いきものがたり『第8回』

まとめました。
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水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

2016年3月15日の、デビュー10周年にむけて。 連続ツイート企画 【いきものがたり】 不定期更新です。 (前回までのツイートは水野のアカウントの「いいね」からご覧頂けます。)

2015-12-15 16:12:15
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

『第8回』 今日の1枚。 路上ライブでの3人。二十歳すぎ。 pic.twitter.com/Cbb4DxAdBm

2015-12-15 16:13:32
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水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(144) 厚木のライブハウスで、僕らを”発見”(?)した初代マネージャーは、しかし、すぐさま自分たちに声をかけてくるわけではなかった。ライブハウスの店長には興味があることを伝えていたようだったが、僕らがそのことを知るのは、もう少しあとのことだ。

2015-12-15 16:14:25
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(145) なので、1年ほど環境は変わらず、自分たちだけで活動をする期間が続いた。小田急線沿線を中心に、路上ライブで名前を売りながら、数ヶ月に1回、サンダースネークでバンドスタイルのワンマンライブを行う。

2015-12-15 16:15:47
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(146) 本厚木、海老名、相模大野、町田、新百合ケ丘、小田急多摩センター、藤沢、小田原、横浜、桜木町。路上ライブをした記憶がある駅は、上記の通り。この他にもあったかもしれないが、いま思い出せるのは、このくらい。

2015-12-15 16:17:34
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(147) 高校時代以上に、頻繁に路上ライブをするようになっていた。3万円くらいの小さなアンプスピーカーと、4トラックくらいだったろうか、これまた安いミキサーをお金を出しあって買った。ギターと少ない機材を山下の車のトランクに積め込んで、3人で各駅をまわった。

2015-12-15 16:19:14
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(148) スピーカーを使って、マイクで吉岡の声を届ける。とても当たり前のことのようだけど、これが水野、山下の曲作りには少なからずの影響を与えた。高校時代は、マイクを使わず、いわゆる”生声”で路上ライブをしていた。そこには難点があった。

2015-12-15 16:19:42
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(149) 雑踏のなかでの”生声”は、そう簡単にひとに届くものでもない。たとえばバラードを歌ったとき、高い音域の音は、声を張って歌うことができるので道行くひとにも聞こえるが、Aメロなどの部分での低い音域の音は、かき消されてしまう。路上ライブにおいて「聞こえない」ことは、致命的だ。

2015-12-15 16:21:17
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(150) だから吉岡が”生声”で歌っていた頃は、水野と山下はなるべく彼女が声を張って歌えるよう、高い音域のなかだけで歌をつくることに四苦八苦していた。それがマイクを使えるようになった途端、低い音域でも道行くひとの耳に届くようになった。これは、二人にとっては大きなことだった。

2015-12-15 16:23:06
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(151) なんせ競技場が広くなったようなもので。いままで内野しか使えなかったのに、外野まで使って自由にメロディを作っていいよ、と言われたようなものだ。二人は喜んで曲をつくった。山下とは「あれは、俺らにとって革命だったな、あはは」と冗談半分で話すことがある。

2015-12-15 16:25:02
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(152) 「使える音域に制限がある環境」「歌うのが自分じゃなくて他人(しかも異性)」「曲作りの競争相手が目の前にいる」というような、なかば職業作家的な条件で、曲作りを覚えていったのは、よく言えば、自分たちを成長させるためには良かったのかもなと、いま、つくづく思う。

2015-12-15 16:26:32
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(153) 路上ライブミュージシャン独特の、「場の空気をつかむ」感覚がついていったのもこの頃だ。別にグループ名にかけたシャレではないが、もはや「動物的」とも言える感覚が当時の僕らにはあった。演奏をしている目の前の、空気を読んで、ライブをする力だ。

2015-12-15 16:28:00
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(154) 当時、路上ライブはまったく曲順などを決めずに臨んでいた。ライブ中に、その場で話し合う。だが、ある時期から僕らは、ライブ中にも曲順の相談をしなくなった。嘘のような本当の話なのだけど、目の前の客を見れば、次やるべき曲がなにかわかるのだ。話さなくても。

