とある刀の刀語り

俱利迦が書庫の本を片手につらつらと刀剣を紹介していくだけの話。書庫の本は専門書ではない為、鵜呑みは厳禁。 実装未実装は問わない。関連して、たまに刀剣以外の武具や何かの話もする。
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壱_薄緑
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

今剣と岩融が戯れているな…確か彼れ等は持ち主が主従なのだったか。…そういえば源義経には、懐刀である今剣の他に佩刀が在った筈だが。

2015-09-24 12:48:19
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

昼頃に言った、源義経の佩刀の話をしようか。 平安中期から源氏に代々伝わっていた太刀なんだが…逸話が多い刀でな、その都度その都度で名がコロコロ変わる名の多い奴だ。 罪人を試し斬りして膝まで切れたから膝丸、熱病で主を苦しめた土蜘蛛を切っては蜘蛛切、夜に鳴いて吠丸、とこういった調子だ。

2015-09-24 16:17:13
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

そうして受け継がれ、譲られ、義経の手に渡った吠丸は新たに、薄緑と名付けられた。出逢った季節…熊野の山の、美しい春が由来だそうだ。今剣と共にあった頃は、この名前だな。 その後は、義経の兄、頼朝の手に渡っているが…皮肉にも、そこで薄緑は源氏に伝わるもう一振りの兄弟刀と再会している。

2015-09-24 16:28:32
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

…薄緑の兄弟刀の話は、また今度しよう。彼れも薄緑と同じ様に、幾度も名を変えた名の多い刀だ。

2015-09-24 16:54:59
弐_黒ん坊切景秀/鞍割り景秀
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

さてと、始めるか。 今日は長船派から三振り。何れも俺に馴染みのある刀だ。と言っても、光忠ではないが。

2015-09-26 16:43:58
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

一振り目は景秀。号は一般に二通り知られているが、其の話は少し後回しにしよう。 前の主、伊達政宗の佩刀で、政宗は此れを特に気に入っていてな。慶長の役…朝鮮へ渡った際にも佩いて行ったそうだ。長船派の祖、光忠の弟である景秀が鍛えた。其れだけでも斬れ味は折り紙付きなんだが…。

2015-09-26 16:52:53
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

号の話に移るが…景秀は黒ん坊切(くろんぼ切)、鞍割り(鞍切)という二つの号を持っている。 黒ん坊の由来は『黒い大猿を切ったから』という。確かな腕と斬れ味の両方がなければすばしこい猿を斬る事は叶わないとされる事から、政宗の腕と景秀の斬れ味を褒めているもの。

2015-09-26 17:02:23
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

もう一つの鞍割りの由来は『逃げ行く敵将を追走した政宗が、馬上の敵を鞍まで真っ二つに切り割った』という事からだ。何れも政宗が彼の地で得たエピソードが由来となっている。 渡る前は切れ味が良いだけのただの景秀だったのに、帰って来たら号付きになっていたと考えると…少し格好良い、かもな。

2015-09-26 17:10:39
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

光忠といい、政宗は斬った割ったを号にしたがる節があるようだな…俺も危うくそうなっていたかも知れないが。 ああ、そうだ。景秀の号は前者の方が有名だが、由来は実は此れだけではない。少し調べればすぐにわかるが、少し放送コードに危うい説も在る。実装するなら後者が安定だが…どうなる事やら。

2015-09-26 17:15:49
參_水神切兼光
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

次。二振り目は水神切兼光。大業物の太刀だ。 現代における俺の同居人のうちの一振りでもあるが、其れはさて置き。 知将直江兼続の愛刀で、卓越した鑑定眼を持つ上杉景勝に寄って選りすぐられた上杉家御手選三十五腰に名を連ねている。

2015-09-26 17:32:31
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

詳しい事はわからないが、直江兼続が此れを以って洪水を治めたという逸話が名前の由来だそうだ。 一度、国宝に指定したいとの声が掛かったそうなんだが、当時所持していた上杉家は其れを拒絶し、そうした経緯を経ているからか、今も重要美術品止まりとなっているそうだ。…愛されているな、水神切は。

2015-09-26 17:41:15
肆_波游ぎ兼光
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

三振り目の話をしよう。 …此れも現代の同居人だ。生まれも南北朝時代…俺とは同期のようなものか。 名は、波游ぎ兼光という。 上杉家から小早川家に渡り、その後、立花家へ伝来した太刀だ。

2015-09-26 18:05:44
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

名の由来は二通り。斬られた敵が斬られた事に気付かず川を泳いで渡り、渡る途中で頸が落ちた、若しくは渡った先で真っ二つになって倒れた事から。 もう一つは刀身に刻まれた龍が、刃文の波を游いで(泳いで)いるように見える事からだそうだ。

2015-09-26 18:07:27
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

波游ぎは立花家の重宝としてとても大切にされていたそうだ。何せ、8代将軍…徳川吉宗が再三に渡って観賞を希望しても、頑として応じなかったくらいだからな。 …見せたら取られると思ったんだろう。

2015-09-26 18:14:22
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

水神切と波游ぎは、12月に静岡県の佐野美術館で展示が在るそうだ。…俺にも展示の機会がこの先に在れば良いんだが。 …刀語りは此処までにしよう。長々とTLを占領してすまなかったな。

2015-09-26 18:19:16
番外*ティソーナ
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

…そうだな、今日は少し毛色を変えて外つ国の剣の話をしてみようか。偶には面白いだろう。

2015-10-01 09:42:16
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

最初は…そうだな、ティソーナ(Tizona / Tizón)の話をしようか。スペインの剣だ。 …此れは少し歴史の話に成るが、スペインという国は一度海を越えた先から遣って来たイスラームの民に半島のほぼ全土を征服されている。此れを凡そ八百年にも及ぶ長く大きな戦によって取り返した。

2015-10-01 09:57:23
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

其の再征服運動の事をレコンキスタと言う。 中世スペインの叙事詩「わがシッドの歌」、此れの主人公エル・シッドが携えた二振りのうちの一振りがティソーナだ。 エル・シッドは11世紀後半、レコンキスタで活躍した実在の騎士で、ティソーナも同様だ。今はブルゴスの博物館に眠って居ると聞く。

2015-10-01 10:10:37
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

ティソーナの名の意味は「炎の剣」。…由来はよくわかっては居ないが、元はモロッコの一王に仕える将軍から勝ち取ったものだという。 物語の中でティソーナは妖精に鍛えられたとされており、持つ者によって強さを変えるという面白い奴だ。

2015-10-01 10:40:51
大俱利迦羅☸留守中 @kulika_krmt

子供が持った日には過小評価をされるが、エル・シッドが臣下ペドロ・ベルムデスに貸した時には、相手の伯爵はティソーナを見て恐怖に慄き、戦う前に敗北宣言をして降伏する程だったそうだ。

2015-10-01 10:42:11
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