◇黄昏町と私◇その２

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

首を傾げる彼女に、私は黙って肩を竦めた。異形はどうやら持てる数に限界があるらしい。今回はこの脚を得る代わりに、火玉が失われたということか。まあ、それならそれでしょうがない。失ったものを惜しむより、得たものを喜ぶとしよう。「さて、行きますか」9 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

（行くって、どこに？）「ここじゃないどこかですよ。ここで座っても帰れないじゃないですか」（……あんた、どこに帰りたいの）「歩いていれば思い出しますよ」「……なあ君、いったい誰と話しているんだい？」反対側から聞こえた声に、私はまたも振り返った。10 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

そこで私は目を見張る。「あなたは」「あれ。君、前にも会った？」そこにいたのは帽子を被った少年だ。私は彼に見覚えがある。私に一番初めに異形をくれた、あの獣耳の少年。……少年？いや、もはや痩身の男というべきか。「まあいい。旨いものは何度でも食べたいもんさ」11 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

……そこからは戦いだ。柔らかすぎるこの体では相手に致命傷は与えらえなかった。ので、私はこうして食べられかけている。が、「ゴボッ、ゴボッ！？」この男もそう長くはない。私がぴったりと鼻と口を押さえつけているからだ。戦い方を知れただけでも運がいいとしよう。12 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

十八日目終了！ 怪物に殺され死亡。魂−１。 異形：獣耳・獣脚・牙・角・半透明 【魂8/力2/探索6】 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

[ハンドアウト]気が付くと、君は路地裏の隅で小さくなっている。何から隠れたのかの記憶はないが、辺りにはもう何の気配もない。《開始地点[町]shindanmaker.com/541547》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541552

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

[町]目の前のブロック塀が崩れた。現れたのは毛むくじゃらの怪物だ。でかい。《力2以上で勝利【魂+1】、力1以下で死亡【魂-1/異形『毛皮(水耐性、探索+1)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547

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◇黄昏町と私：十九日目◇ #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

（大丈夫？）明里ちゃんの声に、私は顔を上げた。そこはどこかの路地裏で、私はその壁に体を押し付け縮こまるようにして座っている。なぜこんなところにいるのだろう？何からか隠れていたのか？……今のところ、辺りにはもう何の気配もない。たぶん私は運がいい。13 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

改めて明里ちゃんを見上げる。私以上に半透明で、夕日で照らされた背景が透けて見える。下に行けば行くほど透明度が上がっていき、足元はもはや見えない。まるで幽霊だ。私はおかしくなった。（なに笑ってるのよ）「アハ。いえ、なんでもないです」私は立ち上がる。14 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

こうして立ってみると、なるほど獣の脚というのは便利だ。少なくとも全身軟体のときより余程歩きやすい。とはいえ、妙な感覚だ。なんというか、下半身だけタイツか何かを着込んでいるような……ふと、私の耳が物音を捉えた。後方の壁からだ。私は迷わず垂直に跳んだ。15 #4215tk

栗なご @kurinago77

獣耳による察知能力…優秀だ。　#4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「おお」予想以上の高さまで飛び、私は思わず声を上げる。遥か下で破砕音。見下ろすと、毛むくじゃらの怪物が壁を壊して出てきたところだった。でかい。が、私が今いるのはそれより遥かに高い位置だ。私は笑い、重力に従って落下した。怪物がこちらを見上げる。16 #4215tk

栗なご @kurinago77

獣足脚力の有効活用！　#4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怪物が毛の奥から小さい目をしょぼしょぼとさせる。私を捉えられないのか。半透明の体が初めて役に立った瞬間だ。私はにっこりと笑い、怪物の脳天に蹴りを叩き込んだ。血が噴き出す。怪物が白眼を向き、仰向けに倒れる。反動でさらに飛んだ私は、怪物の顔らしき場所に着地。17 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怪物が弱々しく唸る。まだ息があるらしい。丈夫だ。私は笑った。脚を上げ、顔面に叩きつける。上から下へ。上から下へ。上下。上下。上下。上下。足元から伝わる感覚がだんだんと砕け、柔らかくなっていく。私は小躍りした。実際、この脚はダンスをするにはもってこいだ。18 #4215tk

ジュセー @shiroboshi2

上から……下へ……そうだ、それでいい。上から、下。上から、下……。 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

（ちょ、ちょっと）明里ちゃんの声。私は踊りをやめて振り返る。「なんです？」（なんです、じゃないでしょ！？そいつ、もう死んでるじゃない！）「ああ」私はだいぶ柔らかくなった怪物の顔を見下ろした。もうそれは息をしていない。ただの物に成り果てている。19 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そうみたいですね。なんだ、見掛け倒しでした」私は肩を竦める。こいつに殺されたところで、良い異形は得られそうにない。私は怪物から飛び降り、夕日の差し込む方向へと歩き始めた。私は踊るように明里ちゃんへ振り返る。「じゃあ他に行きましょう。ここじゃないどこかへ」20 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

十九日目終了！ 勝利。魂＋１。 異形：獣耳・獣脚・牙・角・半透明 【魂9/力2/探索6】 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

◇緊急速報◇ #4215tk

雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

[町]高台からは町が一望できる。《町にいる他のプレイヤーと出会える。勝敗は相談、勝者は【魂+1】敗者は死亡【魂-1/勝者の異形(竜尾、鬼腕、巨躯、髑髏、強化異形以外)を1つ得る/勝者の異形は減らない】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

◇黄昏町と私：幕間劇その２◇ #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

私はいささか退屈していた。代わり映えのしない夕焼け空に、他の生き物の気配すらない町。「いくら明里ちゃんがいるからって、これではちょっとねえ」（うーん……町の人間はたぶん、滅多なことでは外に出ないだろうから）隣に浮かぶ明里ちゃんが答えてくれる。1 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

なるほど、まあよく考えれば当然の話ではある。私だってもしここの住人だったら無闇に外に出ようとは思わないだろう。生き返るとも思えないし。……しかしそう考えると、この町がどのような経緯で怪物が蔓延る状況に陥ったのか。謎である。まあ、どうでもいいか。2 #4215tk