食べ物ツイノベまとめ

ただいま、おかえり、いただきますの主人公や、極彩色の食卓の主人公など自作主人公達にご飯を食べさせてあげるツイノベ+食べ物描写ツイノベまとめ
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みお @miobott

#twnovel パン屋へ行くのは休日朝一番。と、民子は決めている。店に入った瞬間、鼻に届く焼けた小麦とバターの香り。まず向かうのは焼き立てコーナー。いくつかをトレーに載せて下から触ればプラスチック越しにじんわり広がる熱っぽさ。「贅沢贅沢」民子はにんまりと嬉しくなってしまうのだ。

2015-09-23 19:06:54
みお @miobott

#twnovel 病弱な僕の栄養になるために彼女は造られた。白い皮膚はマシュマロ、黒い髪はチョコレート、赤い目玉はイチゴのキャンディ。君を傷付けたくないと言って泣く僕に、君は甘く香るその身をさらけ出す。「さあ早く召し上がれ」蕩けるように恍惚と囁くその声で僕は今宵もフォークを握る。

2015-09-22 00:35:51
みお @miobott

#twnovel 特別暑い昼間の台所。汗を浮かべて民子は真剣にフライパンを見つめる。フライパンに転がるのは旬のオクラ。きゅうきゅう泣き始めると焦げ色のついたオクラがふしゅと美味しい煙を吐く。端を持って齧り付けば口に夏の青さが広がった。 pic.twitter.com/hDahflizop

2015-07-25 23:34:23
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みお @miobott

#twnovel 京都土産だと友人の静香が持って来たのは宝石のような小さな砂糖菓子だった。ざらりとした表面には桜の模様。そっと口に入れて民子は目を見開いた。くしゅっと崩れた砂糖菓子の向こうからとろりと押し寄せたのは桜香る甘いリキュール。春に酔ったようだと民子は火照る頬を押さえた。

2015-03-22 22:26:49
みお @miobott

#twnovel まるで新雪のような純たる白に、蜜がどろりと垂れる、落ちる、広がる、溶けた先から甘い香りが広がっていく。巨大な雪の山は、あっという間に蕩けた。口に入れると、しゃくりしゃくりと音を立て、喉に落ちたそれは冬の味がした。 pic.twitter.com/r7lPouxwHa

2015-08-13 22:48:00
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みお @miobott

#twnovel ふわりと香る湯気の向こう側、しんなりと横たわる白い肢体は蕎麦の色。その上に乗るのは引き締まった身体の煮込まれニシン。長く煮込まれ頑なとなった身体に、出汁の香りが染みこんだ。懐かしいそれは、遠い昔泳いだ海の記憶である。 pic.twitter.com/61Kg2piLnk

2015-08-13 23:05:59
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みお @miobott

#twnovel 腹を空かした貴婦人の前に現れたのは、ケーキにスコーン、お口直しのサンドイッチ。どろりと濃厚、目の覚めるようなミルクティ。喉を鳴らして手を伸ばせば「召し上がるのですね、私達を、また」いつか無残に殺した農夫達の声がする。 pic.twitter.com/SAWy81b434

2015-08-30 22:09:41
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みお @miobott

#twnovel 紫に近い桃色をくるむのは緑の葉。きっと律子好みだろうと、買ってきたのは道明寺の桜餅。当然、彼女は歓喜の声を上げた。粒の食感の残る餅に塩香る桜葉。噛みしめれば春の色が見える。まだ桜も咲いていないのにと呆れる燕の前で、律子は「旬の走りっていうのよ」と自慢げに笑った。

2015-03-22 21:18:28
みお @miobott

#twnovel 柔肌の筍を茹でるように薄味で煮る。共に煮るのは旬の春若布。合わせると山の白に海の緑が際立った。このような料理を”春の出会い”というのだと、燕は最近知った。「綺麗ね」うっとり見つめて箸も付けない律子だが燕は急かさない。今日は少しばかり見とれる猶予を許すことにした。

2015-03-22 21:16:14
みお @miobott

#twnovel 「ピンクに緑に白に春の色!」跳ねるような律子の声に燕は苦笑する。喜ぶだろうとは思っていた。ひな祭りの食べ物は、どれも律子好みの春の色だ。「あら。女の子なら誰でも喜ぶわ」「女の子ですか」「あら、悔しいの?男の子」春言祝ぐ食べ物に囲まれて律子は挑むように笑っている。

2015-03-03 21:09:54
みお @miobott

#汁粉 蕩けるように盛り上がった黒の稜線である。真っ赤な器にたっぷり注がれた黒の誘惑。ねっとりと甘く黒い滑らかなそれをかき分けると、ぷくりと膨らんだ白い餅が姿を見せた。

2015-01-03 16:24:44
みお @miobott

#雑煮 とろりと溶けた白味噌が冷えた空気を甘く染める。白の奥に潜むのは濃い赤人参、白肌大根、小麦色に焼いた餡の餅。箸で突けば餅が崩れて黒の餡が白に滲む。味噌に蕩けた餡の熱さが正月に弛んだ人の口を焼くのだ。滑らかな白の甘さと濃厚な黒の甘さが絡み合うのだ。それは明けの官能である。

2015-01-01 13:00:22
みお @miobott

#雑煮 つんと澄ました気障な汁だ。皿が透けて見えるほど透明な汁の中、静かに沈む真っ赤な人参。こちらを見上げるのは白い餅。汁を飲み込むと口の中に海の香りが広がった。なるほど澄ましの出汁は鰹味。赤の珊瑚に囲まれて底に沈む餅は白い一匹の魚。さてどう釣り上げてやろうかと箸を鳴らした。

