フロガ/シナリオ前後談

要約みたいなもん
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雲谷戸 @kumoyato

「グランクレスト新年コン 信念の下に集え~初心者撃滅の誓い~」、maesonn様の卓にてお世話になりました。 というわけでPL4、復讐に燃えるアーティストさんのフロガです。ありがとうございました。 pic.twitter.com/u47IIFx6dF

2016-01-13 00:44:22
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こはつくで死 @trpgyato

フロガ(φλογα)、本名は不明。元々はクレストを有しており、父は双槍の乱の鎮圧に際して功績をあげて王から領地を与えられた(一代貴族)。ところがある日「怨讐騎士」により領地は火の海に、家族は脱出を図るも、突然現れたロードがフロガの目の前で両親と従者たちをゴミのように切り捨てる。

2016-01-13 01:17:37
こはつくで死 @trpgyato

自分を庇って殺された父親の腕を、ロードは野菜でも切るかのように落としその腕からクレストを奪った。「腕を出しクレストを渡すならば命は助けてやる」と冷たく笑うロードにされるがまま、命だけは残ったが、彼はこの事件によりフロガは家族、幸福で平穏な生活、クレストを失う(離別、敗北)。

2016-01-13 01:22:51
こはつくで死 @trpgyato

突然襲った悲劇はあまりに重く、絶叫した彼が次に顔をあげたときには、それまでの幸福な時間も、両親の顔も、事件のことも、果ては彼の名さえも、恐怖と絶望が全てを潰して彼から消し去った後だった。見回せば血の海。死体の海。振り返れば火の海。なにも分からぬまま彼は歩いた。

2016-01-13 01:28:58
こはつくで死 @trpgyato

放浪するかのように辛うじて「生きている」だけの彼を救ったのは、ある日、戦いの後に現れた聖なる輝きであった。その主の名はアレックス=レンスター、レンスター侯国の王子である。年若き、否、彼より幼い姿の内側から溢れ出る清らかさと強さを感じて、同時に彼は時折彼を苛む悪夢を回想する。

2016-01-13 01:35:37
こはつくで死 @trpgyato

血の海、死体の海、火の海。もしかするとそれはかつて己の見た景色で、もし害為す力に対抗しうるだけの力があれば、二度とそれを目にすることはないのではないかと、彼は聖なる輝きを遠くから見つめる。あの輝きはその力なのではないかと、彼は希望する(因縁、憧憬)。

2016-01-13 01:40:03
こはつくで死 @trpgyato

これまで彼は、どれだけ困窮しようとも、汚れたものや悪しきものに手を伸ばすことを拒んできた。それが父の教えであったと知るはずもなかったが、ただ、何故かその誇りは記憶を離れて彼の中に刻み付けられていた。それを捨てるくらいなら命が先だとすら彼は考えていた。

2016-01-13 01:45:15
こはつくで死 @trpgyato

だが彼の腕に最早クレストはなかった。彼にあるのは、彼から全てを奪った「怨讐騎士」への激しい憎悪、収まらぬ怒り、そして復讐の念。先程まで目の前の場所で繰り広げられていた戦いも、レンスター侯国と怨讐騎士の軍によるものであったと街の人に教えられた、その時に何故か彼の心は激しく燃えた。

2016-01-13 01:50:11
こはつくで死 @trpgyato

どうしても許せなかった。自らから全てを奪ったのはかの怨讐騎士であった、彼の本能が叫び暴れて、何も覚えてなどいないはずの彼にそう告げた。それを殺す。そうしなければならない。己の名すら思い出せぬ心に暗い炎が灯ったのは何故だったのか、彼は知らないままで(因縁、憎悪/執着)。

2016-01-13 01:54:58
こはつくで死 @trpgyato

聖なる輝きが遠ざかり、去っていく。それと同時に近づき彼を飲み込むのは邪悪の暗がりで、しかし彼は彼の誇り(目的、美学)と葛藤しながらも、それを拒むことができなかったーー邪紋が彼の全身に浮かび上がる。かの邪悪を邪悪で制することに、何の問題があるのか。

2016-01-13 01:59:15
こはつくで死 @trpgyato

怨讐騎士は嘗て俺に喧嘩を売ったのだ。何があったかは知らないが、売られた喧嘩は買わなければならない。そして必ず討ち倒さなくてはならない。それを果たさぬ限りは何も持たない俺が真の誇りなど得られるはずがないのだ。だから、俺の敵は全て、俺が葬ろう(禁忌、怯懦)。

2016-01-13 02:05:41
こはつくで死 @trpgyato

彼の足は王宮に向かった。一人では戦えないことを彼は知っていた。なにより一人で生きることもできないと彼は知っていた。あの日、あの夜、幸せな食卓で食べるはずだったカレーのことを覚えているはずもなかったが、常に一人であることはつまらぬことだと、知っていた(趣味趣向、カレーは食えない)。

