『害虫』

怪奇の種の小泉より、22話目の『害中』で御座います。
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小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

佐藤さん宅の屋根上にはナニかがいる。 いつ頃からか黒い人影みたいなのがひょっこりと現れるようになったそうだ。 初めは不審者が屋根に登っているのかと思い、佐藤さんはその者に怒鳴りつけた。 「コラー、人の家の屋根上で何やってんだ!」

2015-08-05 22:10:37
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

すると、屋根の影に隠れていた人影がこちら側へと出てきたのでハッキリと姿を見てしまったのだ。 頭部は人間っぽいのだが胴は不自然なほど小さいさく、それに反比例するように手足が異様に細長い真っ黒な影が現れて佐藤さんをジッと見つめてきた。

2015-08-05 22:11:10
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

あまりの恐怖に慌てて家に入ると奥さんに、 「屋根上に何か得体のしれないのがいるぞ!」 と言い、外に連れ出して一緒に確認しに行ったのだがそこには何も居なかった。 「アナタ、ちょっと疲れてるんじゃないの?」

2015-08-05 22:12:31
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

そう奥さんに言われムッとしたので、確かにハッキリと見たんだと抗議をするもハイハイとまるで相手されなかった。 結局、肝心の人影が居なかったので佐藤さんも最終的には折れ、その時は佐藤さんの勘違いだという事となる。

2015-08-05 22:13:21
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

その日の夜中に屋根上で瓦がカタカタと音を立てたり、屋根が軋むギシギシという音が一晩中聞こえ一睡も出来なかった。 それから毎晩と音がするので流石の奥さんも気味悪がり、とうとう二階の寝室を使わないようになり佐藤さん夫婦は一階のリビングで就寝するようになってしまった。

2015-08-05 22:13:57
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

ところが、ある日を境にこの現象がピタリと止んだのだ。 暖かくなってきて害虫が増え始めたのでバルサンを炊いたところ、屋根上に黒い影が現れてどこかに逃げて行った。 試しに二階の寝室で寝てみると、屋根上からの音はいっさい聞こえず静かな夜を過ごす事ができた。

2015-08-05 22:15:01
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

しばらくするとまたあの音が聞こえ始めたのでまたバルサンを炊いてみた所、音がしなくなったので以降この現象が起きると佐藤さんの家ではバルサンを炊いて撃退するのだとか。

2015-08-05 22:16:32
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

「見た目もなんだか虫っぽいヤツだったでしょ、だからバルサンとか殺虫剤に弱いんじゃないですかね。」 そう佐藤さんは結論づけ話を終えた。

2015-08-05 22:17:00