[本格怪奇体験ビデオ 残刻村を覆う影 未来編2 幕間][ザ・スリーピング・パスト]
- kosn_ninja
- 925
- 4
- 0
- 0
軌道エレベーターのごく静かな駆動音と共に、特殊強化ガラスに透けて見える景色がぐんぐん上昇していく。ひたすらに黒い闇、遥か下に見える雲。たろりんは肩の傷口を押さえながら、エレベーター内部よりチュパカブラ皇帝都市を見上げた。 #ksnjtk
2015-11-28 22:41:15初めてそれを見た者は真っ先に、逆さにした首の長い丸底フラスコを思い浮かべるだろう。チュパカブラ皇帝都市は5万mの軌道エレベーターで地球と繋がる神殿にして行政区画だ。その王座に座すキング・オブ・スペース・キングス・チュパカブラが行政方針を決め、独裁的に可決させる。#ksnjtk
2015-11-28 22:45:56だが、極めて独裁的でありながらもチュパカブラ王は200年間失態を晒した事がない。何故なら、地球上の生物は誕生の瞬間から、死に至るまでチュパカブラ王によって全て監視され、彼の不都合な要素にならぬように徹底的に管理されているからだ。故に王の失態を国民が知る事はない。 #ksnjtk
2015-11-28 23:39:50人生はパッケージングされ、工場の流れ作業のように全てが進む。誕生、入学、適性検査に則った進路、職場、結婚、給料、定年、老後。それら全てを王が采配し、国民に選択の権利をもたせているように見せかけて、王が全てを選択し、民を自由の残酷さから守り続けている。#ksnjtk
2015-11-28 23:43:18そして、未だ地底に潜む人間という敵を国民に認知させ、警戒させる事で、平和の中で人々が腐る心配すらも取り除いている。選択する必要のない管理社会、チュパカブラ全員が手を取り合い、人間という共通の敵に立ち向かう為に助け合う。まさに理想の世界だ。 #ksnjtk
2015-11-28 23:45:28…ピンポン。電子音と共にエレベーターの扉が開いた。チュパカブラが手に入れた青い星を眺めつつ、外に出る。たろりんは寄り道せず、そのまま真っ直ぐにチュパカブラ王の神殿に向かう。コセン・ニンジャの帰還は最重要連絡事項だ。しばらく歩くと、神殿が見えてきた。 #ksnjtk
2015-11-28 23:49:39自由は選択を伴い、選択は責任を伴う。その責任を背負い切る能力を持つ者は限られている。そう、地の文の言うとおりさ。この完全な管理社会は、偉大なるキングの慈悲なんだよ、コセンくん…… #ksnjtk #なりきり
2015-11-28 23:51:37古代ローマの建築方式を模したという、白い神殿。そこらかしこに彫刻が並び、芸術的な噴水が設置されている。たろりんはそういった事に詳しくなかった。この200年間、ひたすらイレギュラーを排除する為に剣を振り続けてきたのだ。警備チュパカブラにIDを提示し、中に入る。 #ksnjtk
2015-11-28 23:55:00夜の帳めいて真っ青な絨毯の敷かれた廊下を歩き、玉座の間へ向かう。その時、すれ違った一匹のチュパカブラがたろりんに言った。「おいたろりん、あんたがたった数人のイレギュラーにやられたってのは本当か?」「関係のない事だ」たろりんは足を止めず、無視して通り過ぎようとした。 #ksnjtk
2015-11-28 23:58:41「おいおい、『太陽喰らいの黒剣士』と言われたあんたが、まさか数人のイレギュラー如きに遅れをとるわけねえよな?」そう言って、暗殺者チュパカブラはたろりんにレーザー拳銃を向けた。「…どういうつもりだ?」たろりんは振り返らずに言った。 #ksnjtk
2015-11-29 00:01:29「いや?ただ、数人のイレギュラーの排除もろくにできない、200年前のアンティークなんざ、ここで撃ち殺した方がいいと思ってな」このチュパカブラ皇帝都市内では、宇宙の支配者たるチュパカブラ王に取り入ろうと、様々な陰謀が渦巻いている。 #ksnjtk
2015-11-29 00:06:25