加賀さん観察日記 Part30

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キタユキ @k_t_y_k

後ろからは妹の秘書艦と、護衛の艦娘達がぞろぞろと降りてくる。会ったことのある艦もない艦も混じっているが、気温一桁の寒気の中ではなく暖かい室内で親睦を深めてもらうことにした。感謝の意を示してヘリに敬礼を送ると、搭載された人工知能はライトを点滅させて応じる。 #加賀さん観察日記

2015-12-31 23:30:44
キタユキ @k_t_y_k

妹と二、三言今日は寒いとか明日からどうするだとか、部屋はどこを使えだとかについて交わし、風邪をひくからと先に建物の中に入れた。扉を開くと入れ違いで加賀が顔を出し、妹に軽く会釈をしてこちらに向かってくる。用事でもあるのか、と聞くと静かに喉を鳴らして横に立つ。 #加賀さん観察日記

2015-12-31 23:40:18
キタユキ @k_t_y_k

「鐘の音が聞こえなかったので」 加賀は山の方角に眼を細める。まだ数分あるぞ、とさりげなく伝えると、そうですか、と単調に返ってくる。寒いから中に入ろう、と促すと、一歩分だけこちらに身体を寄せてきた。加賀の頭に手は届かないので、背中を撫でてやる。ほんのり暖かい。 #加賀さん観察日記

2015-12-31 23:44:30
キタユキ @k_t_y_k

今年は色々あった。長らく入院してた妹は超元気になったし、なんか世界が滅びかけてたのもなんか知らん間に直ってた。一々ちょっかいかけてくる奴も改心した。激動だった。海外に出て数ヶ月鎮守府にいなかった。色んな奴に指輪渡した。その他諸々。輪をかけて大変だった。 #加賀さん観察日記

2015-12-31 23:49:00
キタユキ @k_t_y_k

多分、来年ももっと色々あるだろう。鎮守府で暮らすのもそろそろ3年目……4年目?に突入する。いくつかの艦も盛りを過ぎていくだろうし、私も老いていく。その分、若い艦も生まれて、入ってくる。日常は繰り返しだが、少しずつ入れ替わり、新しくなっていく。 #加賀さん観察日記

2015-12-31 23:52:26
キタユキ @k_t_y_k

なら、提督として、百数十体いる艦の生活を管理するものとして、奴らが快適に過ごせるように変えていくだけだ。思えば随分、暮らしぶりも艦娘達への認識も変わったと思う。彼女らが道具であるという根底は変わらないが、遠慮の箍が外れて一層強く愛着を持つようにはなった。 #加賀さん観察日記

2015-12-31 23:54:38
キタユキ @k_t_y_k

隣にいる加賀も人間の年に換算すれば30を過ぎて、四十路に届くぐらいになる。少し前まで私と同じぐらいだったのに、すぐに追い越されていく。前より一緒に居てやれる時間も短くなっていく。こいつは何も考えてないのうな顔で、短い時間をゆったりと寛ぎ、消費していく。 #加賀さん観察日記

2015-12-31 23:57:38
キタユキ @k_t_y_k

ようは来年も頑張って鎮守府で暮らしていこうな、というアレコレなので、まあ、気楽にやっていきたい。ところで除夜の鐘の音よりも、江風の奇声の方が大きいのだが。そろそろ日付変わるのだが。あいついつまでやるんだ。 #加賀さん観察日記

2015-12-31 23:59:10
キタユキ @k_t_y_k

元旦。例年通り「ゲイ♂春」と称し、褌とパンツ一丁で門松にダイレクトライドしようとする明石と大鯨を止めることに労力を使うだけの1日だった。いつもならほったらかしておくが、今年はそうもいかない。来客がいる。というか、妹と彼女の第1艦隊達が来ている。 #加賀さん観察日記

2016-01-01 22:56:35
キタユキ @k_t_y_k

「何故止めるのです!奥ゆかしい日本の伝統♂文化ですよ!」 「私も心苦しいですが、今年のゲイ春行事は見送ります」 師匠格である龍鳳に抗議する明石と大鯨。二人ともライド姿勢のまま、発展的前後をしないよう縛り付けられている。 「アメリカは哲学の本拠地でしょう!」 #加賀さん観察日記

2016-01-01 23:01:14
キタユキ @k_t_y_k

「それでも、我々には場を弁えなければならないことだってあります。ご覧なさいーー」 龍鳳は向かいの応接間を指す。埃っぽく、所々の壁にひびが走る鎮守府内で唯一整えられた部屋では、軍装の大型艦と談笑し、メイドに紅茶を次いでもらう少女……提督の妹の姿があった。 #加賀さん観察日記

2016-01-01 23:07:26
キタユキ @k_t_y_k

「あの方々が哲学を嗜むように見えますか?」 龍鳳の問いかけに、大鯨は口を噤む。明石は目を細め、一人一人を舐め尽くすように見回すと、咳払いをし、 「あのメイド、絶対レズですよ」 したり顔で呟いた瞬間、空を切り裂いてケーキナイフが明石の額に命中した。 #加賀さん観察日記

2016-01-01 23:09:59
キタユキ @k_t_y_k

打って変わって応接間では、ロングスカートのメイドが左の金目をギラつかせ、向かいの部屋への武器投擲を終えたにも拘らず右の指先まで力を行き渡らせていた。 「レナウン、どうした」 「失礼。不純同性行為の気配を察知致しましたので」 「ここなんか凄い多いらしいよ」 #加賀さん観察日記

2016-01-01 23:15:27
キタユキ @k_t_y_k

「……お嬢様、もし宜しければお兄様とお話しさせていただきたいのですが」 レナウンと呼ばれたメイドは主人に向き直り、頭を垂れる。話の流れが読めない妹はきょとんとし、横に座っている豪奢な英国式軍服を身にまとう艦娘はおかしそうに笑う。 「笑い事ですか、ロドニー」 #加賀さん観察日記

2016-01-01 23:32:08
キタユキ @k_t_y_k

「いや、折角我々の主人が念願叶って実の兄の元を訪れたというのに、あなたはまるで姑のようだと思って」 「ご忠告感謝致しますわ」 爽やかに笑うロドニーに、レナウンは和かに笑み返す。が、本心からの笑み返しでないことは固く握り締められた拳が物語っていた。 #加賀さん観察日記

2016-01-01 23:40:17
キタユキ @k_t_y_k

「あれどこの艦?」 「たぶん゛、イギリス……」 「ボクたちとは生産ラインも何もかも違うんだって」 「駆逐艦の子もいるのかなあ?でも睦月、イギリスの子あんま知らないにゃし」 「アメリカの子はきてるって」 「さっき見゛た」 「えー、どんな子!?どんな子!?」 #加賀さん観察日記

2016-01-01 23:46:31
キタユキ @k_t_y_k

睦月・皐月・望月は応接間をちょろちょろと覗いてはひそひそ話をしている。今回客人の釣れている艦娘は日本で製造されていない英米の艦ばかりだし、彼女らの好奇心を掻き立てるのも無理はない。幸い、神経質なメイドの巡洋戦艦は睦月型のチビ達は見逃しているようだった。 #加賀さん観察日記

2016-01-01 23:50:02
キタユキ @k_t_y_k

【捕捉】 度々登場する妹側の所有艦は、戦艦少女に登場する艦娘の容姿・設定に準拠していますが、中国語・英語の台詞から口調・性格を憶測している為、ほぼ独自解釈の二次設定です。ご了承下さい。画像はレナウンとロドニー。 #加賀さん観察日記 pic.twitter.com/H0V2DN49Rv

2016-01-02 00:02:58
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