宮廷歌手小森輝彦さんのツイートまとめ第15回「北九州国際音楽祭、ベートーベンの「遥かなる恋人に寄せて」についての新しい気付き」
今月半ば、初めて北九州国際音楽祭で歌わせていただきます。しかも僕の大好きなリートをマチネで!西日本工業倶楽部というとても素敵なサロンです 。ベートーベンの名作「遙かなる恋人に寄せて」を実に14年ぶりに歌います。これ、ベートーベンの天才ぶりが凝縮されている曲だと思います。
2015-10-11 10:01:41このベートーベンの「遙かなる恋人に寄せて」。名作で、演奏は非常に難しい。この曲に出会ってシューベルト以前にこんな連作歌曲集があったことに驚きを覚えた方、多いと思います。15分足らずの曲ですが、一つの小さな宇宙と言って良いほど、多岐にわたる表現が盛り込まれている。
2015-10-11 10:03:117曲が有機的なつながりを持っているのが特色だと思います。曲の終わりが常に次の曲の始まりと重なっている。この移り変わりを楽しむだけでもかなり楽しい。 そして3曲目から4曲目もそうなんですが、この川の話から突然雲の話になるのが、今ひとつしっくりきていなかった。昨日これがわかったんです
2015-10-11 10:06:13と、まぁ、もちろんわかったと言っても僕が主観的に納得しただけの話ではあるのですが、作者達の心の動きがそこにあるのが感じられて、こういうのって演奏準備の醍醐味の一つですね。 水車小屋の娘よろしく、この曲でも主人公は小川に思いを託す部分があるのですが、
2015-10-11 10:07:52その小川に自分の止め処ない涙を見て欲しい、と感情を吐露したかと思うと急に雲の話を始めるです。その雲が遙か遠くにいる恋人に出会うだろうと。昨日わかったのは何かというと、小川に、自分の涙を運んでくれと頼んだ彼が、小川に映った空の雲を見て視線を上げたに違いない、と言うことでした。
2015-10-11 10:09:38こう考えると、3曲目から4曲目のつながりは非常に納得がいく。空間の広がりがあり、フィジカルに視線を上げた肉体の晴れやかさがそこにある。いやー。これで、このつながりは非常に歌いやすくなった。 帰宅途中に駅からうちまで歩く間に起こったことでした。
2015-10-11 10:11:26歩いている時って、止まっているときよりずっと頭脳が明晰に動きます。それもあって僕は暗譜に煮詰まると歩きます。 この曲はまだ煮詰まってないけど、歩きながら言葉を反芻していた。Duktus…これ、訳しにくい言葉なんですが…を体に入れ込む作業ですね。そこでこれに気付いた。
2015-10-11 10:14:05Duktusって、僕が持っている独和中辞典には載っていなくて大辞典には載っている。そんなに非日常的な言葉なのかな。 運筆、描写の仕方、みたいな説明が載っていますが、言葉の筆遣いってことではそうですね。これは言葉の表現における肉体性への架け橋だと思ってます。
2015-10-11 10:15:36Duktusを体に移すこと。僕はこの概念を、当時劇場の総裁だった演出家のマティアス・オルダーグにたたき込まれた。この夏ライプツィヒで彼のオペラ演技ワークショップを通訳し見ていて、彼のメソッドが寸分も変わっていないこと、ものすごい効果を上げることを再確認して、非常に嬉しくなった。
2015-10-11 10:17:56