【ミイラレ!第二十四話:合いの子のこと】(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。龍造寺一家勢ぞろい。 こちらは原文のみとなります。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/904388
0
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第二十四話:合いの子のこと】 #4215tk

2015-11-24 18:13:02
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

大捕物である。Tの指示によって集まった退魔師たちは、油断なく彼と『口裂け女』の戦いを注視する。彼が前線に立つ以上、怪異に勝利はない。それでも万が一のために備える。相手が逃走を選んだときに逃さぬように。一般人を巻き込ませぬように。不慮の事態はいつでも起こりうる。1 #4215tk

2015-11-24 18:15:01
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

口裂け女の片割れである怪異は、現在『山ン本組』所属の面々に追い詰められている。……とはいえ、こちらも油断ならない。彼らと退魔師連合の確執は、そう簡単に晴れるものではない。故に警戒を怠らない。結果的にそれが退魔師たちの身を助けることとなる。2 #4215tk

2015-11-24 18:18:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

最初にその怪異の接近に気づいたのは、索敵特化の武装をした女退魔師だ。目の紋様が描かれた布を顔の前に垂らした彼女は、包囲網の外側から密やかに接近する霊気を察知する。『二時方向より別種の怪異接近中。警戒せよ』通達と同時に式神を飛ばし、新たな怪異を捕捉せんとする。3 #4215tk

2015-11-24 18:21:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

該当方向にいた退魔師たちもまた、自らの目によって接近しているはずの怪異を探していた。しかし『霊気の反応確認できず。誤認では?』『否。非常に微弱であるのみ。警戒を続けよ』『りょうか……』その退魔師が最後まで念話を続けることはなかった。首筋から血飛沫。4 #4215tk

2015-11-24 18:24:01
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

倒れ伏す退魔師を見て、周囲にざわめきが起こる。その目の前で一瞬朧な揺らぎが立ち昇り、消えた。「隠形か!」「打ち消し!急げ!」叫びが錯綜する。ここで索敵退魔師の式神が到着!特殊な波動を放ち、怪異の位置を特定せんとする!それはすぐに効果を奏した。離れた場所で揺らぎ。5 #4215tk

2015-11-24 18:27:01
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「はは、見つかったか?やれ、厄介なことだ」笑みすら零し、その怪異はぐるりと周囲を見渡した。武器を構える退魔師たちに挑発的ともとれる眼差しを向ける。「おお怖い怖い。このような怖い人間どもに狙われるとは、さて我が愛娘たちも迂闊なことよ」「娘だと?」6 #4215tk

2015-11-24 18:30:01
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怪異の正面に立った紙鎧の退魔師が唸る。「となると、あの怪異たちを助けに来たか。名くらい名乗ったらどうだ?」「ふむ。一理ある」顎に手を当て、怪異は不敵に笑みを浮かべた。黒い着物姿の女である。その髪は雪のように白い。「我輩は化け猫である。名を龍造寺 夜桜という」7 #4215tk

2015-11-24 18:33:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「化け猫……龍造寺……」眉根を寄せていた紙鎧の退魔師は、不意にその顔を歪めた。「『鍋島の化け猫』か!またぞろ大物がかかったな」「然り、然り!おぬしら木っ端退魔師など相手にもならぬぞ。幸い我輩、娘を助けるために急いでおる。道を譲れば見逃すが、如何か?」8 #4215tk

2015-11-24 18:36:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怪異、夜桜への返答は式神の群れによって行われた。瞬時に自身を包囲し旋回する式神群を見て、夜桜は苦笑する。「こうなるか。ま、わかっておったがね」そして両腕を一閃。取り囲んでいた式神がばらりと地に落ちる。その全てが綺麗に両断されていた。「なれば斬って捨てるのみ」9 #4215tk

2015-11-24 18:39:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「かかれ!」紙鎧の退魔師の号令とともに、周囲の退魔師たちが攻撃を仕掛ける。後方からは援護の式神たち。しかし「ふふん」夜桜は鼻歌混じりにそれを避け、前に進み、障害となる退魔師のみを斬り捨てた。その爪についた血を舐めとりながら、彼女は着実に包囲網を突破していく。10 #4215tk

2015-11-24 18:42:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『ぬぅんッ!』誰かの式神であろう青い鬼神の戦斧を紙一重で避け「うおおッ!」その隙を突いて両手の札刃で襲いかかる少年退魔師と斬り結ぶ。「おお、随分と幼い。うちの娘らとそう変わらんな」必死の形相である退魔師を見て、夜桜は笑った。「うむ、命は取らんでおこう」11 #4215tk

2015-11-24 18:45:02
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

その言葉と同時、退魔師の札刃が澄んだ音を立てて両断された。夜桜の爪。「しゃッ!」「うぐっ!?」爪の先端で顔を撫でる。少年の顔に細かい傷が刻まれ、血が滲んだ。怯んだ退魔師を蹴り飛ばし、夜桜は……後方からは殴りかかってきた紙鎧の退魔師の拳に乗り、跳ぶ。12 #4215tk

