モブおじさん転生記

おじさん達が転生して流れ着く最後の街、O(おじさん)-シティ。 彼の街に辿り着いたかつてハッカーおじさんだったおじさんは、己の悲劇的運命を回避しようと、必死に生きてきた。
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よはん @yohann_sw

モブおじさんに転生するも犯罪者という悲劇的運命を回避するため粛々とサラリーマンを勤め恋愛そして結婚一児をもうけ転生のことなどすっかり忘れ去ったそのとき鳴り響く電話「妻子は預かった。命令に従ってもらう」己の運命を思い出すモブおじさん苦渋の決断や如何に。まで考えたのでご自由にどうぞ。

2015-09-07 20:44:52
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

モブおじさんの元に訪れた悲劇的な運命、あぁそうだ、モブおじさんに囁いてきたのはかつて転生前に西部アメリカを共に荒らしまわった片割れ。モブではないボスおじさんに転生した彼の命令にモブおじさんは、OR(おじさんらんく)的に逆らうことが出来ない。ただ、首を縦に振るしかなかった。

2015-09-07 20:53:03
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

このO(オジサン)-シティにはありとあらゆる世界から転生してきたおじさん達が、第二のオジサンライフを謳歌している。かつての犯罪歴を隠す為にモブおじさんに身をやつした彼のような、脛に傷を持つ者もいれば、おじさん達を追って、前世の罪を償わせようとするポリスおじさん達だっている。

2015-09-07 20:56:58
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

「貴様とて、妻子は大事だろう。いいか、OO(ダブルオージサン)銀行のセキュリティブレイクだ。かつてハッカーおじさんとして名を馳せたお前であれば容易いだろう」電話の向こう、笑い声が聞こえる。あぁ、知っている、あの笑いは、全てを思い通りに事を勧めた時に漏れる、敗者への嘲りだ。

2015-09-07 20:59:35
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

モブおじさんは歯を食いしばり、拳を作る。爪が掌を破り、血が零れた。あぁ、犯罪者としての運命が全部血と一緒に流れ出てしまえばいいのに、そうモブおじさんが己の悲運を嘆いたその時だった。『――あなた』 モブおじさんを、モブおじさんと呼ばぬ、たった二人の内の一人の声。

2015-09-07 21:01:34
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

『このおじさんの言ってることは、よくわからない。だってそうでしょ? あなたハッカーおじさんなんかじゃなくて、わたしと、この子の、最愛のパパなんだもの』『うるさいっ!!』電話の向こう、鈍い声が響く。「や、やめてくれ!! 俺はどんなオジサンになってもいい、家内と子を傷つけないでくれ」

2015-09-07 21:03:26
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

『お願い――あなたはあなたで、いて』『いいか、明日だ、明日までに用意しろ、いいな!』 其れだけを告げて、通話は切られた。再びかけても繋がらない。モブおじさんは己を恥じていた、妻子を案じるよりも先に、己の悲運を恨んだ自分を。そして泣いていた。そんな自分を愛してくれた人がいることに。

2015-09-07 21:06:05
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

モブおじさんは血染めの拳と、何も告げない携帯電話を見て、逡巡。携帯電話を傍に置いた後、モブおじさんは明かりのついていない我が家を見渡した。どの場所を見ても思い出される、愛しい妻と愛しい娘との思い出が。そんな思い出の中でも自分はモブに過ぎなかったと、モブおじさんは言えるだろうか。

2015-09-07 21:09:28
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

モブおじさんは己の胸中にふつふつとわきあがる初めての感情に戸惑いを覚えていた。前世での非道な行為の時の高揚感でも、酒を浴びるほど飲むときの陶酔感でも、初めて愛しい人に告白した時の緊張感とも異なる、胸の昂ぶり。気づけば拳の血は止まっていた。モブおじさんの瞳に力強い意志が宿る。

2015-09-07 21:12:00
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

確かな足取りでモブおじさんが玄関から家を出ると、そこには前世でモブおじさんとボスおじさんを捕まえんと正義におじさんハートを燃やし、この街にもやってきたポリスおじさんが立っていた。モブおじさんは彼を一瞥したのちに、彼の脇を通り過ぎようと歩を進める。が、すれ違いざまに彼が口を開く。

2015-09-07 21:14:08
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

「なんだその面は、俺が捕まえたかったハッカーおじさんはそんな面をしていなかったぜ」ポリスおじさんがモブおじさんに視線を向けず、ただ、ただただ、残念そうに言葉を零す。モブおじさんは、ただ、ただただ彼の次の言葉を待っていた。そしてポリスおじさんが視線をモブおじさんの家に向けたまま。

2015-09-07 21:16:48
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

「お前が前世での悪事を忘れて、この街でのうのうとモブおじさんをやっているのなら――その厚い面をぶっ叩いてやろうと思ったんだが」ポリスおじさんのいかめしい顔が、しかしぎこちない笑みを象る。モブおじさんの胸を拳でどんと叩き。「その面を見ればわかる。お前の胸中に渦巻くものが何か」

2015-09-07 21:19:01
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

モブおじさんは胸への衝撃に、しかし彼の中に燃ゆるおじさんハートがさらに勢いを増したことを悟る。彼はポリスおじさんの笑みを一瞥した後、歩を前へ。夜のO-シティを歩み始めたモブおじさんの背に、ポリスおじさんの声がかかる。「お前をポリスおじさんと呼ぶのは反吐が出る」

2015-09-07 21:22:08
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

だがな、とポリスおじさんが前置きをして。「お前のその胸中に宿ったものは、正義とか悪とかそんな尺度で測れるものじゃねぇ」遠くなってもポリスおじさんの声は良く通る。彼の叫びは続く。「おじさんハートが燃ゆるのは、愛しい人を護る為だ! そうだお前はモブおじさんじゃない!」

2015-09-07 21:23:44
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

「お前はヒーローおじさんだ! 愛しい妻子の為に戦うことのできる、どこにでもいる、しかしどんなおじさんよりも強い、ヒーローおじさんなんだ!!!」 ポリスおじさんの叫びがO-シティに木霊する。そして立ち上るオジサンたちの熱気がモブおじさんの背を押してくれる。涙が一滴流れた。

2015-09-07 21:26:04
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

モブおじさんは駆けだしていた。何処に行けばいいのかは分からない、しかし行かねばならない。あらゆるおじさんが流れ着く最後の街、O-シティ、その闇の中から、己に光を与えてくれた愛しい二人を探し出す為に。それが出来なくして、何がおじさんか、往け、モブおじさん!!!

2015-09-07 21:28:09
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

モブおじさんは駆けだしていた。何処に行けばいいのかは分からない、しかし行かねばならない。あらゆるおじさんが流れ着く最後の街、O-シティ、その闇の中から、己に光を与えてくれた愛しい二人を探し出す為に。それが出来なくして、何がおじさんか、往け、モブおじさん!!!

2015-09-07 21:28:09
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

キミを信じる誰かがこの街に居る限り!! (オープニングテーマが流れ出して、ネオンサイトに照らされるおじさんのおじさんシャドウが夜の街に伸びていく) まで考えたのでよはんさん( @yohann_sw )はご自由にどうぞ。

2015-09-07 21:29:42
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

キミを信じる誰かがこの街に居る限り!! (オープニングテーマが流れ出して、ネオンサイトに照らされるおじさんのおじさんシャドウが夜の街に伸びていく) まで考えたのでよはんさん( @yohann_sw )はご自由にどうぞ。

2015-09-07 21:29:42