ねこぜさんが書いてくださったSS

新米のガキエレの指導係になる話。 侵攻編攻略中。
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ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

ギルドからエレゼンの教育役を頼まれ、イケエレだぞと言われて涎ダラダラで現地に向かったら童顔のガキエレで全力ガッカリするんだけど、時が経つに連れて段々と距離が縮まっていっていく話下さい。

2016-01-12 08:13:55

邂逅編

ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

「実は…ある冒険者の指導役をお願いできないかと思ってね」 グリダニアの冒険者ギルド、その窓口でもあるカーラインカフェの主ミューヌは、カウンターへ座る一人のララフェルへこう切り出した。 「指導…?構いませんけれど、どうして私なんですの…?」

2016-01-12 08:32:19
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

深い青色の瞳でミューヌを見つめながら、会話の相手であるララフェル、ククル・クルは続ける。 「冒険者としての技量なら、私よりも適任な方が他にいると思うわよ」 やはりそう来たか、と言わんばかりの苦笑を見せるミューヌ。だが、彼女にはこのララフェルを口説き落とす為の最高の材料があった。

2016-01-12 08:37:53
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

「本人からの希望もあって公に募集は出来なくてね。余り忙しくない連中で、その中でも一番腕のいい冒険者となると…キミが真っ先に思い浮かんだんだ」 「褒めてるのかしら、それ…」 不満げに頬を膨らませるククル。 「それに…」 「それに?」 「相手はエレゼンなんだ」 「やるわ」

2016-01-12 08:42:41
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

思えば早まったことをしたのかも知れない。 ククルはチョコボに乗りながら己の意志の弱さを恨んでいた。 「エレゼンと言うだけで待ちあわせの場所だけ聞いて飛び出してくるだなんて、我ながらなんて無計画なのかしらね…」 経緯はどうあれ、指導役という事ならそれなりの準備が必要でもあったのに。

2016-01-12 14:10:52
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

少なからず、ヒーラーである彼女が指導できる相手、とするならば、同じヒーラーか防御役なのであろう。ミューヌは彼女のヒーラーとしての腕前をよく知っているからだ。 無論、ククルはヒーラー以外にも対応出来るだけの実力があった。これまで経験してきた様々な依頼や任務の数は数え切れない。

2016-01-12 20:31:34
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

考えていても仕方ない、そんなため息をひとつ漏らすと、待ち合わせ場所であるクルザス高地への道中にある街、フォールゴウドで消耗品を買うために、チョコボの進路を変えた。 やるからには最後まで徹底的にやるわ、それが彼女の口癖だった。

2016-01-12 20:37:56
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

フォンフォン、とリンクパール特有の呼出音がする。それは、まだあどけなさの残る顔立ちをしたエレゼン族の少年の耳元からなっているものだった。 「…本当ですか!ああ、良かった…ありがとうございます」 それは数日前に依頼した冒険者ギルドからのもので、指導役が見つかったと言う内容であった。

2016-01-12 20:52:14
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

引き受けてくれた冒険者はククル・クルと言うララフェルの女性で、ギルド内でもトップクラスのヒーラーとの事だった。 「その方はもう向かわれているんですね?…わかりました、支度をしておきます」 本当にありがとうございました、相手もいない部屋の中で、少年は深くお辞儀をして会話を切った。

2016-01-12 20:57:20
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

荷造りは既に済ませていた。彼の荷物は小さな麻の袋と、分厚い木材をつなぎ合わせた簡素な盾、そして古ぼけた片手剣だけ。 先ほどまで横になっていたベッドを整えて部屋を出ると、少年は階下へと足早に降りていった。 玄関口へ出ると、この砦の主であるエレゼン族が待っていた。 「…イイ笑顔だ」

2016-01-12 21:04:32
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

「オ、オルシュファン様!」 慌てて姿勢を正そうとする少年を、オルシュファンと呼ばれたエレゼンは手で制した。 「気にするな。それよりも、お前を指導してくれる冒険者は見つかったようだな」 「は、はい!先ほど連絡があり、こちらに向かっているそうで…」 頷くオルシュファン。 「名は?」

2016-01-12 21:07:42
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

「その方の…ですか?ククルという、ララフェル族だそうです」 その名を聞いたオルシュファンは、一瞬驚いたように目を開いたが、すぐに納得したのか笑顔で頷き、つぶやいた。 「相変わらずイイ活躍をしているのだな、友よ…」 そして不思議そうな顔で立ち尽くす少年に向き直る。

