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とある二人のやり取り

浜面ァと絹旗のやり取りです。
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@tabikake

「彼女を置いて行くんですか」 彼女の親友である少女は、断罪するように言葉を放ってきた。 痛いほど胸に突き刺さる。 「そこまでして。意味はあるんですか」 意味ならある。否、意味だけが溢れている。 じゃなきゃ離れたいとは思わない。離別しようなどと思えやしない。

2011-01-08 00:56:50
@tabikake

「置いていかれる人の。その人の気持ちを超理解できてるんですか」 気持ちは解る。 かつての自分がそうだったよう、に。これからもそうだろう自分には。 「答えたらどうですかっ!」 赤いイメージを訴える叫びに。沈黙を保ったままだった浜面仕上は応えた。 少女――絹旗最愛に。

2011-01-08 01:00:06
@tabikake

「置いていくんじゃない」 否定する。 浜面仕上は否定する。 「迎えにいくんだ――」 大切な人を。 自分が愛した少女を。 「――滝壺理后を。本当の意味で迎えに行くんだよ」 力強く断言した。 ハッキリ、と。声高らかに。 想いを。想いの丈をブチ撒けた。

2011-01-08 01:06:31
@tabikake

「勝手な意見だろうがエゴだろうが傲慢だろうが知った事じゃねぇよ。もうアイツには危険に巻き込まれて欲しくないんだよ俺は」 だから離別を選んだ。 いいや浜面にとって離別を選ぼうという自覚すら無かったのかもしれない。

2011-01-08 01:12:04
@tabikake

ただ道の先を歩いて、ここには段差があるから蹴躓くなよ。ここは窪みがあるから回り道をしよう。 たったそれぐらいの。彼氏なら誰もが自然と示すぐらいの些細なエスコート。 それぐらいの感覚でしか無かった。 「超馬鹿ですか?相手は学園都市そのもの。無能力者の浜面に何ができるんですか」

2011-01-08 01:15:06
@tabikake

絹旗は呆れていた。 頭が狂ったとしか思えない。ロシアから帰還してから何か悩んでいたかと思えば馬鹿を拗らせてしまったらしい。脳外科医でも手遅れかもしれない。 そんな簡単に。そんな軽いエスコート感覚で相手が務まる程。 この世界の闇が浅くないのは身に染みてるだろうに。

2011-01-08 01:18:04
@tabikake

「できるさ」 浜面は簡単に言い切った。 「出来るに決まってるだろう。その証拠に――今もなお、俺は生きてるじゃねぇか」 それが何よりの証拠だと胸を張ってみせた浜面。 アレイスターの絶対なる論理の輪から、『イレギュラー』として外された存在は鮮やかに言い切ってみせる。

2011-01-08 01:23:15
@tabikake

「無能力者が、じゃなぇよ。無能力者だからこそ、だろ?」 何の素質も、何の素養も、何の才能も持ち得ないからこそ。 彼には理解し、共感を得られた物が一つだけあった。ロシアで散々――本来ならもっと昔からちっぽけな両手の中にあったはずの物。

2011-01-08 01:28:28
@tabikake

「無能力者ってのはな。無能じゃない」 特殊な力を持っていない本当の意味での。 ただの。 ただの人間。それが無能力者の意味であり――それ以上でもそれ以下でも無かった。 「俺は馬鹿だったからな。俺達は馬鹿だったからな。いつのまにか“普通”って意味をすぐに履き違えちまう」

2011-01-08 01:32:10
@tabikake

手の平から炎や、瞬間移動するような連中に囲まれていると忘れてしまう事実。 だけど一歩でも学園都市から外に出れば、むしろソレが普通なのだ。ただの人間が、ただの人間の力だけで、世界は廻り巡り成り立っている。 だってのに。 それを忘れてしまうんだからな、と浜面は馬鹿らしくて笑った

2011-01-08 01:35:11
@tabikake

「不思議なもんだよな。俺達はいつのまにか随分と毒されちまってたようだぜ」 いつだって世界という運命の物語は、ただの人間が紡いでいたというのに。 化物退治をするのはいつだって、何処にでもいそうな平凡な村人と相場が決まっているというのにだ。 「そんな理想論なんか私は――っ!!」

2011-01-08 01:39:09
@tabikake

「がなるなよ。別に勝算がねぇ訳じゃないさ。俺だってそこまで馬鹿じゃない」 「それは?」 「ああ……俺が暗部堕ちする前の話なんだがな。変な無能力者に出会ってよ。俺がスキルアウトリーダーだった時期の話しだ」 駒場の旦那が亡くなり、なし崩しにリーダーの座に納まった浜面の前に。

