女護が島審神者の話

適当に思い付いた物を身内向けにまとめました。夢小説要素凄いので苦手な方は絶対見ないで下さい(お願い) ※ツボにはまった人には「腹筋に候」案件のようですので移動中の閲覧はご注意下さい。 2016.1.22 たぬさに的なエピソード追加。
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ゆすら @yusula

@tos 「元気ですよ!ただ、ここ何日か寒いから」 「あー。明日から40年ぶりのきっつい寒波らしいな」 「え?」 「この辺り、北方の異国並みに冷えるんだと」 「そう、ですか」 同田貫はその声に差し迫った物を感じて押しかけ女房の顔を見た。 「おい、真っ青じゃねえか」

2016-01-22 15:01:47
ゆすら @yusula

@tos 見て分かるほどさぼちゃんの顔色は悪かった。 やがてポロポロと涙をこぼし始めた。 「おい、どうした」 「せっかく、まつさんのお陰で正国さんのお嫁になれたのに…皆さんとも仲良くなれたのに……」 まるで別れが決まったような言葉だった。 「なあ、どうしたんだ。言ってみろ」

2016-01-22 15:03:20
ゆすら @yusula

@tos 同田貫の言葉にさぼちゃんは顔を上げた。 「その。あんたの亭主なんだろう、俺」 嫁にとは言われたもののあまり世間知らずっぷりに本当に嫁にしたとは言い難い段階だった。 むしろ姉妹の守り役だった頃を思い出していたくらいだった。

2016-01-22 15:05:07
ゆすら @yusula

@tos しかし切なげに自分を見るさぼちゃんの顔に胸がしめつけられる思いがした。 「私……」 視線に促されるようにさぼちゃんが顔を上げた。 「私、人間じゃないんです」 部屋に沈黙が訪れた。

2016-01-22 15:06:07
ゆすら @yusula

@tos 一方その頃、海岸ではまさきがひろった棒を片手に地面をほじくり返していた。 「たぶん、この辺」 「貸してみろ」 大倶利伽羅がまさきに変わって地面を掘った。 「あった!」 大きな瓶が地面の中から現れた。土を拭うと大倶利伽羅が蓋を開ける。

2016-01-22 15:08:35
ゆすら @yusula

@tos 「なんだそれは」 「私達が子供の頃埋めたタイムカプセル」 取り出された紙は経年で変色していたが破れてはいなかった。 子供離れした達筆な習字があったり、折り紙で折った鶴もあった。 「これ!」 その紙にはクレヨンで「ゆさ ほのか」と記されていた。 「これは」

2016-01-22 15:09:54
ゆすら @yusula

@tos 「まつがたぬたぬに教わって書いたひらがな」 まさきはこの紙を埋めた経緯を思い出した。 『ねーねーたぬたぬ、「ゆ」ってどう書くの?』 『こうだ』 『じゃあ「さ」は?』 まつが苦手なひらがなを書き終えると同田貫が笑った。 『人の名前みてーだな』 『ほんとだー』

2016-01-22 15:11:39
ゆすら @yusula

@tos 『たぬたぬ、漢字で書いてー、人の名前』 『俺がかよ』 ぼやきながら同田貫は「遊佐歩乃歌」と書いた。 『こんなもんか』 『私も描いたー』 そらが横から紙を差し出す。おかっぱの女の子の絵が描かれていた。 『誰だよ』 『ほのかちゃん』 『そりゃいいや』 同田貫が笑った。

2016-01-22 15:13:31
ゆすら @yusula

@tos 『ここにサボテン植えてみようかな』 十を幾つか越えた頃、まさきが海岸の空き地で言った。 『観光名所にならないかな』 『あはは、それいいかも』 『いいわね』 『お気に入りの場所だしね』 見晴らしのいいこの場所は幼い頃よく同田貫に連れて来てもらった場所でもあった。

2016-01-22 15:15:43
ゆすら @yusula

@tos 『でもシンボルツリーがサボテンてwww』 『でも、花はカワイイよね』 まつが笑った。 『いっそ、植樹の時に思い出グッズ埋める?』 『そうね。子供の時、ここに来て書いた物取ってあるわよ。それは?』 『さすが姉様~』 はしゃぎながら、思い出の物を埋めた。そして。忘れた。

2016-01-22 15:17:52
ゆすら @yusula

@tos 『ずいぶんとでっかくなったな』 気候があったのか、まさきのサボテンはどんどん育った。 年頃になった姉妹の世話をする事なくなった後、同田貫はよく一人でここに訪れた。 人の身体で見る海の景色が好きだった。 そして一人で立つサボテンにも親近感を持った。 『立派に育てよ』

2016-01-22 15:19:40
ゆすら @yusula

@tos 時折そんな風に話しかけたりもした。 「私に、声があったらって、ずっと思ってました」 さぼちゃんはぐすぐすと泣きながら言った。 「つまりなんだ。まつ達の紙切れが根元にあったから、そんな風になったって事か?」 さぼちゃんはうなずいた。

