どうか、思い出して。思い出さないで。 何も言わなくていい。知らなくていい。 せめて、無垢のままで。けれど、汚れてほしい。 墜ちる音。誤魔化した声音。 笑ってくれたらそれでよかったから。 雲ひとつない晴れた夜空に、アイノコトバを降らせよう。 #熱帯夜を泳げば また会えますか。
2015-08-02 00:19:10ぼとり。溶けた氷菓。 こぼれて、ほどけてしまえば、ひとたまりもなく。 唇を拭う指先に恋した。 たったそれだけのことだった、と。反芻。 嗚呼、いつになったらとけるのかしら。 #熱帯夜を泳げば まやかしだって、言ってほしくなった。言ってほしく、なかった。
2015-08-03 22:59:28うすく灰を混ぜた卵色は穏やかに、揺らぎのさざ波をものみこんで許さない。継ぎのない鎧からひと片毀れおちた色彩は、深緑の艶と鮮やかさをもって日常を冠していた。彩度を落とさないまま匂い立つ悦楽に委ねてしまえば戻って来られない。 #熱帯夜を泳げば 夜のかなたへ行けるのでしょうか。
2015-08-04 05:28:59容易いことだと言い放つ、その唇を縫い付けたかった。 聞こえる喧騒は有象無象の彼方、触れられるなんて刹那の幻。切り離されては、落涙。 染まれない哀しみは瑠璃色に没し、拙い産声で嘆く。 足掻く姿の無様さを知りながら、それでも、 #熱帯夜を泳げば 嗚呼、燃え尽きてくれますか。衝動。
2015-08-05 23:42:45まだ見ぬあなたを、想う。わたしの穴を埋めてくれるひと。 崩れて、欠けて、でこぼこでとげとげで、誰かを傷付ける指先が裂けて。眠れないまま朝を待つ。 誰よりも苦しむのは、まだ出会っていないあなただと、知っているから。 #熱帯夜を泳げば 夢の果てに辿り着くと、信じている。
2015-08-15 20:38:10光を求めていたのだという。それを愚かと笑った、彼の手からは綺羅綺羅がこぼれおちていた。 ノンフィクションに撃ったピリオド代わりの弾丸が破裂して、あの日の夢を貫いた。言葉と音で紡いだ物語。虚構だと言う。言うしかなかった。 #熱帯夜を泳げば 剥がれてしまう嘘を、また吐くの。
2015-08-20 22:43:22べっとりと絡みつく闇の底で仰向けに吐息する。手探りに団扇を引き寄せると夫の肘に触れる。疲れ果てており乍ら互いに寝付けないのは、暖簾一枚向うの寝息が浅い為だ。床に就いてからのほんの一言の呟きが許されぬ圧迫。#熱帯夜を泳げば 朝はすぐそこで待ち構えている。今暫し息を潜め、目を瞑る。
2015-08-20 23:10:35企画: #熱帯夜を泳げば 概要:企画名がお題の創作企画。 日程:08/22〜24 対象:制限なし。文章、絵、写真、エトセトラ。 参加方法:企画名タグを付けてpost 備考:終了後トゥギャ。日替わり追加お題予定。 #創企
2015-08-20 23:14:36するり、と通り過ぎて行くのは いつかの熱量 好きと言えば好きになる 嫌いと言えば嫌いになれる 他人事のようにくすりと笑う 背中に首筋に、こんなに汗をかいて 白いタオルに剥がれた鱗 #熱帯夜を泳げば 深い深い暗い青にこの身を染めて 何処までもふたり 視力のない魚のまま
2015-08-20 23:38:47息継ぎの痛みに耐えられず、僕等、苦痛めいた笑みを浮かべる。 藻掻けば沈んでいくだけと知りながら、抗うことを止められない弱さを呪った。 祈りの形に組んだ、その手をほどいて。 #熱帯夜を泳げば 、溺れてしまえるかしら。 死んでしまえるのかしら。
2015-08-21 23:12:42真っ暗な部屋。君はシーツの海に沈んでいた。 求めていたのはなんだったろう。誰かの声が乱反射する。ただ、分かち合うには過ぎた熱量に、眩暈。やり場のない衝動が呻く。 酸素の足らないまま、白く弾けた瞼裏に浮かんだのは誰だったか。 教えて欲しかったよ。 #熱帯夜を泳げば 08/22:秘密
2015-08-21 23:33:00不快な熱さを藻掻くように切り裂けば 少しはまともになれるだろうか この夜の温度も この体の熱量も 冷まして少しは、夢を見れるだろうか こうして #熱帯夜を泳げば 纏わりつくような湿度が 水に、
2015-08-22 00:00:44牛蛙の鳴声には慣れる事がない。風は止まり、家全体が熱い膜に覆われている。 豆球は点けた儘よ。布団を被ってはだめ。襖は閉めないのよ。すぐ寝なさい。 お決りの言葉を浴びて横たわる。#熱帯夜を泳げば 湿った枕に闇の奥からの不思議な音が牛蛙の声と混ざって響く。幾度反転しても逃げられない。