2015-11-24 18:48:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

そのまま退魔師たちの輪の上を行った夜桜は、愛娘の一人である美咲に追撃をかけんとしていた退魔師に無言で斬りつけた。「おっと!?」すんでのところで躱され、彼女は初めて顔をしかめる。成る程、腕が立つ者も紛れていたようだ。「おう、うちの娘が世話になったの」13 #4215tk

2015-11-24 18:51:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

割って入った夜桜は、細い瞳孔で退魔師を睨み据える。一方の退魔師も瞬時に体勢を整え、構えていた。隙はない。「次は龍造寺の長たる我輩が相手をしてやる。光栄に思うがよい」「はは、次から次へと……息つく暇もねえな、まったく」退魔師の両手に光が灯る。空気が張り詰めた。14 #4215tk

2015-11-24 18:54:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

……退魔師Tは新手の怪異を観察する。小柄で線が細く、膂力に優れるようには見えない。が、怪異は見た目で判別できるものではない。「美咲、立てるか」こちらから目を離さぬままに怪異が言う。「へ、平気だよ」尻餅をついていた口裂け女が勢いよく立ち上がった。15 #4215tk

2015-11-25 18:09:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ならばよし。ちと充虎を助けに行ってやれ。我輩、こやつの相手で忙しくなるでな」「……言われなくても!充虎ちゃんいじめやがって、あの連中タダじゃおかねえ!」口裂け女が憤怒の形相で駆け去っていく。風の如き速度。Tは手を出さない。いや、出せない。16 #4215tk

2015-11-25 18:12:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

眼前の怪異……念話でもたらされた情報によれば『鍋島の化け猫』は強い。霊気はもちろん、年季が違う。迂闊に仕掛ければ手痛い反撃が待っているだろう。片手間でどうにかできる手合いではない。もっとも、向こうも自分に同様の判断を下したようだ。周囲の喧騒に構わず睨み合う。17 #4215tk

2015-11-25 18:15:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「どういう風の吹き回しだ?」Tは軽口を投げかける。「かの有名な化け猫殿が、なんだって見ず知らずの人間の子供にちょっかいをかける」「我輩ではなく、家内がな」怪異が応じた。先手を取るきっかけが欲しいのは、向こうも同じということか。退魔師はそう考える。18 #4215tk

2015-11-25 18:18:18
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「しかし、訝しいといえばそちらも同じことよ!何ゆえたかが人間の子供一人をここまで守ろうとする?おぬしら退魔師とて暇ではあるまい」「人間を守るのがこっちの仕事なんでな」「ふうむ!」怪異が懐手で顎に手をやる。「どうも腹の探り合いは時間の無駄のようであるな」19 #4215tk

2015-11-25 18:21:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怪異が一歩踏み出す。次の瞬間には、彼女はすぐ目の前まで距離を詰めてきていた。「シャッ!」繰り出される素早い拳打を右腕で防ぐ。じゅっ、と肉の焼ける音。怪異が顔をしかめ、手を引いた。その手の甲が黒く焦げている。が、すぐに元どおりの肌へと戻った。20 #4215tk

2015-11-25 18:24:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

何が起こったか。Tが腕に纏う破魔の気による現象だ。彼の破魔の気は怪異に接触するだけでも効果を発揮する。並の怪異であれば今ので除霊できるのだが……(さすがにそこまで甘くはねえか)「破ァッ!」防御姿勢のまま気を放つ。しかしその時には既に怪異は側面へ回り込んでいた。21 #4215tk

2015-11-25 18:27:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

……「オラァッ!」「ハイヤーッ!」一方、口裂け女の美咲は妹を追い詰めていた怪異の一人に蹴り!対するチャイナドレス姿の怪異は青龍刀で危うくその不意打ちを防ぐ!「ぞろぞろぞろぞろウザってェ!踏み潰すぞ虫ケラァッ!」「アイヤー、とんだ狂犬ネ!あれ、ネコだったっけ?」22 #4215tk

2015-11-25 18:30:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

首を傾げるチャイナドレス怪異に構わず、美咲は充虎の戦況を伺う。連絡を終え戻ってきたらしい三毛犬・四毛犬とともに、あの蟷螂の怪異や蟻の怪異と相対している。落ち着いたものだ。静かに感心した美咲はすぐに眼前の怪異へ視線を移した。ひとまずこれを片付ける。23 #4215tk

2015-11-25 18:33:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「おっと、それ以上は近づかない方がいいヨ!近づくと」「近づくと?」「穴に落ちる」眉をひそめた美咲は、すぐに足下の異常に気づく。慌てて飛び退くと同時、道路が砕け長大な何かが突き出してきた。「なッ……」さすがにあっけに取られる美咲。その耳に風を切る音。24 #4215tk

2015-11-25 18:36:08
1 ・・ 5 次へ