【名も無き変幻】"ジョン・ドゥ"について
- kiwifox_deseo
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奴は沈黙した。 奴は、間違いなく、完膚なきまでに滅びたのだ。 息を、吐き出す。 「終わっ、た……」 終わったのだ。奴も、今までの私も。 私はその場を後にした。奴の混沌核など、欲しくはなかった。
2015-12-25 23:28:27ワゾーが去った後も、"ジョン・ドゥ"と名乗る人物の遺体はそこにあった。 その遺体は、服や得物ごと、夜よりも更に黒い液体と化す。 やがて液体は覆面の形をとって固まり、周囲の混沌を吸収していく…… #名も無き変幻
2015-12-25 23:30:21「最近あのお宅の旦那さん、見ないわね」 「奥さんもお子さんも最近見ないわね。なにしてるのかしら」 「なんでも、ちょっと家族旅行に行ってくる、って言ってたけど。あれからもう1週間よ」 「本当? 随分遠くまで行ってるのね。魔物に襲われていないといいけど」 → #名も無き変幻
2015-12-26 20:07:38「それに最近、野良猫見ないわね」 「私、野良猫を捕まえている人を見たわよ。やたら黒い服を着てて。仮面を付けて。男の方か女の方かははっきり分からなかったけど。町外れの空き家に入っていったわ」 「怪しいわね」 「野良猫捕まえて何するのかしら」 「不気味よね」
2015-12-26 20:08:13「ねえ、この国に殺人鬼がいるらしいよ」
どこかの街角にて。
「殺人鬼は変装の名人なんだって」
「誰にでも化けられるって聞いたわ」
「殺人鬼はターゲットのよく知っている人に化けて、油断させてから殺すらしいわよ。家族とか、友人とか」
「怖いわねえ」
「そういえば、隣町で、なんとかさんっていう家の家族全員が殺されたって聞いたけど」
「なんでも女や子どもまで、バラバラの惨殺死体で見つかったらしい」
「その家の主人はとてもいい人で、別に恨みを買うような人じゃなかったらしいわよ」
「奥様方も主人によく尽くしてて、お子様も近所でもいい子だって評判だったとか」
「やっぱり殺人鬼のしわざかしら。怖いわねえ」
「そういえば、その家、猫を飼っていたらしいんだけど、どうも家族が殺される前、その猫が殺されていたらしい。全身をめった刺しにして」
一匹のどす黒い猫のような何かが、彼らの話す様子を見つめていた。
名も無き変幻の理想郷。
姿も無き変幻の理想郷。
命も無き、変幻の理想郷。