【忍殺パロディ風味テキストカラテ】ジンジ・ニンジャ アケボノ係長の巻
「……それで考えたんだけど、この議題と直接関係ない話なんだけどね……」「イヤー!」「グワーッ!!」ナムサン! 会議で延々と話していたデブの眉間に突き刺さったのはスリケン……いや、サンガリヤの缶コーヒーだ!ビル入り口の自販機で安い! デブはそのまま後ろに倒れこむ!1
2015-11-24 22:50:15「そこまでだ!」会議の参加者が振り返ると……プロジェクターから声! それも社長の声だ! 「今回の会議は皆の忌憚ない意見を聞く場として設けた。だから話すこと自体は非難しない」プロジェクターは一瞬光り、そのライト部分に奥から次の缶コーヒーが自動的にセットされた。コワイ!2
2015-11-24 22:50:28「しかし7分間も聞かせた挙句、『議題と直接関係はない』とは言語道断! 業務が立て込む休み明け、キサマの与太話に付き合う時間はなし! 退場すべし! 慈悲はない!」「しゃ、社長ー!? 社長ナンデ!?」居合わせた参加者はSRS(社長・リアリティ・ショック)を発症しかける!3
2015-11-24 22:50:44「……大変失礼しました、私、御社社長から会議運営のブラッシュアップを依頼されました人事・経営コンサルタントのジンジ・ニンジャです。社長の声を再現してみました」プロジェクターは一転、爽やかで穏やかな声で詫びる。「活発な議論ですね、アケボノ係長?」デブの顔に冷や汗!4
2015-11-24 22:51:02「白熱してますが、休憩とします。コーヒーがありますので、隣室に移動をお願いします」参加者は息をつき、ざわつきながら声の指示に従って会議室を出ていく。「申し訳ありませんでしたァァ!」一人になるとアケボノ係長は素早く起き上がり、プロジェクターに向かって渾身のドゲザ!5
2015-11-24 22:51:21「私が求めているのはドゲザではありません」プロジェクターの声はあくまで冷たい。「あなたの胸ポケットに3分間のキッチンタイマーを仕込んでいます。発言の際には、このスイッチを押す。タイマーの音が鳴ってもあなたの話が終わらなければ、人事部に報告のメールが飛びます」6
2015-11-24 22:51:42「アイエエエ!ヒドイ!声からすると若造のクセに!キサマになんでそんな権限がぁ! 係長だぞ私ワァ!」シタテに出ていた係長が突然激昂する! チクショ・コンジョ!会社で役職を手にしたものがしばしば陥る、目下と見限ったものへのシツレイ態度である!7
2015-11-24 22:52:01「先ほども申しましたが、私は御社社長から直々のご指示をいただきました。この措置も了承済みです」声は係長の恫喝にも動じない。「あなたはそのデブパフォーマンス、サラリマン精神PRジツで係長にのし上がった。しかし、その影には自らの奮闘であなたを支える部下がいる」8
2015-11-24 22:52:20「そのことを忘れたため、会議が独断場となっているのです。現場の士気は下がる一方。終わらせなければならない」係長は小さく震えだした。「上着の胸ポケットに、社長が私に宛てた依頼書を入れました」……ジヒョ? 係長は上着のポケットを探ると、折りたたまれた便箋を取り出した。9
2015-11-24 22:52:51「心して読んでください。ちなみにこれは丸秘文書。公開すれば処罰の対象です。では」プロジェクターの通信がプツリと消えた。折りたたまれた紙片を広げると、見慣れた社長の文字が目に飛び込んできた。10
2015-11-24 22:53:08「……愚かなところもある係長だが、昔からの部下だ。以前は真面目に業務に取り組み、部下を讃え励ます男だった。自分が語るより、人の声に耳を傾けることのほうが多かった。そのときのことを何とか思い出させてやってほしい」その紙に汗、いや涙が落ちた。11
2015-11-24 22:53:23係長は手紙を手に蹲ったまま、目に涙を滲ませた。「ブ、グファッ……ウゥ」鼻が鳴る。会議は途中だ、泣いてる場合ではない。係長は涙を堪え、床に転がった缶コーヒーを手に取った。低カロリーのブラックだ。12
2015-11-24 22:53:40そのまま立ち上がると、おもむろに開けて飲む。喉がゴクゴクと鳴った。「アーイイ……つめたいィー……」独り言が漏れる。デブにとって冷たさは一服の清涼剤だ。係長は飲みきった缶コーヒーを手に、窓の外の青い空を眺めた。その下には、青いスーツの青年が去っていく姿が見えた。13
2015-11-24 22:53:57