2015-01-02 14:59:44
みお @miobott

#春野菜 瑞々しいスナップエンドウの頭に包丁を当て、慎重に力を込める。柔らかい抵抗の後、筋が軽やかに剥けていく。鮮やかな緑の身が裂けたその瞬間、手の中から青い土の香りが漂った。それは春を待ちきれず散った悲しみの香りである。「…あ、春の香り」民子は慈しむように、それを湯に散らした。

2015-02-01 22:54:43
みお @miobott

#twnovel 目の前で熱々の湯気を立てるのは湯がきたて新じゃがいも。塩とバターを落しただけの艷姿で湯気はいかにも熱そうだ。「熱いものは熱いうちに」覚悟を決めた民子は小ぶりな一つ掴むなり、えいっと口の中に放り込む。途端に弾ける瑞々しい芋の香り。それは雪解けた土の香りに似ている。

2015-02-02 22:28:29
みお @miobott

#春野菜 柔らかい菜の花を熱湯に落とせば水が青く染まり、同時に空気に苦味が走る。春野菜は冬を超える事で身に毒を溜めるのだろう。色彩の美しさに反して空気まで苦味に変えていく。辛子の黄色を落したそれを渋々食べる燕を見て「まだまだ子供ね」と、律子が勝ち誇ったような笑みで箸を伸ばした。

2015-02-01 23:08:46
みお @miobott

#twnovel 新じゃがいもの薄い皮を洗うと不思議と緑がかって見えた。瑞々しい皮のままたっぷりのバターで炒めると香ばしい焦げ色に変化する。「熱々!」火傷しそうなそれを夢中に食べる律子の髪には薄い花弁が一枚。「梅が咲いたんですね」淡桃色の梅花に土の香りの食卓。燕は確かに春をみた。

2015-02-02 23:32:56
みお @miobott

#twnovel 「海の底みたいな深い青の海苔、黄色の干瓢、ルビー色のマグロに差し色緑の胡瓜、桜色のデンブ」律子がうっとりと手巻き寿司を掲げて見つめる。「手巻寿司にそこまで喜んでいただけてよかったです。でも黙って食べないと願いは叶いませんよ」燕は呆れ顔で甘いそれを噛み締めた。

2015-02-03 23:17:17
みお @miobott

#twnovel 今年は少し張り込んだ。せっかくまるごと食べるのなら一番高い魚介手巻き寿司。海苔とお米の間から鼻に届く、海の幸と香ばしいお醤油、青臭いわさびの香り。一口頬張ると、甘い卵の味がじゅわっと染みだした。「あ。美味し」思わず漏れた一言に民子は口を抑えて照れたように俯いた。

2015-02-03 23:44:25
みお @miobott

#twnovel 律子が燕に差し出したのは小さなフキノトウ。うんざりと燕はため息をついた。「また春野菜ですか」「私は好きだもの」渋々片栗粉をまぶし熱い油にさっと通す。と、閉じこもっていた蕾が、途端息を吹き返したようにぱっと開いた。「…春の色だ」それは確かに早春の、淡い緑である。

2015-02-08 20:30:23
みお @miobott

#twnovel パン粉は淡雪のように細かく上品、そっとまぶしてからりと揚げれば黄金色。油を吸い吸い妖しく身を蕩けさせ紫茄子。さくりと歯ごたえ山芋に、どこから食べるか迷う楽しみアスパラガス、油を閉じ込めた脂身の誘惑。さあ熱いうちにソースを付けて召し上がれカウンター越しに男が笑う。

2015-02-06 22:46:35
みお @miobott

#twnovel まず口に広がるのは牛皮の柔らかさ。その下から現れるのは滑らかな餡の舌触り、やがて苺の酸味が蕩け出す。水分を含んだ苺は餡を溶かし皮と蕩かし、ゆっくりと春の甘さとなって喉を潤す。「おいしいなあ」散歩休憩、公園のベンチ。苺大福を丁寧に噛みしめ民子は幸せなため息をつく。

2015-02-08 22:31:16
みお @miobott

#twnovel まだ柔らかく小ぶりなフキノトウに包丁を入れると途端、匂いがたつ。それは雨に濡れた土の匂いだ。草木と土と雨の匂いだ。苦みと甘みの匂いだ。民子は労るようにそれをそっと揚げた。「かわいい」薄衣に揚がった緑色の塊に塩を振りゆっくり噛みしめる。途端、春の香りが吹き抜けた。

2015-02-08 20:31:23
みお @miobott

#twnovel 律子は苺に目がない。しかしただの苺というだけでは飽きてしまう。そんな我が儘を想定し、燕が手に入れたのは苺大福。案の定、それを見て彼女は歓声を上げた。「白の牛皮に赤色が透けてとても綺麗」「乾く前に食べてください」燕の声も聞かず、彼女は目の前の小さな春に夢中である。

2015-02-08 22:33:14
みお @miobott

#twnovel 揚げ物は熱いうちに食べるのが礼儀だ、民子はそう思っている。だからこそ湯気を立てるカキフライに躊躇することなくかぶりつく。さくりと音を立てて割れた衣から柔らかい身が顔を出し、熱いそれを噛みしめれば潮の香りが口一杯に溢れた。それは冬への名残を身に残す、海の味である。

2015-02-15 23:12:57