2016-01-13 02:11:01
こはつくで死 @trpgyato

必ずや王の力になってみせましょう。これまでに十分な教育を受けてきたのか、一人のアーティストとして自らを軍に売り込む彼の物腰はどこか高貴さを纏っていた。「名は?」と問われて彼は困窮する。仕方なく記憶のないことを告げる。今の己にあるのは火の海の光景と、己を焼く復讐の炎のみであると。

2016-01-13 02:18:23
こはつくで死 @trpgyato

戸惑い溜息を漏らす官吏を宥めるように、傍に立つ男が優しく笑った。無いならば新たに得れば良いのだと、その男は名のない青年に微笑みかける。復讐の炎に焼かれるのではなく、君自身が正義の炎になればいい。フロガ、なんていう名はどうだね?異国の言葉で「炎」そのものをいう言葉だよ。

2016-01-13 02:27:31
こはつくで死 @trpgyato

異論のない彼は感謝の言葉を述べた。よしよしと満足そうな男の背中を見送り、与えられた名を反芻するーーそれだけで、なにかが満たされたような、そんな気がした。

2016-01-13 02:31:47
こはつくで死 @trpgyato

そして頭角を現したアーティスト、フロガのもとに、いつか見た輝きが再び訪れ直々に「怨讐騎士討伐」の任を受けることになるのは、その先の話。(→「怨讐騎士・ディルムスの乱」に続く)

2016-01-13 02:37:12

(シナリオ終了後)

こはつくで死 @trpgyato

「王……お人払いを、願いたく」怨讐騎士討伐の褒美を与えるから望みを申せと呼ばれてフロガは玉座のもとに跪いていた。彼の記憶は相変わらず途中で遡れないものではあるが、彼から家族を、そしてクレストを奪ったのは自分であると仄めかすような王の言葉が彼の心の奥底を凍らせたまま。

2016-01-13 02:52:29
こはつくで死 @trpgyato

「よかろう。それで?何が望みか。私の命か、このクレストか?尤もそれでおまえの父が戻るわけではないが」嘲りを隠そうともせぬ冷たい声がフロガの怒りを掻き立てる。それを軽くいなして、そうではございませんと小さく頭を振る。「許されるならば私の父の名を、教えていただきたく存じます」

2016-01-13 02:58:02
こはつくで死 @trpgyato

「王。最早私に復讐の心はございません。貴方が私共に何をなさったのか知りたいとも、知ったところでそれを許せるとも存じません……過去の記憶のない私にクレストは不要でございます。ロードとして名を馳せる意思もございません。故に」

2016-01-13 03:03:44
こはつくで死 @trpgyato

愉しそうに己を見下ろす、舐め回すような王の視線を全身で感じる。アレックス様とこうも違うかと心の中で毒づいた。「故に……私を私たらしめた父母の名を。ただ知りたいと望みます」。少しの沈黙の後、王の嘲笑ーー「忘れたわ」と吐き捨てる声。

2016-01-13 03:11:57
こはつくで死 @trpgyato

「おまえはおまえが殺した兵の数を覚えているか?況してその名まで覚えているとでも?ははははははは、取るに足らぬ道具の名などとうに忘れた」神経を逆撫でする言葉、意図的に怒りを誘う声音。耐えろとフロガは己に言い聞かせる。「……ふむ、だが」

2016-01-13 03:16:33
こはつくで死 @trpgyato

「記録ならば残っている。その閲覧を特別に許してやらぬでもない」はっと顔を上げる。「しかしアーティストごときには些か過ぎた報酬だ。条件を呑め。おまえの父がそうであったように、おまえも王の道具として精々役に立つんだな。しかし私には要らぬ。良いな」

2016-01-13 03:23:25
こはつくで死 @trpgyato

数刻して、フロガは特別に用意された閲覧スペースに通された。特に何があるわけでもない、最低限の記録が用意されたと思しきその空間に、知った顔。「ま、またおいでになるとは熱心でございますね、ハハハハハ……」怯えの色を帯びる声。「貴様に用はない、ターラント。俺の用のあるのは記録だけだ」

2016-01-13 03:28:26
こはつくで死 @trpgyato

王が口にした領名と時期を頼りに頁をめくる。其処にあったのは夫婦とその息子の名ーーフロガはそれを震える指で辿り、しかし己に記憶の戻らぬことに安堵しながら、消えそうな声で文字を読み上げる。「父上……オネット=ニュアージュ……と、フィエリテ=ニュアージュ」

2016-01-13 03:39:08