015-07-02 00:13:11
ゆち @yuzuen

【7/3】じっと見つめてくるその視線の先に、俺の左腕に巻かれているものがあった。「変かな?」それに触れながら訊いてみると、慌てて首を振ってくる。「い、いえっ!やっぱり、俺なんかがつけるより断然しっくりくる、って思って…」この後輩と、チームに、少しでも胸を張れるように。 #7番祭

2015-07-03 06:36:42
ゆち @yuzuen

【7/4】「どうですか椿さん?」「え、そ、そんなこと言われても、その…」マイクを向けられて小さくなる声と縮こまる身体に、どっと笑いが起こる。「練習なんだからさ、あまり力入れるなよ」「は、はい」「では代表への抱負を一言」「だっ、代表!?」と、声が裏返る。道のりは遠そうだ。 #7番祭

2015-07-04 00:22:38
ゆち @yuzuen

【7/5】「これでも、乗り遅れるのはつまんねえなって思ってるんですよ、俺なりに」チームと、チームメイトの成長の流れに。「ふーん?」俺が打ち明けたその人は、そう決意表明したことが意外だと首を傾げる。「ま、頼りにしてるよ」長いことやっていても、こういう言葉が嬉しい、なんて。 #7番祭

2015-07-05 00:09:06
ゆち @yuzuen

【7/6】相変わらずむっずかしい顔してんなー、と顔を合わせて早々に失礼な発言をされる。認めざるを得ないところではあるが、それでも気分がいいものではない。「…アンタは相変わらず能天気な顔してるな」せめてもの反抗には、「お、大人になった」とへらりと笑われる。まだ、勝てない。 #7番祭

2015-07-06 00:01:21
ゆち @yuzuen

【7/7】着信に気付いて確認すると、馴染みの名前が表示されている。「あっ、クボちゃんからメール!」いそいそと本文を読む俺に、ぼんやりと眺めていた監督が「うわー」と声を漏らす。「お前らほんとに仲いいんだな」「はい!」「…あー、うん」ちょっと、呆れられているのかもしれない。 #7番祭

2015-07-07 00:03:30
ゆち @yuzuen

【7/8】定位置がなくなって、このチーム自体に俺の居場所もなくなるんじゃないかと思った。それも仕方ない、なんてことすら思いかけていた。けれど、あの人は俺を必要だと言う。「お前が今まで培ってきたことが無駄になるとか、あるわけねえじゃん」それなら俺も、覚悟を決めるしかない。 #7番祭

2015-07-08 00:18:33
ゆち @yuzuen

【7/9】「…またそんなもん食ってるんですか」見かけるたびにアイスだのスナック菓子だのを食べている監督、って、普通は監督ってそんなにアイスとか食わねえよな、って思ったが、そういえばうちの監督は普通じゃなかった、と思い直す。「うまいよ?お前も食う?」そういう問題じゃねえ。 #7番祭

2015-07-09 00:16:24
ゆち @yuzuen

【7/10】「背番号なんて、ただの数字だよ。…本人以外にとってはね」と彼は言う。「ボクは10番以外考えられないけどね」「だから本人以外、って話」「タッツミーはどうだったんだい?」今は飼い犬がつけているあの数字に対して。「…嫌いじゃなかったよ」そう言って、笑みを浮かべた。 #7番祭

2015-07-10 00:03:02
ゆち @yuzuen

【7/11】「監督、最近俺の扱いがぞんざいすぎじゃないですか!?」「あー?気のせい気のせい」一瞥しただけで棒読みで返してくる監督に更に詰め寄る。「ほら!そういうとこ!その態度こそが!ぞんざい!」「だいじょぶだって、最近じゃなくて最初からだから」「もっと大丈夫じゃない!」 #7番祭

2015-07-11 00:08:41
ゆち @yuzuen

【7/12】フェンスの向こうには、ヒーローがいる。「たつみー!」呼びかけると、めんどくさそうに振り返ってくれる。「お前また来たの」「だって私が見張ってないと、たつみサボるでしょ!」「んなことねーし」むすーっ、と口を尖らせるけど、試合では本当にすごい私のヒーロー、なんだ。 #7番祭

2015-07-12 00:09:15
ゆち @yuzuen

【7/14】あの人は納得したのか、と考えてしまうのは、あの場を収めようとした俺にも原因があったからだ。「俺でいいんですか?」だから思わず訊いてしまった。「お前らが決めたことじゃん。それに、誰が原因なんてねーよ」突き放したようでそうでない、それは達海さんの思いの表れ、だ。 #7番祭

2015-07-14 00:40:24
ゆち @yuzuen

【7/15】「俺、あのときのことまだ根に持ってるんスから!」「何のことー?」言いたいことあるなら言え、というので言ってみた結果、大欠伸と共に返される。「U-22のとき!クラブの車で行かせたじゃないスか!ほら椿も!」「え、俺は何とも…」援護射撃を期待した俺が間違っていた。 #7番祭

2015-07-15 00:05:39
ゆち @yuzuen

【7/16】「もーちょっと気ぃ抜けば?」突然顔を覗き込んでそう言われたものだから、心の準備もできていやしない。「…は?」俺ができた反応といえば、それだけだった。「やりたいことがあんならさ、楽しもうとしなきゃ」「頬引っ張らないでくれますか」俺がここでやりたいこと、それは。 #7番祭

2015-07-16 00:12:52
ゆち @yuzuen

【7/18】空に映える青いユニフォームを身に纏ってピッチを駆けたあの日々を、今でも覚えている。目指す場所は、一番上。俺はいつだってそこを狙っていたし、ずっとそうやって生きてきた。世界と戦うための、青の武装。おつかれさん、とはまだ言わない。だって俺は今でも戦っているから。 #7番祭

2015-07-18 00:02:04
ゆち @yuzuen

【7/20】「お前夏木出たの」どうしたものか、と手にしていると、監督がカードを覗き込んできた。監督の手にも、俺と同じパッケージがある。「監督は誰が出たんスか?」「ウチの選手じゃなかった」少しがっかりしているようだ。「…ナツさんの、あげます?」「それはいらない」即答とか。 #7番祭

2015-07-20 00:09:53
ゆち @yuzuen

【7/24】はじまりは、24という数字だった。空を自由に飛ぶ鳥のようになれたと思った。うまくいってもいかなくても、ただ楽しかった。その後7という数字と付き合うようになって。それは俺にとって多くの意味を持つこととなった。今他の背中にあるその数字たちは、全部特別な、宝物だ。 #7番祭

2015-07-24 17:53:07
ゆち @yuzuen

【7から7へ】「またね」そう言って前を見て、ここを出て行って。それから10年の月日を経て、帰って来た。変わっていないようで変わっていたり、また逆に変わってしまったようで変わっていないところもある。10年とはそういうものだ。けれど、繋いだ魂は、確かにあの背中に宿っている。 #7番祭

2015-07-31 20:03:45