よいこ大賞2015　作品のみ

遥飛蓮助★冬季休業中 @szkhkzs

ヤギが手紙を届けるなら、アリは物語を運ぶ。初々しい葉物語。愛らしい蜜物語。どれも素敵だけど、スズメバチの戦物話はハラハラドキドキ。敵の亡骸を背に、大人は子供達に語る。外の世界の素晴らしさ、厳しさ、優しさ。それらを次の子供達へ語り継ぐため、アリは今日も物語を運ぶ。 #twnovel

遥飛蓮助★冬季休業中 @szkhkzs

#twnovel 星々が衝突し、混ざり合い、大小様々な月が生まれた。どれぐらいできたかって、布教用・観賞用・保存用として買えるぐらいと言えば察しがつくだろう。「じゃあ、おほしさまはどこにいったの？」首を傾げる娘。その瞳に住む兎も望遠鏡から僕を見つめ、長い耳と一緒に首を傾けた。

春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

#twnovel 今年のクリスマスプレゼントは、小さなドラゴン。4枚の羽で飛んで、僕の手のひらにちょこんと乗る可愛いやつ。お世話は簡単だけど、散歩は少し大変。絶対に首輪とリールリードを着けないと。野良ドラゴンを勇者がすぐに退治してしまうし、魔法使いに捕まると道具にされてしまう。

春木のん🪄ふしぎなアンソロ @Haruki_Non

#twnovel 寒い朝は離れたくない。羽毛のように柔らかく、ふんわり抱きしめる私の睡魔さん。まだ外は暗いから、もう少し、あと少しと私を引き留める。夜が一番長くなる日が近づくに連れて、あなたはとても甘えてくるのね。その誘惑に、私は勝たなきゃならないんだけれど。今日もちょっと負け。

リュカ @ryuka511

怪盗の予告状にはいつも真新しいスペードのAのカードが使われていた。だがある夜、探偵の部屋に舞い込んできたのは血塗れのスペードのA。殺しは決してしない奴が、一体何を?この血はまさか。嫌な予感に探偵は外套を掴み立ち上がる。無事でいろと願いながら、探偵は夜の街を走る。 #twnovel

wacpre @wacpre

ドラゴンを拾ってきた。餌代がかかると叱られると思ったけど、おこづかいを減らされただけ。手を伸すと噛みつかれるか火を吹かれるか。そんな日々だって威嚇からじゃれあいへと変わってきた。最近はちょっとした距離なら背中に乗せてくれるようになったから、次は旅に出るのが目標。 #twnovel

wacpre @wacpre

おじいちゃんの家に行きました。でも、おじいちゃんはいませんでした。遠くにいったとみんなは言います。あいたいと言うとおばあちゃんが遠くのおじいちゃんとお話ができるほとけさんの前に連れていってくれました。たくさん話しました。ねているのかおへんじはもらえませんでした。 #twnovel

黄金の米菓子 @OK_1111

#twnovel 名前で呼んでほしい。それが男の願いである。肩や膝に手を置かれる仲でも名字で呼ばれ距離を置かれる。どっちも同じじゃないと笑われ違いを訴えては死んでよと言われた。消えたい。死にたい。やがて本当に消えたり死体同然の振る舞いができるようになった。男の名はドロン・ドロン。

氷月みまり（はしー） @risemimari

#twnovel また庭に猫が。猫は好きだけど糞をされたら嫌だから追い出すことにしてる。コラ！って私が言っても慣れた猫たちは涼しい顔。可愛いけど悔しい。どれどれと同居人がやると、すぐに出ていく猫。秘訣を尋ねると、簡単だよ撫でてやるぞって顔をして近寄ればいいのさ、と寂しげに答えた。

黄金の米菓子 @OK_1111

#twnovel ノーパンマン。私はそう呼んでる。客の耳かきをしていた時に米粒大の彼はその穴から現れた。殴らない。履かない。裸マントで人々の耳の穴を自由に行き来し世界を見守る。マントも取れば。私が言うと彼はヒーローだし変態じゃあるまいしと拒む。十分変態。でも好き。好きよ。大好き。

にゃおっく @_nyaok

#twnovel ある日ふと、交差点の車中で、今自分が夢を見ているのだと気がついた。信号機が青から赤になった瞬間だった。「ママどうしたの？」「なんでもないわ」と、助手席の少女に答える。何年経っても覚めぬ夢。あの日以来、見上げた信号が赤色に変わる度にいつかの現実に思いを馳せている。

結城 希@低浮上 @YukiNozomu

#twnvday 「こうして王子様は村娘と結ばれ、一人の子どもを授かって幸せに暮らしました」母は幼い娘に絵本を読み聞かせていた。「三人はどうなったの？」「さあね」もっと話して、とせがむ娘を諭す。「続きはあなたが作る番よ」王妃様、そろそろ。と、外で従者の声がした。 #twnovel