2015-12-15 16:29:35
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(155) たとえば10人のお客さんが目の前にいるとして、それが全員女子高生なのか、家族連れなのか、会社帰りのサラリーマンなのか、バラバラなのか、それでその場に生まれる空気は全然ちがう。客層だけじゃない、客の立ち位置でも、距離でもちがう。それによって適する曲は変わってくる。

2015-12-15 16:30:07
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(156) 30mくらい先で、ひとを待って携帯を見るフリをしながら実はライブを聞いているひと。というのを見分ける力もあった。数十mも先に立っているひとに、吉岡が突然ピントポイントでチラシを渡しに行って「え、なんで聞いてるってわかったんですか」と驚かれることもあった。

2015-12-15 16:31:46
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(157) だいたい目の前がどんな雰囲気で、いま自分たちの持ち曲の、どの歌がこの場に適しているか。3人の感覚はあの当時は本当にシンクロしていて、軽く目配せをし「ああ、次はこの曲だな」とちょっとうなづき合うだけで、ライブを進行していた。

2015-12-15 16:33:01
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(158) だからライブハウスでの対バンイベントにたまに呼ばれるようになった頃は戸惑った。他の出演者のバンドが、客の空気をまったく読まないで「手をあげろよ!」「もっと前に来いよ!」と、強い煽りをする場面に出くわしたからだ

2015-12-15 16:34:41
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(159) それじゃ、お客さんが聞き辛いだろうと僕らは思ったが「なんで、お前らは手拍子を煽らないんだ?」と逆に不思議がられることの方が多かったと思う。「客をもっと盛り上げなきゃ!」とはよく言われたが、肝心のお客さんは、それを求めている空気ではない。うまく理解できなくて戸惑った。

2015-12-15 16:36:20
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(160) 路上ライブとライブハウスの文化は全然ちがう。路上ライブは場を”読む”文化。ライブハウスは場を”つくる”文化。乱暴にまとめればそんな風に思えた。どちらが正しいというわけでもない。その文化の違いに最初は戸惑ったが、その両方を知ることができたのは、良い経験だった。

2015-12-15 16:37:35
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(161) 事務所に入ったのちも、大学在学中はずっと路上ライブを行っていた。しかしピークの動物的とも言える路上の空気を読む力は、不思議と消えていった。バンドスタイルのかたちでライブハウスで演奏することが、多くなっていったせいかもしれない。自分たちのライブ感覚が変化していったのだ。

2015-12-15 16:39:19
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(162) ライブハウスでの動員は少しずつ増えていったが、路上ライブではひとが集まらなくなっていく。すごく不思議な感覚だった。デビュー直前の冬、横浜駅で路上ライブをした。デビュー曲となる「SAKURA」を演奏していたが、立ち止まったくれたお客さんは、なんと女子高生たったひとりだ。

2015-12-15 16:40:52
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(163) やっと立ち止まってくれた女子高生ひとりに、必死で「SAKURA」を聴かせようと歌っていたら、よろよろと酔っ払いのおじさんが歩いてきて、その場にストンと倒れた。コツンと地面に頭を打った。近くのひとが救急車を呼んだ。もうそうなるとライブは続けられない。それで終わり。

2015-12-15 16:42:20
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(164) 実は、これがいきものがかり最後の路上ライブの顛末だ。その日から、本当の意味での路上ライブは一度も行っていない。

2015-12-15 16:43:07
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(165) 路上ライブというスタイルが背負う条件というものがあって、それが自分たちが音楽を届けるときのスタンスをかたちづくっていった。「客を選ばない」「客がそっぽを向いているところからスタート」僕らがポップをより強く志向していった理由は、路上の経験を抜きにして考えられないと思う。

2015-12-15 16:45:55
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

今日はここまで。乱文、お粗末様でした。次回は『第9回』。

2015-12-15 16:46:44