クレロワ

垣内のクレロワまとめ
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垣内隼介 @kakiuchiyoppa

「七原モテすぎだろ」鹿嶋春海(男子2番)は、読んでいた本を勢いよく閉じ不満げに舌を打った。プログラム開始以来、もう何時間この場所に座っていたのだろう。分校を出てすぐにバテて岩影にどさりと腰掛けた春海は、いつの間にかかじかんでいた指先に息を吹き掛けた。

2011-01-18 19:31:46
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

吐き出した息が白く浮かび上がるほど空気は冷たいが、しかし春海の重い腰は上がる様子を見せない。まさか年始のこのタイミングで、春海が過度に栄養を摂取し最大体重になった直後に、クレアール学園がプログラムの対象校になるなんて。いや、そもそもプログラムは架空の話ではなかったのか。

2011-01-18 19:32:45
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

ああ、早くこの分校から離れないと、もうじきここは禁止エリアになってしまう。頭ではわかっていても、首の肉にめり込んだサイズの小さすぎる首輪は春海の摂取酸素量を減らし、座っているだけで疲労感を与えるのだ。しかしまりこさま、彼女はやはり女神なのだろう。

2011-01-18 20:14:41
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

彼女の名前を口にしただけで、不思議と力が沸いて来るのだから。 近くを勢いよく駆けて行く、あれは笹良弥堂(男子30番)だろうか。もう、ほとんどの生徒が行ってしまった。太って細くなった目を更に細め、暗くて見づらい優真の姿を見届けてから、持っていた本をデイパックに放り込んだ。

2011-01-18 20:15:23
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

ぼくは、まりこさまのために頑張る。そう決意して立ちがると、周囲を警戒しながら…さて、どこへ行こうか。(あなたが取る次の行動を適当にツイートして下さい。極力沿って続けます。)

2011-01-18 20:17:03
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

耳鳴りがひどい。吐き気がする― 笹良弥堂(男子30番)は、分校を出てすぐ駆け出したその足を止めないまま、自らの柔らかな金色の髪を梳くような所作で頭を抱えた。説明を聞いていた頃から、脳に響き直接刺激してくるような絶え間無い耳鳴りに襲われ、過酷な現実とちっとも向き合うことが出来ない。

2011-01-18 21:44:02
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

そもそも、この学園に入学した当時から嫌な予感はしていた。これから始まるばら色の高校生活に心躍らせながら教室へ行ったというのに、点呼が始まると、カシマが呼ばれ、カラスオの後に呼ばれたのはタキイだった。タキイの前にあるべきササラが、弥堂の苗字が無かったのだ。

2011-01-18 21:45:00
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

困惑し切った弥堂の前でそのまま淡々と点呼を続けた教師は、前田諭(男子28番)と前田虎二(男子29番)の名を呼んだ後、にこやかに弥堂を見て言った。「30番…弥堂、サラミ君。」

2011-01-18 21:46:15
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

アリエンティ。思わず荒らげた声は、緊張した空気の教室に響き渡った。途端、垣内隼介(男子1番)が「借り暮らしのアリエンティww」と手を叩いて笑い出し、静かだった教室は大騒ぎになった。収集のつかない生徒達に手を焼いた担任が弥堂を見ていたあの恨めしげな眼差しは、今でも忘れられない。

2011-01-18 21:48:48
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

以来、担任は弥堂に冷たくなった―少なくとも、弥堂自身はそう信じていた。弥堂の高校生活はおかしくなった。花雫カペラ(男子25番)はいつも弥堂を見ては薄ら笑いを浮かべてきたし、皆が自分を蔑んでいるように思えた。このプログラムも、きっと自分がいるからこのクラスが対象になったのだ。

2011-01-18 21:54:43
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

皆がボクを憎んでいる。ボクのサラミを狙っている。そんな焦りが耳鳴りに霞む弥堂の思考を支配していた―その時。絶え間無い耳鳴りがぱたりと止み、代わりに、新緑の芝生のような、芳しい風が頬を撫でたような感覚があった。『…、おい…おいwww』聞こえた声はどこか懐かしく、弥堂は足を止めた。

2011-01-18 22:06:04
垣内隼介 @kakiuchiyoppa

無意識のうちに、呟いていた。いや、呟いたのではない。口は動かさず、心で返答した。「…はい、フキヤ・マズダ様。」 世界が、輝いて見えた。弥堂はこの時見つけたのだ、自分にとっての絶対神、唯一無二の存在を。(残り33人)

2011-01-18 22:06:28