羊君主と白き民Ⅱ～歌う魔法師～

猫憑ノコ🍄＠トリトリVol.2対応中 @okurisuzume

次の情報を求め、女騎士は街道を駆ける。 老人から離れて暫くしたところで、跨っている羊がメエエ、と一声鳴いた。 「……何、老人が私の目を見て怖がっただと？」 「メエエエ」 「……うむ、そうか……老人にはすまないことをしたな」 ＃羊君主と白き民

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女騎士はそう言うと、羊の鼻先を模したような兜のつば部分を下ろした。 目元が隠れ、女騎士の顔は羊の仮面をつけたようになる。 「これで睨んでいるようには見えまい。睨んでいるつもりもないのだがな……」 「……」 余計に怪しいような気もするが、羊は何も言わなかった。 ＃羊君主と白き民

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また暫く行くと、今度は街道を行く少女に出会った。白髪で三角帽を被っており、見たところ魔法師のようだが…… 「そこの少女よ。少し良いか、尋ねたいことが……」 「はひいっ！？」 少女は女騎士の顔を見るなり、飛び上がってから固まってしまった。 ＃羊君主と白き民

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「ななな何でしょうか！？私を食べるんですか！？羊って草食でしたよね！？ですよねえっ！？」 何故か涙目で見つめられる。視線は見えていないはずだが……。 「４本角が珍しいのか？羊は草食だ。我が賢明な民は貴方を食べ物だとは思わぬが……」 ＃羊君主と白き民

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跨っている羊が不満そうな声を上げた。怖がらせた責任を押し付けられたことが解せないようだ。 「安心してくれ、私は怪しい者ではない。わけあって、ここ最近何か変わったことがなかったか聞きたいのだ。心当たりがあれば教えてほしい」 ＃羊君主と白き民

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「か、変わったことですかっ！？教えます、教えますから睨まないで下さい……！」 やけに怯える少女は、震えながらも情報を伝えてくれた。 少女はここ数日この辺りを旅しており、そこで様々なことを聞いたそうなのだが…… ＃羊君主と白き民

猫憑ノコ🍄＠トリトリVol.2対応中 @okurisuzume

「……な、なんだかあちこちで嫌な予感がするとか、何か迫っているって話を聞くんですが……」 「……！その話をもっと詳しく聞かせてはくれぬか！」 「は、はひい！なんだか悪い人たちが黒いのをばーっとやるらしいです！！なんかこう、ぶわっとしてごーってなるらしいです！！」 ＃羊君主と白き民

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「何だと！？」 「だからこう、ぶーんとしてぶわーっと……」 「メエエエエエエ」 （中略） 「……ありがとう、助かった。町に戻らねば……！」 頭から煙を上げる少女を背に、女騎士は町へと引き返していった。 ＃羊君主と白き民

よ鹿🍅 @yoshikacrazy

@xP__Px 歌っていると話題になるのは当然だ。それもこの大行列であればなおさらだろう。僕らはきっと軍楽団とでも思われているのだろう。さっきから金ばかり貰うぞ。まあ人が集まるということは情報も集まるということだ。好都合でもあるだろう。ただ動きにくいけれど。⇒

†ラザニヤさん🍊A6P3† @xP__Px

@yoshikacrazy 自分の領の隣。 半日もあれば往復ができる距離にある町で聞き込みをしていると、不意に。 陽気な音楽と動物の鳴き声が聞こえてきて気を取られる。 音の出所に目をやると大勢の人だかり。 人と人との合間から見えるのは。 白くて……。もふもふした……。……羊？

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@yoshikacrazy ……なんだ、あれ？ 「なんすか、あれ？」 心の声と口から出た声がシンクロして咥えていたクモの串焼きを落としそうになる。寸前の所でそれを阻止し、周りにもれずその可愛らしい群れの。 先陣を切って歩いている男へと近づいていく。

†ラザニヤさん🍊A6P3† @xP__Px

@yoshikacrazy 「にいちゃん何者っすか？ 軍楽団かなんかっすか？」 拍手はするが近づかない。お金を渡すが話しかけない。 そんなギャラリーを見かねて話しかけてみる。→

よ鹿🍅 @yoshikacrazy

@xP__Px 「ん？ああ、僕ももうそろそろ誰かに話しかけようと思っていたんだ。君から話しかけてくれるなんて好都合だ」 話しかけられて、弾いていた音楽を中断する。それに合わせて羊達も歌を止めた。 「僕は吟遊詩人さ。今は訳あってこんな大所帯だけどね」

よ鹿🍅 @yoshikacrazy

@xP__Px 後ろの民達を見て苦笑した。 「君の方こそどうしたんだい？見た感じ良い御身分の人に見えるけど……君主とか？」 わかっているように軽く笑い、問い返した。⇒

†ラザニヤさん🍊A6P3† @xP__Px

@yoshikacrazy 「むっ」 言い当てられて少したじろぐ。着飾ることはあまり好きではないので身なりはパッと見この町の人達と大差ないはずなのだが……。 油断ならない雰囲気を感じながらも、問われたからには答えなければと。 クモの串焼きを早々と平らげ、軽く一回咳払いをした。

†ラザニヤさん🍊A6P3† @xP__Px

@yoshikacrazy 「その通りっす。この町の隣にある領。パピヨネ領を治めてるパブロ・パピヨネ・バタフライと言う者っす。ここにはちょっと……野暮用で来てるっす」 念の為、災厄についての情報を収集しているということは隠して簡素に答える。 一匹の羊と目が合う。……可愛い。

†ラザニヤさん🍊A6P3† @xP__Px

@yoshikacrazy だがその瞳はこちらの心を見透かしているようで。 何とも言えない気分になって目を逸らした。→

よ鹿🍅 @yoshikacrazy

@xP__Px 「ああ、なんとなく言っただけなのにあたっちゃったよ！わぁお！びっくりだー！」 実際に君主ということが当たって驚いてみせる。 （まあ、実際。見た目を着飾ってなくてもさ。隠せないんだよねー。オーラとかっていうのはさー）

よ鹿🍅 @yoshikacrazy

@xP__Px 「僕はライモンド・グッドマンだ」 自分も名乗り返すと、パブロが羊と目が合い、そして逸らしていることに気付いた。 （彼は羊のことがわかるのか？そうか……僕はテレパシーで彼らが何考えているのかを探ればいいのか） 思い立ち、羊にテレパシーを行った。

よ鹿🍅 @yoshikacrazy

@xP__Px 聞こえたのはひたすらに「メエエ」と言っていることだけだった。 （そうだよな。当たり前か。僕らは考え事をする時は羊語は使わない。彼らも僕らの言葉は使わないよな） となるとうちの君主は尚更凄いことがわかった。まあそんなことは今は関係ないや。

よ鹿🍅 @yoshikacrazy

@xP__Px 「僕は今ある嵐についての情報を集めてるんだ。それは虫が関係していてね。何か知ってることを教えてくれないか？」 本題を切り出した。⇒