喪失の痛みや 胸の洞からあふれる苦しみが取り除かれれば 楽になるのだろうと 幾度考えたかしれない でも私から苦しみや痛み 悔しさが消えてしまったら 私という存在も消えてしまうだろう この手で握りしめるんだ このはらわたで感じるんだ 逃げないで生きていることを #透明を翳す
2016-01-02 02:46:27大切な想いはちゃんとしまい込んでいて、零さないように胸にある。時々取り出して見ているそれは、眩しいほどにきみに向かっていて切ない。わたしを支えるもの。これがあれば大丈夫、伝えることなく、遮断したまま、そっと慈しむ。生きてゆけるよ、心配なんていらないの。 #透明を翳す(遮断)
2016-01-02 07:27:51掌の穴を、塞がなくてはならなかった。ヒカリは遮れず、注がれた水をこぼし、心から欲した大切さえ通り抜けていってしまうから。塞がなくてはならなかった。 そう、たとえば、硝子を嵌め込んで。わたしの欠落はそのままに、あなたに触れられたのなら。なんて、そんな、戯言。 #透明を翳す
2016-01-02 16:13:08時計の音だけが聞こえる。「なに?」私のその声はまるで試すように。間に流れる見えない何か。彼は、答えの代わりに私の肩を掴む。部屋の電気は、まだぼんやりと明るい。ここから先は、いけない道。私は迫る彼の口元を塞ぐ。 #透明を翳す 遮断
2016-01-02 21:15:36これはなぁに?すぐ目の前の縁側に出られないのはなぁぜ? 閉め切ったサッシ戸の前で戸惑う子猫は、開けて貰うと安心して足を踏み出す。尻尾をぴんと立てて。傍にい乍ら遥かに遠い。見えてい乍ら触れられない。どこからか魔法の手が伸びて、二人の間のサッシ戸を開けてくれないかしら。#透明を翳す
2016-01-02 23:03:43挿し込んだ言葉。あなたを狂わす。 電線に吊るされた遺骸はわたしのもので、垂れていく純情は錆びていく。 射し込んだヒカリ。あなたを殺す。 (嗚呼、本当に逝けたらよかったね) #透明を翳す 01/03︰刺殺
2016-01-02 23:19:34笑みが消える。視線が落ちる。遮られた五感の内で、脈打つ痛みが血管を流れる感触だけに囚われる。爆発の恐怖で強張る四肢で膜を破ることは叶わず、空転する焦燥も虚しくそれは脳まで届き、侵した。 #透明を翳す 【遮断】
2016-01-03 00:02:19消費された言葉が泡になって、キミを苦しめていた。想いは涸れず溢れるのに、足らないとキミは嘆くから、掬ってあげなければならなかった。 水底。沈んでしまったねと嗤うなら、焼け付いてる焦燥感を融かして。無力な両腕を突き刺す透明ナイフ、抜かなくていいから。慰めてよ。 #透明を翳す
2016-01-03 12:52:36足掻いて、藻掻いて、そのたびに指先は裂けるから。唇でそれを拭っていた。傍らの少女はそれを見て、いつだって愉悦に濡れて。頬に触れれば、愛おしげに目を細めた。 嗚呼、なんて、なんて歪な、拉げた僕等だ。こんな形でしか報われないならいっそ、透明を翳して。死んでしまいたいよ。 #透明を翳す
2016-01-03 12:57:56張り裂けた喉から伝った血の筋、地面に垂れて酸化していく。届いてくれよと声を荒げても虚しく声帯が痛むだけだ。嗚呼、欲しいものはいつも少し届かない。 力尽きて飲み込んだ言葉は硝子色。切り裂いた喉から零れた吐息の色。 #透明を翳す
2016-01-03 16:46:31ガラス越しに見る空は青く、太陽は眩しい。あぁ、こんなのわたしには似合わないよ。そのガラスで両の目を刺して潰せば、わたしにお似合いの幸せが作れるのだろうか。もう、何も見たくないよ。 #透明を翳す
2016-01-03 20:03:46きみの言葉にすがらない為に わたしの瞳を深く刺した 重い想いは断ち切れて きみは自由になれるよ、ねえ。 (きみの澄んだ目が好きだったよ) #透明を翳す(刺殺)
2016-01-03 20:44:56いつしか見えなくなっていた。大切だったはずの何か。大切なものは目に見えないなんて誰が言ったのか。 僕の目にはその姿が、耳にはその音が、鼻には匂いが焼き付いて離れない。 奪ったのは誰なのか。ギラつく刃を振り翳しその姿を追ったんだ。 辺りに景色は匂いは赤かった。 #透明を翳す
2016-01-03 23:05:15海洋生物の恋人を、水槽に飼っている。いつだってガラス越し、言葉にならない詩を歌って。僕の体温で火傷する君の肌を憂いた。 いつか、いつかいつか、僕も海に還るとき。悠久を生きる君のそばで朽ちれたらと、願うよ。 #透明を翳す
2016-01-04 02:49:43晴れやかな朝。 追いかけてくれる人も追いかけるものもないから。 身軽なわたし。 淋しい、意味のないわたし。 目はうつろ、だった。 だけど傷つかないこと傷つけないことを選んだのもわたし、だった。 もう、心から笑うことなどなく。 #透明を翳す (喪失)
2016-01-04 07:46:26「××××××××!」 お決まりのセリフを花束で散らして。降り注いでは、満たされた顔した他人。それを拒むことははみ出すことで、けれど受け容れるのもまた、怖くて。曖昧に笑ってみせた。 わたしに強さがあるのなら、たとえば、透明ナイフをのような怜悧さで。切り裂けたかしら。 #透明を翳す
2016-01-04 18:02:34「満たされている」 確かにそう感じていた、はず だったのに いつも無意識に 発するこの言葉に、振り回すこの手に 見えない刃を仕込んでいた 「ごめん、さよなら」 いつか告げる言葉のための 自己保身の予防線 いつだってそのせいで 大切だったものを失くしている #透明を翳す (喪失)
2016-01-04 18:30:14陽が眩しくて瞼を伏せた。 気づけなかったのだ。 透明を通して暖まる場所。 ぬるま湯に浸かったような心。 優しさが、見えたならば、よかった。 #透明を翳す その身を落とすのは、僕の手だ。 よく見ていれば、よかった。 目を凝らしても半透明にしかならずに、 冷たさに震えるのならば。
2016-01-04 19:46:05ひとりばかり追いかけて今。ふと赤子のように泣きたくなる。媚びたいわけでも助けてほしいわけでもなく。お腹の辺りでもやもやとした何かがいて。口先は気紛れにあなたを傷つけている。もう、つかれたの。 私を隔離して、 思考の海に溺れたい。 #透明を翳す
2016-01-04 22:21:10