2016-01-12 21:25:14
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

「その冒険者ならば、必ずお前を立派な騎士にしてくれるだろう。技術や見た目ではない、イイ騎士の精神をしっかりと学んでくるのだ」 「は、はい…!」 差し出された大きな手のひらを、躊躇いながらも少年は握り返す。 そして、見送るオルシュファンへ深々とお辞儀をして、力強く歩きだした。。

2016-01-12 21:42:51
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

その日のクルザス中央高地は快晴だった。見渡す限り積もった雪に、日の光が反射して煌めいている景色は、この辺りに住む人間でもそう見ることは出来ないほどの珍しい光景であった。 フォールゴウドを後に、北部森林から中央高地へと入ったククルは、さらにもう一箇所寄り道をすることにした。

2016-01-13 01:30:56
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

雪原に埋もれる様に築かれたアートボルグ砦郡。その中の一つに、彼女が会っておきたかった相手がいた。 控えめなノックの音。砦の中にいた男、フランセルは、ゆっくりと扉を開いた。 「フランセルさま!」 「やあククル。久しぶりだね」 彼を見つめるククルの笑顔は、雪のように煌めいていた。

2016-01-13 01:39:43
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

ちょこんと椅子へ腰掛けたククルを確認すると、椅子を隣へ動かして自らも腰掛ける。 「会えて嬉しいよ。今日はどうしたんだい?」 当たり障りのない会話。しかし彼女は嬉しそうに言葉を返してくる。 「ドラゴンヘッドまでギルドの依頼で。せっかくなので、フランセル様にもご挨拶を、と思って!」

2016-01-13 01:45:44
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

「ドラゴンヘッドか。またオルシュファンのところへ?」 「そうだったら嬉しいのですけど…残念ながら別の依頼ですのよ…」 心から残念そうなため息をつくククルを見て、フランセルは微笑んだ。どんな依頼であれ、きっとまた誰かの力になるために彼女はここに来ている。 自分を救ってくれたように。

2016-01-13 01:56:05
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

「来てくれたのは嬉しいけれど、依頼人が待っているんだろう?なら早く行かなくちゃ」 覗き込むような姿勢で言うと、ククルは顔を赤らめて俯いた。 「また、いつでもおいで」 「…ええ、仕事が片付いたら、必ず来ますわね!」 遠ざかっていく小さな背中へ、フランセルは静かに祈りを捧げた。

2016-01-13 02:03:59
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

少年が詰め所を出ると、ちょうどギルドからの依頼を終えた冒険者の団体がドラゴンヘッドへと訪れていた所だった。 ルガディン族やミコッテ族など、様々な種族の屈強な冒険者たちが、チョコボを休めながら今倒してきたであろうモンスターの話や、新型の武器の話で盛り上がっている。

2016-01-13 02:11:58
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

「ククルさん、か…」 一体どんな人なのだろう。ララフェル族は背丈が小さい。エレゼンである少年はまだ成長の途中ではあるが、それでもかなりの身長差があるだろう。 「…やっぱり、目線は合わせて喋るべきだろうか」 そんなことをボヤきながらその光景を眺めていると、不意に声をかけられた。

2016-01-13 02:16:40
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

「ねえちょっと?」 振り向いたが、そこには誰もいない。気のせいか、と思ったところに、苛立った様なさっきの声がまた聞こえてきた。 「どこを見てますの?!下よ!」 慌てて視線を落とすと、そこには赤毛でおかっぱ頭のララフェルが、むくれた顔でこちらを睨んでいた。

2016-01-13 02:20:39
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

間違いない、この人がククルさんだ。少年はそう確信したものの、彼女のキツい視線に気圧されて言い出すことができなかった。 「ララフェルを見たことがないのかしら…まあいいわ。あなた、この辺りであなたと同じエレゼンを見かけなかったかしら?多分イケてる人よ」 「…え?」 思わず声が出た。

2016-01-13 02:26:05
ネコゼ・ド・スケベニンゲン @savage_paw_kick

「いや、あの…」 「モジモジしてないでハッキリと言ってくれるかしら。そうでなくてもさっきグゥーブーのくしゃみがカスってイライラしてますのに!」 どうやらいろんな不幸が重なってしまったようだ。少年は覚悟を決め、告げる。 「依頼人は、僕です…!」 「…はあ?」

2016-01-13 02:34:11

侵攻編