結城 希@低浮上 @YukiNozomu

「警部、死体です」後輩刑事が言った。確かにそこに死体があった。慎重に確認すると、服装と髪型に見覚えがあった。顔を見て、予感は確信になった。「俺じゃねえか」「そうです。今の警部は幽霊です」私は部屋の奥を指さした。「あっちの倒れている男は…？」「あれは僕の死体です」 #twnovel

水木ナオ @nayotaf

コタツから出た兄貴を見て「ファスナー開いてんぞ」と笑ったら、キャーエッチ、と戯けてズボンのファスナーを上げた。それはよしとしよう。その時俺は見たのだ、その兄貴の後ろ、コタツの上で丸まっていた猫ががばりと起き上がり、自分の背中を確認するのを。お前まさか、猫を被って #twnovel

水木ナオ @nayotaf

祖母が天寿を全うしたそうだ。どこかに出かけようとしたのか、余所行きの服を着て、綺麗に化粧をしたまま家の中で倒れていたのだという。祖父に先立たれてから一度も化粧などしなかった祖母。きっと彼女は今日、だと悟ったのだ。そして祖父との逢瀬のために、唇に紅を引いたのだ。 #twnovel

松原凛 @monaco24665952

深夜の寝室に唐突に響き渡る叫び声。もうかれこれ二時間もこれの繰り返し。その度飛び起きて、くらくらする頭でそっと髪を撫でる。やがて泣き声が寝息に変わってふと横を見ると安心しきった我が子の寝顔。嫌になることもあるけれど、この瞬間が一番の幸せ。 #twnovel

松原凛 @monaco24665952

太陽の匂いがすると君は布団を抱きながら言った。そうかと頷いた僕はよくわからなかったけれどなんとなく覚えていた。久しぶりによく晴れた午後に干したあたたかい布団で僕は眠る。今ならわかるよと伝えたい君は隣にいないけれど、いっぱいに広がる太陽の匂いに包まれている。 #twnovel

くまかめ。 @gaptgapt4278

沢山の女の子達に追われ逃げ回る僕。 身を潜めた公園で、夥しい数の羽虫の塊が宙に浮いているのを見た。 「ああ、お前も」 近付いてみるとそれは蜘蛛の巣で、巣の主は巨大な獲物達に押し潰され苦しそうにもがいていた。 あの神様は、この道を通ったに違いない。 #twnovel

くまかめ。 @gaptgapt4278

「君と共に戦えた日々を誇りに思うよ。君に会えて良かった」 時限式拘束装置で身動きの取れない僕。 あああ、油断した。 「日本の米はとても美味しかったぞ」 雀頭の紳士は笑う。 格好良いのに最高に間抜け。 遠くの空一面に広がったザルを見上げ、彼は一人で、僕を置いて。 #twnovel

SAIKI @saiki_vc

雨の日はココアと決まっている。牛乳にココアパウダーと角砂糖を二つ。眉をひそめて甘すぎやしないかと聞くと決まって「これが美味しいの」#twnovel そう言って笑う彼女はもう居ない。雨が降り続ける。角砂糖が二つ入ったココアは酷く苦い。

SAIKI @saiki_vc

「待っていたのよ、ずっと」目の前の美少女が微笑む。彼女にはつい先程道端で声を掛けられたばかりで、私は見覚えがない。「待っていたの、 」鈴が転がるような声で私を呼ぶ。当然名前を教えてもいない。「行きましょう？」右手を掴まれる。その手は驚くほど冷たくて。#twnovel

らし @rashi_catwillow

#twnovel 赤信号はいいました。「ヘイ！忙しい中立ち止まってくれてありがとう！君たちは僕が嫌いかもしれないが、僕は君たちが大好きだ。少しでいいから、その顔をよく見せてくれ」誰にも聞こえてはいませんでしたが、赤信号は満足でした。「サンキュー」そっと呟き、彼は青と交代しました。

らし @rashi_catwillow

#twnovel 激しい雨が降る晩に、私と金魚は入れ替わる。金魚は赤いワンピースの少女になって夜の街へ。私は金魚鉢で、全てを忘れてゆらゆら眠る。明け方、火照った顔で朝帰りした金魚は、「人間ってすごくいいね！」と熱っぽくいう。私は水から這いだして、（また人間を続けてみるか）と思う。

せら@hs @hswelt

一月が訪ねてきた。あちこちで歓待を受けていたらしく、ふくよかである。ストーブに新しい燃料をくべて、餅を焼いてやる。一月が言う。昨日は汁粉、一昨日は雑煮、柚と一緒に漬けた香の物が添えてあることもあった。海苔も捨てがたい。ふくよかの原因が分かる。今日はきなこだ。 #twnovel

23時の夢物語 @23novel

#twnovel 人魚姫は本当は泡にはならず、愛を捧げた王子と結婚しました。けれど真実の彼女は言い伝えの中で殺されました。国を支える大事な王子が謎の生き物と結ばれた事実を隠さねばいけなかったからです。国が滅んだ後、彼らの子孫は世界に広がり、今もどこかで無性に海に焦がれています。