- emyuteitoku
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「はちさん…ノット…所属不明艦一隻まっすぐこちらに接近中です」チャーリーは目を見開いたまま絞り出すように言った。報告を聞いてアルファの顔が険しくなる。「単艦で8.3ノットか、戦速出される前に振り切れるかな」「8.3じゃない!83ノット!150キロ以上出ているんですよ!」 25
2016-02-15 00:06:22「いや…それはないでしょ。レースボートでも80キロくらいなんだから」誤作動としか思えない数字にアルファが首を傾げる。報告したチャーリー自身も計器が示す数字を信じられずに、腕の操作盤を何度も叩いている。焦る二人とは対照的に筑摩とブラボーは冷静だった。 26
2016-02-15 00:07:26「距離はどれくらいですか?」筑摩が問う。チャーリーは申し訳なさそうに目線をそらした。「8キロまで接近しています。ソナーの方ばかり気にして気付けませんでした。最初も誤作動かと…」筑摩はチャーリーの腕にある画面を覗き込んだ。走査線が通るたびに歪に連なる点が表示されている。 27
2016-02-15 00:08:50点は増減を繰り返しながら、中心へと近づいていた。「後ろのは、波だ」筑摩がつぶやいた。「蹴り上げている波が大きすぎて一緒に拾っているんだ」「83ノットか、あいつにとっては早歩き程度でしょうね」筑摩のつぶやきにブラボーが答えた。彼女は背負っていた対物ライフルを構える。 28
2016-02-15 00:10:26砲戦準備、各自武装を整え終わる頃と同じくして水平線から白波が顔を出す。「変に刺激してはダメ。向こうに撃つ気があれば、もっと前に砲撃しているはず」ブラボーが待機の支持を出す。150キロの超高速、筑摩達の元まで2分もかからない。だが何もせず待つだけでは長い長い時間。 29
2016-02-15 00:12:12やがてそれは筑摩達の前で船足を止めた。目に飛び込むのは、見上げるほどの長身、両の手に備えた鉄塊の如き艤装。それの煌めく左の青い瞳が4人を見た。旧式艦の限界の、さらにその先にある潜在力を引き出した北方の悪夢。重巡リ級ノーマルモデル、その異名はジュデッカ・ゲットー。 30
2016-02-15 00:14:29重巡洋艦??? ジュデッカ・ゲットーと呼ばれていたはぐれ艦隊の旗艦。幌筵島を拠点とした北方海域への進攻が始まったころからすでに確認されていた非常に古い深海棲艦。出会ってもすぐに転身するため闘いを好まないとされてきた。 続
2016-02-15 00:17:38仲間の駆逐艦が沈んだ日から振舞いは激変、旗艦が単独航行し艦娘、海上歩兵、果ては深海棲艦にまで甚大な被害を与えるようになり北方戦線崩壊の一因とされた。命に対し敏感なのか、撃沈されたのは那智だけであり、彼女の襲撃による戦死者は少ない。 pic.twitter.com/4uYotDk7oY
2016-02-15 00:18:16