【ハッピー・バースデー・トゥ・マイ・フレンド】
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ウシミツアワー。ネオサイタマ郊外に存在する巨大テニス場『揚げ玉』。ここはカチグミ専用の遊技場でありその予約件数は数十年後まで埋まっているといわれている。だが、営業時間をとうに過ぎているこの時間は当然無人である…はずだった。しかしご覧いただきたい。闇に浮かぶ無数のローソクの灯りを!
2015-09-15 01:37:02ぼんやりとした灯りは一つのテニスコートを囲んでいる。オブツダンめいて照らし上げられたコートには、二人のアイドル装束に身を包んだ少女がラケットを構えていた。濃紺の装束を纏うアイドルと、白黒の装束を纏うアイドルだ。その名はシズカ・モガミとシホ・キタザワ。ナムコ・プロのアイドルである。
2015-09-15 01:39:46さらに目を凝らせば、審判台の位置には十字架に磔にされているスーツ姿の男がいるのが分かるだろう。ナムコ・プロのプロデューサーである。彼はこのゲームの賞品であったが、彼女達のイクサが意地と意地のぶつかり合いとなった今では、コートをマッポーめいたアトモスフィアに包むオブジェでしかない。
2015-09-15 01:41:55テニスのルールは一般的なものと同じである。例えアイドルであろうと、カトン・ジツなど目立つアピールを行えば即刻失格の上セプクを強いられることだろう。しかし、この二人にあってはそのような心配は無用であった。…「イヤーッ!」シホが高々とボールを宙に放り、強烈極まるサーブを打ち放った!
2015-09-15 01:44:52「イヤーッ!」正面に迎え撃つシズカ!鋭くラケットを翻し打ち返す!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」激しいラリー!
2015-09-15 01:47:22「イヤーッ!」正面に迎え撃つシホ!力強くラケットを翻し打ち返す!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」激しいラリー!
2015-09-15 01:49:20おお、ゴウランガ!超高速で行き交うボールは、直撃すれば非アイドルなら実際死に至るだろう!日々カラテ・レッスンを行うアイドルにとって、この程度の死亡遊戯はチャメシ・インシデントなのだ!「ヌウーッ!」スキルにおいて上回るシズカの一撃がシホを怯ませる!ボールはシズカに向かって…
2015-09-15 01:51:58「ッ!?」ボールはシズカに向かっていかない!何たることか!?ボールは反対側のスペースに落下し、彼女を嘲笑うかの如く跳ねた!「…ライアールージュ・ジツ」小声でシホが囁く。然り、これぞ相手の視覚を誤魔化すシホのジツだ。ジツの使用を禁じられていようが、それが露見しなければいいだけの事。
2015-09-15 01:54:56戦いは必ずしも表面上のやりとりだけではないのだ。これがアイドルのイクサである!シホは会心の笑みを浮かべた。その時である。「イヤーッ!」シズカは既に駆け出していた。もはや間に合わぬタイミングと思われた。だがそれはただの疾走ではなかった。アイドル脚力、アイドル反射神経を超えた速さ!
2015-09-15 01:57:12シズカのニューロンがスパークを散らし、ゆっくりと飛び去るボールを冷静に観察する。未来予知めいた機動でシズカはラインぎりぎりまで後退し、ラケットを振り抜いた。「イヤーッ!」打ち返されたボールはシホに見送られ跳ね飛び、コートの壁にぶつかった。スコアボートに得点が入る。キャバーン!
2015-09-15 01:59:53『ラブ・フィフティーンドスエ』電子マイコ音声がアナウンスし、シズカはシホに向けてにやりと笑った。プレシャスグレイン・ジツ。シズカのニューロンを加速させるジツである。「やるじゃない…」シホもまた獰猛に口角を吊り上げると、次のサーブを放つべくボールを握り締め、空中に放った。
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