2015-08-22 00:08:45明かりを消した部屋、黒い瞳。シーツの白だけが浮かび上がる。 息をひそめて静寂を聞く。つないだ手のひらは不安だけを伝えている。 言葉なんて足りなすぎるといつだって君は言うけれど、中身だけの感情は時にあまりにも無力だ。 せめて #熱帯夜を泳げば 【秘密】の殻も溶けたのだろうか。
2015-08-22 00:12:39ノースリーブのおかげで肩から指先までが見える。華奢な身体は酷く頼りなさげだ。それでも君に縋り付いてしまいたくなった事は秘密。 「今日から熱帯夜が続くらしいよ。」 冷房の設定温度を下げる。何も伝えられないまま、その体温に縋る口実を作った。 #熱帯夜を泳げば どこに辿り着くのだろう。
2015-08-22 00:17:11肌寒いぐらいのクーラーの部屋。ふたりシーツにくるまって、いた。 眠れないのは誰のせい? 知らないふりが得意だから。iPhoneの点滅も気づかないの? 気づかないくらいに夢中なの? 墓場まで持っていけるだろうか。 #熱帯夜を泳げば 溺れて死にたい、ねえ、秘密の海に。 (秘密)
2015-08-22 00:20:45うだる暑さに目を覚ます。メッセージを知らせる点滅が暗闇の中で光っていた。吸い寄せられるように手を伸ばせば、他愛もない就寝の合図。 そう言えば昼間に会いました。気を利かせて送ったのだろう他愛のない挨拶。 これで明日も生きられる。 #熱帯夜を泳げば 君が微笑めば苦しくないよ 秘密
2015-08-22 00:37:51思わせ振りな一言が引っ掛かって眠れない。聞き咎めて問うと、母はそんな事は言わないと気色ばんだ。きょうだいたちの寝息を海の底に息づく魚の呟きと聞き乍ら #熱帯夜を泳げば 見そびれた夢のかけらがきらきらと闇に舞う。さっきのあの言葉、もし本当に聞いたのならその辺に落ちてやしないかしら。
2015-08-22 00:53:50変わり映えのないことだけれど、今夜もあなたを思ってしまっていて。冷気が押し寄せるのは孤独を誘発するためだろうか。蝉の音は止んだ。粛々と。夏は歩いている。あなたに振り回されない秋でいたい。姿勢を正して、深い口紅が似合うような。たとえ、表向きだけでも。 #熱帯夜を泳げば
2015-08-22 01:02:52握りしめていた当たり前をなくしたことを知っていた。生きる糧と据えたのは、懺悔の先に縋ったイデア。EとAが欠落すれば残ってしまう欲望に目を瞑るふりをして、悟られてないふりをして。崖の端は近づいていると知って何ができるだろう。 #熱帯夜を泳げば また、【秘密】を融かしてしまえたのに。
2015-08-22 01:03:09夏の大三角が窓を覗く夜。ベッドに二人並んで寝ているけれど触れ合うことはない。それは暑いからとかではなくて、幸せが壊れてしまうのが怖いからという随分と身勝手な理由からだった。 #熱帯夜を泳げば 触れ合えるのかもしれないなんてくだらないことを思いながら、私は彼の方へと寝返りを打った。
2015-08-22 09:20:17夜目の効かない僕は、花の色を知らなかった。幾度も咲き乱れて、それでもなお、輪郭をなぞることしか出来なかった。 陽光の下で迎えるいつかは久遠に没し、きっと、これからも知ることはないのだろう。 #熱帯夜を泳げば 辿り着けるだなんて、嗚呼、なんて残酷なまやかしだろう。
2015-08-22 10:52:55甘い香りが漂うタオルケットに包まれ、幾度目かの寝返りを打った。部屋を満たす静寂と、時折聴こえる微かな寝息。 慣れないベッドのうえで、胎児のように丸まって緩慢な瞬きを繰り返す。 #熱帯夜を泳げば そこには何が待っているのだろうか。秘めた心が溢れ出さないよう、私は静かに目を閉じた。
2015-08-22 11:34:07#熱帯夜を泳げば 熱帯魚、というわけではない。 夜は冷たい秘密の時間。 私はビジネスホテルの部屋の天井を代わるがわる照らす隣接する高架道路を走る車のライトを見ていた。 「どうしたの?」 「別に」 茶髪の男が私の身体を弄り其処彼処に唇を当てがう。 熱帯夜に溺れる、二匹の深海魚。
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