2011-01-08 01:43:16
@tabikake

とあるツンツン頭の少年が登場したのだ。 颯爽と、まるで正義の味方のように。 「ありゃ傑作だった。今になっちゃ腹抱えて笑い話にできるぐらいな。あんな絵本から抜き出したかのような戯言野郎は初めてお目にかかったぜ」 まさに傑作。まさに戯言。 どれだけお人好しなのか。

2011-01-08 01:49:05
@tabikake

「勝算はある。ありすぎるぐらいにある。なんせ無能力者(オレタチ)は――ただの人間は腐るほどいるんだからな」 浜面仕上は無能力者で、ただの人間で――『イレギュラー』だ。 これは変わらない。変わってはいけない基本骨子。譲ってはいけない彼だけの『自分だけの世界』だ。

2011-01-08 01:55:39
@tabikake

ならばこうは言い返せないだろうか? 逆説的に論理を組み直せば、誰も彼もが元は無能力者でただの人間で――『イレギュラー』に成り立つ公式があるのではないかと。 「そう考えるのが普通だろう?俺なんて凡人もいいとこだぜ。間違っても大層な身分なんかじゃねぇよ」

2011-01-08 01:59:33
@tabikake

「それは超否定しませんが」 「おい。そこはフォローいれろよ!!」 ……たくっ、と肩を竦めた彼は軽やかな笑みを取り戻すと謳うように言葉を放った。 「元スキルアウトのリーダーを舐めんなよ。俺には頼れる仲間がいる。仲間だけじゃねぇ」

2011-01-08 02:03:34
@tabikake

スキルアウトだけじゃない。この学園都市の人口は約二百三十万人。 「そいつら全員巻き込んで――戦争してやるさ」 想いと想いが重なり合えば。どれだけ広く深い闇だろうが、燦々と輝く光で照らし出せるのは歴史が証明している。 そうやって人の歴史は形作られ彩り花咲かせてきたのだから。

2011-01-08 02:07:24
@tabikake

「切り札も握ってるしな。学園都市の根底を揺さぶる超弩級の品だぜ」 数枚の紙切れをヒラヒラとチラつかせた浜面。その紙切れには全学生の素養という文字通りの可能性が書き出された門外不出のデーター群だった。 「勝てるかは解らない。いいやコレだけあっても分の悪い賭けだろう」

2011-01-08 02:13:51
@tabikake

だけど。 そんなものが。 「なんだってんだ。負け犬上等。分の悪い賭けだからこそ燃えるのが王道ってな」 逃げるのは止めた。 逃げるのには飽きた。 「逃避行はこれにて終了。こっから先は一直線の一方通行。闇を取り払った朝焼けの光景が広がる勝利を掴むまで止まってやらねぇ」

2011-01-08 02:17:47
@tabikake

「本気……なんですね?」 「おうよ。やることは簡単だ。俺達がやるのは恥晒しの負け犬の遠吠えを全力で叫ぶだけ。恥と云う恥を謳いあげ、惨めと云う惨めの泥を被りって泣き叫ぶだけさ」 ただし今までみたいに斜に構えた態度ではなく。 真正面から堂々とすれば。 「きっと応えてくれるさ」

2011-01-08 02:22:17
@tabikake

同じ気持ちを抱いていた人達が間違いなく共感を示し応えてくれる。 独り善がりの不良集団の泣き言じゃなく、正当な権利として人々に迎えられるはずだ。かつて傑作で戯言な少年の言葉通りに。 「だから俺は行く。こっからは反撃で、俺達のターンだ。やられっぱなしは性に合わないんだよ」

2011-01-08 02:25:04
@tabikake

浜面仕上はそれを最後に背を向けた。 絹旗とも、大切な少女とも一時の離別をする為に。そして必ず帰り迎えに行くと残して。 「それまで滝壺のことは任せたからなー」 それが本当に最後の言葉だった。そして始まりの宣告でもあった。 浜面仕上。第三の人生の幕開けの狼煙が立ち昇る。

2011-01-08 02:31:28
@tabikake

その後、とある地区を代表とした大規模な『組織』が立ち上がり、秘かに水面下の行動が開始するのだった。 なんとなく妄想終了なのであるー。ネムネム

2011-01-08 02:33:47