2016-01-22 15:21:20
ゆすら @yusula

@tos 「それとあの日、まつさんが私に触ってくれたから」 しかも、同田貫がいた。 人の姿で話したい。その一心で審神者の能力があるまつの力を借りて人の姿になったのだという。 「私、サボテンなんです」 さぼちゃんはひざに置いた手をぎゅっと握り止めた。

2016-01-22 15:23:02
ゆすら @yusula

@tos 「何が問題なんだよ?」 意味がわからないというように同田貫が言った。 「俺だって人じゃねーし。あんたがサボテンだろうがなんだろうが、問題はねえと思うんだが」 「本当に……?」 「ああ」 同田貫が頷いた。 「サボテンが嫁でも全然構わないぜ」

2016-01-22 15:24:34
ゆすら @yusula

@tos 「うれしい……」 さぼちゃんがつぶやいた。 「これでもう、思い残す事はありません……」 「何言ってんだ?」 「私、たぶん消えちゃいます」 「は?」 「人の姿になるのにすごく一杯力使って、すごく疲れてて。もう、寒さに堪えられないと思います」

2016-01-22 15:26:43
ゆすら @yusula

@tos 同田貫は海岸で吹き晒されているサボテンを思い出した。 「待ってろ。風よけして来る」 その言葉にさぼちゃんは首を振った。 「無理です。私、大きくなりすぎたから」 「だからって……」 「最後にサボテンでいいって言って貰えて、幸せでした」 さぼちゃんが同田貫の手を取った。

2016-01-22 15:28:13
ゆすら @yusula

@tos 「消えても悔いはありません」 「あんたが良くても俺が良くないって言ってんだよ!」 同田貫が立ち上がり、部屋を飛びだそうとした時だった。 同時に扉が開いてまさきと大倶利伽羅が現れた。 「話は聞かせてもらった」 大倶利伽羅の言葉にさぼちゃんが真っ赤になった。 「これ」

2016-01-22 15:29:43
ゆすら @yusula

@tos まさきが小さな鉢植えを差し出した。 「さぼちゃんの子株。こっちに移したから」 渡された鉢を同田貫がそろそろと受け取る。 「これをあったかい部屋に置いておけば大丈夫って母上が」 「戻るぞ」 「待って」 大倶利伽羅に促され、まさき達は来た時同様唐突に去った。

2016-01-22 15:31:46
ゆすら @yusula

@tos 「あ、あの」 どうしよう、とさぼちゃんが真っ赤になった。 「最後だと思ったからぶっちゃけたのに……」 恥ずかしいよう、と顔に手を当てるさぼちゃんの手を同田貫が外した。 「恥ずかしがるこたねーよ」 「でも」 うつむくさぼちゃんの耳元で同田貫が囁いた。

2016-01-22 16:41:02
ゆすら @yusula

@tos 「これから俺も恥ずかしい事言うぜ」 「え?」 ようやく顔をあげたさぼちゃんと同田貫の目が合った。 「俺のかみさんになってくれ」 言い終えると同田貫も顔を反らした。その顔はさぼちゃんに負けないくらい真っ赤だ。 「くそ。マジで恥ずかしいなこれ」 「正国さん」

2016-01-22 16:42:44
ゆすら @yusula

@tos 涙混じりの声だった。 「本当にいいんですか、私で」 「ああ」 「サボテンですよ」 「いいって言っただろ」 「でも、無理矢理押しかけちゃったし」 「俺が、あんたが良いって言ってんだよ」 さぼちゃんの手を握る同田貫の手に力が入った。 「あんたじゃなきゃダメなんだ」

2016-01-22 16:44:38
ゆすら @yusula

@tos さぼちゃんの顔はもはや号泣の域だ。 「返事は」 「喜んで」 初めて島の主に問われて元気いっぱいに答えたのと同じ言葉をさぼちゃんは答えた。 「大事にする」 抱きしめながら言う正国の腕の中でさぼちゃんは泣きながら頷いた。 まさきが作った鉢植えがそれをそっと見守っていた。

2016-01-22 16:48:08
ゆすら @yusula

@tos 「結局原因はちい姉様だったって事?」 そらの問いにまさきがうなずく。 「まあ、顔とかがああなったのはそらの絵が原因みたいだけど」 「良かった……そらの絵そのままじゃなくて」 「ちい姉様に言われたくないですー」 「まあまあ、いいじゃない」 さえが笑った。

2016-01-22 16:49:37
ゆすら @yusula

@tos 「娘が増えたね」 久し振りに人型になった石切丸が妻に審神者に言った。 「そのようです」 審神者は満足そうに笑って答えた。 「幸せそうで何よりだ」 二人が舘から見下ろす先で同田貫とさぼちゃんが散歩している。

2016-01-22 16:53:32
ゆすら @yusula

@tos 「寒くねえか。もう一枚何か着とくか」 「大丈夫ですよ、今はお家の中にいますから」 まさきの作ったさぼちゃんの子株は元気にスクスク育っている。 心配症の同田貫の姿は今や島の新しい名物だ。 サボテンと刀の恋のお話は昔話の決まり文句と共に締めくくられる。 めでたしめでたし。

2016-01-22 16:56:15
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