安達としまむらSS　「月と春と」

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安達としまむらss タイトル「月と春と」 ＃安達としまむら

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二年生になって一つ、一年の時と変わったことがある。僕は今、恋をしている。一目惚れだった。相手は島村抱月さん。二年生になってはじめて同じクラスになった子だ。 ＃安達としまむら

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彼女を見た瞬間、僕は初めて恋に『落ちる』という言葉の意味がわかった。そしてそれからというもの、僕はどうしても島村さんのことを目で追いかけるようになってしまった。 ＃安達としまむら

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そんな生活をしているうちに気がついたことがある。僕と同じ様に島村さんに好意を抱いている人がいることだ。その子の名前は安達桜さん。女の子だ。初めは僕の思い違いかなと思ったんだけれど、どうやらそれは勘違いではなかったみたいだ。 ＃安達としまむら

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島村さんが他の女子たちとご飯を食べていた時に、安達さんがエキセントリックな行動に出た。恥ずかしいことに僕はそれまで、島村さん以外の女子はモブだと頭が認識していたようで、安達さんという女の子の存在を認識できていなかった。 ＃安達としまむら

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(後で聞いた話によると安達さんはよく授業をサボっていたらしいので、仕方ないといえば仕方ないのかもしれない)。その突飛な行動というのは、島村さんがお昼を食べているグループ(確か島村さん込みで四人ぐらいだったと思う)の中にいきなり横入りしたのだ。 ＃安達としまむら

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その時のグループの気まずそうさと言ったら本当に凄いものだった。今学期一気まずいでしょう大賞を送りたい。 ＃安達としまむら

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だけれど、この時は全く安達さんが島村さんに恋愛的な意味で好意を抱いているとは思ってなかった。僕がそうだと確信したのは、そんな事があった日から数日の間、島村さんだけでなく安達さんのことも横目に見ていた結果だ。 ＃安達としまむら

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普段安達さんはなんというか、周りに興味がなさげで、例えるならドライフルーツのような人だ。それがなんということでしょう、島村さんの手にかかれば新鮮な果物に元通りである。劇的ビフォーアフター(例え的にはアフタービフォーなんだけど)としか言いようが無い。 ＃安達としまむら

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僕は初め島村さんと一緒にいる時の安達さんが、安達さんだと認識できなかった。それほどに人が変わるのだ。 ＃安達としまむら

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また二人が一緒にいるところ見て思うところがある。残念なことに僕じゃあ、島村さんに告白をしてもOKを貰えるとは思えないということだ。 ＃安達としまむら

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理由は簡単な話、安達さんと一緒にいる島村さんは、僕が知っている笑顔の何倍も柔らかい。僕が知っている笑顔が微笑なら、安達さんに向ける笑顔はにっこりという具合だ。これはどうしようもなく僕が負けたと思うには十分なものだった。 ＃安達としまむら

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とは言え、諦めたりはしない。絶対に。来るべき日がくれば、僕が告白する決心がつきさえすれば、気持ちを伝えるつもりだ。玉砕覚悟だ。もとより告白というものは失敗することが前提なのだ。運が良ければ付き合える。そういう心づもりでないと、心がいくつあっても足りない。 ＃安達としまむら

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また僕が告白して良い答えがもらえないと思っている理由は、実のところもう一つだけある。これは僕が勝手にそうだと思っているだけなのかもしれないが、島村さんはあまり他人に興味が無いように思う。 ＃安達としまむら

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別に確証があるわけでも、自身があるわけでもない。なんとなくだ。女の勘ならぬ男の感だ。……なんと頼りになりそうにない響きの言葉だろう。 ＃安達としまむら

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「おい、号令なっとるぞ。何をボーっとしている」 ＃安達としまむら

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先生の言葉で頭が現実に戻ってくる。「すみません」と謝って立つ。周りの皆は全員立っていた。友達に笑われる、からかわれる。純粋に恥ずかしい。ちらりと島村さんの方を見るが、全く気にもとめてなかった。前をじっと見ている。横顔もかわいい。 ＃安達としまむら

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ついでに安達さんも見てみると、島村さんの方を向いていた。と思っていたら急に視線を前に向けた。なにかと思って島村さんを見ると、安達さんの方を見てクスクスと笑っていた。なんだか二人の仲の良さを見せつけられたようで、悔しい。元はといえば僕が巻いた種なんだけど。 ＃安達としまむら

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委員長の号令で挨拶をし、先生からの解散の声を聞いて生徒が一斉に慌ただしくなる。部活に向かう者や属していない者、彼氏彼女のところへ向かう者、職員室へと何らかの用事で向かう者、皆自分の目的地へと向かう。 ＃安達としまむら

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僕は帰宅部なので自転車置き場へと向かう。ちなみに島村さんもチャリ通だ。お揃いである。この学校は徒歩で来る人の割合の方が少ないが、そんなこと気にしない。ちょっとした共通点が僕の生きる活力になるのだ。 ＃安達としまむら

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自転車置き場につくと目に入ったのは島村さんと……安達さんだ。チクショウ。もし、できるのなら、安達さんと心が入れ替われるならそうしたい。僕は別に肉体的な関係を築きたいんじゃない。島村さんにただ、見てもらいたいんだ。意識してもらいたいんだ。 ＃安達としまむら

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島村さんとすれ違う。いい匂いがした。会話の内容は全くわからなかった。どうでもいいが僕はストーカーちゃうよ。ホント、断じて違う。 ＃安達としまむら

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帰り道、風にのっていい匂いが漂ってくる。そのいい匂いの元がどこか見当はついていた。おにくのながふじ。小中高と同じ学校に通っている長藤の、おっちゃん・おばちゃんのやっている店だ。長藤は中々大人びている。主に体が、おっぱいが。あとかわいい。島村さんには劣るけど。 ＃安達としまむら

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だけれど長藤は、こちらも小中高と同じ学校の日野と仲がいい。というか付き合っているのかと思うぐらい仲睦まじいので、男に入る隙間はない。そう考えると中々僕の周りはゆりゆりしている。まあ、ホモホモしているよりかはいいか。 ＃安達としまむら

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匂いに誘われるがまま、おにくのながふじの前で自転車を止める。店先に誰も居ないので「すいませーん」と声をかけると中から「はいはいー」とおばちゃんが出てきた。 ＃安達としまむら