おおくらくんお見舞いしりーず

かおり @orange_shake_

【お見舞い・7】 たーくんが映ってるけどこっち見ないし…あれ、これもしかして、隠し撮り？ よく見ると、携帯をいじりながらたーくんが何かぶつぶつ言ってる。 独り言なのか、よく聞こえないから音量を上げて聞き直す。 『いやそらあっためてあげたいけどさぁ…』

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【お見舞い・8】 『直接会われへんわけやん？触れんのにどうやってあっためたら…』 すると、画面にはいないけど丸ちゃんの声。 "なんか、あったかくなるような言葉かけてあげたらいいんちゃう？" 『あったかくなる言葉…あったかい言葉…』 それから無言で携帯を触ってるたーくん。

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【お見舞い・9】 あ、もしかして。 さっきのたーくんからのメッセージを読み直す。 「これ…」 そっか、あったかくなる言葉。 あったかいもの。 たぶん丸ちゃんそういう意味で言ったわけじゃないんだけどなぁ… でも、そんな彼の気持ちが嬉しくて、同時に会いたくてたまらなくなる。

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【お見舞い・10】 「……、」 普段ならバカって笑えるのに、熱で弱ってるからか、ぐちゃぐちゃな気持ちが涙になって出てくる。 熱のせいだよね、うん。 寝よう。 携帯を置いて、布団をかぶり直す。 〜♪〜♪ そのとき、携帯が鳴った。 着信: たーくん

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【お見舞い・11】 一瞬携帯を手にとって迷った後、元の場所に置いた。 今声を聞いたら、どうなっちゃうかわからない。 しばらくすると着信音が止んで、今度はメッセージを知らせる着信音。 『寝てる？』 『薬ちゃんと飲んでる？』 『水分とってる？』 『ごはん食べてる？』

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【お見舞い・12】 『しんどい？』 『俺、何かできへん？』 連続で送られてくるメッセージをぼんやり眺めていると、また着信。 「…あ！」 焦って、通話ボタンを押してしまった。 『◯◯？』 「…たーくん」 『ごめん、起こしてもーた？』 「ううん、大丈夫…」

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【お見舞い・13】 『具合どう？』 「ん、まだ熱あって…」 『そっか…』 「あ、でも解熱の舞は見たよ」 『お♡じゃあ、すぐ治るで。俺あれめっちゃ本気でやったからな』 得意げに笑う声に、自然と笑顔になる。 『なぁ…俺もしんどいねんけど』 「え、大丈夫？」

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【お見舞い・14】 『大丈夫ちゃうー。1週間も会われへんなんて寂しくて死んでまう。』 「そっちかよ」 精一杯の強がり。 そんなの、私だって。 『なぁー、我慢できへーん。』 「まだ1日目なんだけど」 『やから、毎日会いに来ようと思って。』 「…？」 『来ちゃった♡』

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【お見舞い・15】 まさか。 カーテンを開けて、部屋の窓から下を見ると。 『んはっ、会いたかったで♡』 電話を耳に当てて、私を見上げるたーくん。 「………」 『え、ちょ、どうしたん⁉︎開けてぇやぁ！』 無言でカーテンを閉めると、たーくんの焦った声。

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【お見舞い・16】 でも、今は開けられない。 「たーくん…」 『なぁん、泣いとんの？』 「泣いてない」 『じゃあ顔見してやぁ。』 「やだ」 『なんでぇ』 「…お化粧、してないし」 『俺、すっぴんの方が好きやけど』 「お風呂も入れてないし」

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【お見舞い・17】 『その熱で入ってたら怒るで』 「……」 カーテンの隙間から盗み見ると、相変わらずニコニコとこちらを見上げてる彼。 『お、それ似合うてるやん♡』 勝手に着てた、前にたーくんが置いていったパーカー。 ずっと1人でこのパーカーにしがみついてきた。

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【お見舞い・18】 「…たーくん、」 『ん？』 「…しんどい」 『…ん。』 「頭痛いし、いっぱい着てるのにすごく寒い。」 『うん』 「もう、やだぁ…」 いつの間にか、覗いていただけだったカーテンを開けて窓に近づいて 、情けない泣き言。

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【お見舞い・19】 『あぁ〜、泣かんといて？俺も泣きそうやから。』 そう言うたーくんは確かに辛そうな顔をしていて。 『ほんまは今すぐぎゅーってしてあっためてあげたいのになぁ、何もしてあげれんくてごめんな？』 「…ううん、会いに来てくれた、だけで、十分…」

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【お見舞い・20】 『ほんま？じゃあ、明日からも来てええ？』 「たーくん、忙しいでしょ…？」 『忙しいでー。だから、お前の顔見な頑張られへんの。』 「ばか」 憎まれ口も何もかも、彼の笑顔に吸い取られて。 「…ゴホッ」 安心したと同時に気が緩んで、咳が止まらなくなった。

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【お見舞い・21】 『あーあーあー！ごめんな、無理さしたな？ごめん。もう電話切ろうな、』 「やだっ…」 思わず出てしまった本音。 深呼吸して、息を整える。 『…ほんまさ、近づけへんときに限って可愛いこと言うとかナシやで。罪すぎるやろ。』 苦笑いのたーくんが、足踏みしてる。

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【お見舞い・22】 「あ、寒い？」 『ちゃう、体が勝手にお前んとこ行こうとしてんの必死で止めてる』 「何それ(笑)」 『お、笑った♡』 たーくんの足が止まった。 『しんどいやろうから無理かなと思ってたけど、笑顔見れた♡良かった。』 「たーくん…」 『明日も来るな？』

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【お見舞い・23】 「帰っちゃうの？」 『ちょおそれホンマやめて、我慢できへんくなるから‼︎』 笑いながらまた足をバタバタさせ始める。 「嘘。(笑)来てくれてありがとう。」 『待て、嘘は傷つくやろ。(笑)ちゃんとごはん食べて薬飲んで、あったかくして寝るんやで。』

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【お見舞い・24】 「うん。」 『じゃあ、また明日な♡』 チュッて電話口から聞こえた声と、窓の下に目をつぶったたーくんの顔。 通話終了の画面を確かめて外を確認すると、たーくんが『あっ！』て言った顔をした。 すぐに携帯を出すと何かゴソゴソしてる。

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【お見舞い・25】 たーくんが携帯をしまったかと思うと、今度は私の手元で鳴る携帯。 『大事なこと言うの忘れとった！』 『愛してるで♡』 そのメッセージを見て、もう一度彼を見ると満足そうに笑って、手を振った。

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【お見舞い・26】 『見られてたら帰りたくなくなるから、先カーテン閉めて』 そんなメッセージに苦笑するのは、それから2分後のこと。 【おしまい】 pic.twitter.com/boQSa9nnwA

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