#先着で来たお題3つで超短編SS書く 「八郎潟 フェリー古鷹 蒸気機関車」 これで書きます pic.twitter.com/prc87hPZq0
2015-10-17 20:18:48#先着で来たお題3つで超短編SS書く 「可動橋さん、裏日本に来ると雪の感覚が変わるわ…。重苦しくて…」 冬空を思わせるどんよりとした雲が空を覆う。鉄道の線路を空へあげる可動橋を潜りながらフェリー娘がぼそりと言った。 可動橋はフンと鼻でせせら笑い、新参ものの「通行人」の彼女を通す。
2015-10-17 20:29:15#先着で来たお題3つで超短編SS書く 瀬戸内から秋田の船川港へ転属してきた船娘…、名はフェリー古鷹といった。双頭船と呼ばれる凸型の船体“シルエット”で搭載車輌がすぐ降りれるよう短距離航路の発着に便利にできている。
2015-10-17 20:40:41#先着で来たお題3つで超短編SS書く 20XX年、男鹿半島沖の油田開発が大成功に成り、八郎潟の南部干拓地は石油コンビナートと化した。その八郎潟から船越水道と呼ばれる日本海への出口を抜けて、沖合のメガフロートへのシャトル便に彼女が抜擢されたのである。しかし冬の荒波には弱かった。
2015-10-17 20:43:34#先着で来たお題3つで超短編SS書く 開口部が多いフェリーの古鷹には冬の日本海は辛い。それでも夏季の波が静かな時を選んでのトラックや重機などの輸送には大いに活躍できた。
2015-10-17 20:50:13#先着で来たお題3つで超短編SS書く 今は広大な干拓地が占める八郎潟には伝説がある。イワナを喰いすぎた為に、人から龍へと姿を変えられた八郎太郎という名の龍が、放浪の末に棲家として選んだという。 どこか艦娘や船娘に掛けられた運命…いや呪いか、それに通じるものがある。
2015-10-17 20:52:53光も影も背負ってこそドボク鎮守府だ。 蛸部屋労働、強制労働問題、公害、談合‥・。世の中のドス黒いモノにショベルとモッコで立ち向かってきた。艦娘も重機娘…建姫ともいうか?とにかく彼女らも同じだ。 明日の幹線道路の道端に綺麗な植樹帯が生えるようにするのがドボクさ。
2015-10-17 21:03:55#先着で来たお題3つで超短編SS書く 「私の前世は…なんだろう。かの軍艦…?フフ…まさか」この世はあらゆる機械とインフラ生命体で満ちている。母なる港にも小さきとも強い曳船たち…。果ては山や湖にすら魂が宿るという。
2015-10-17 21:09:47#先着で来たお題3つで超短編SS書く そんな雑念を…航行中は安全の為に頭から振り払うのだが、停泊中などの手持ち無沙汰な時にいつも脳内に描いていた。そして彼女は今日も船越水道を通り抜ける。ここには男鹿線という鉄道が可動橋で渡っており、列車が通るときは優先で船は待たされる事が多い。
2015-10-17 21:17:56#先着で来たお題3つで超短編SS書く 八郎潟から外へ出ようとしたら、何時もどおり河川側に向けた交通信号の赤で足が止められる。 「古鷹さん、通行止めやで」 「はいよ」 可動橋と話を交わして、そろそろ列車がやってくる。ん?あの煙と音は…。
2015-10-17 21:26:45#先着で来たお題3つで超短編SS書く あれは蒸気機関車ではないか。話には聞いていたが海の者として陸蒸気を見るのは初めてだ。シュッガッシュガッと小気味良い音を立てながら橋を渡っていくのは、C11型に荷物車を組込んだ10連の長い列車。 pic.twitter.com/zyjiwCOJl7
2015-10-17 22:13:34#先着で来たお題3つで超短編SS書く 後で可動橋から聞いた話によると、彼女“蒸気列車”は県内のとある公園で保存されていたのを観光目的の為に動態保存で復活させたのだという。これは艦娘の現世への再来に通じるものがあるな…と目の前を横切ってゆく列車を見ていた。
2015-10-17 22:23:44#先着で来たお題3つで超短編SS書く そんな過去からの列車との出会いに、フェリー古鷹には秋田に来た楽しみが増えたのである。列車と船でいずれゆっくりと話をしたいものだが、交通機関どうし、忙しく未だにその機会は訪れていない…。(終
2015-10-17 22:26:38@Kojimamo ありがとうございます! とても上手にまとめられてました! 過去と今とに思いを馳せるフェリー古鷹、という内容はとても良かったです!
2015-10-17 22:32:27「超短編SS書く」で出した可動橋は実在する橋でして JR男鹿線の八郎川橋梁です。昇開橋と呼ばれる形式で橋桁が上昇して船を通すものでした。 現在は可動機能は廃止されています。 twitter.com/Kojimamo/statu… pic.twitter.com/WoGQXh9CBv
2015-10-17 23:43:16