このグルメに一手を賭ける

村井ニボシ @niboshi2000

人間、ずっと何もしていないと何かしたくなるものらしいけど、私はそうでもないということが長年のニート生活によってわかっている。ずっと何もしなくても、歌でも歌っていればわりと平気。低刺激の状態が長く続けば、欲求がしだいに無くなっていくものだと思う。

村井ニボシ @niboshi2000

そうして高次な欲求がだんだん減退していく中で、食欲と性欲と睡眠欲の三大欲求はしっかり残り続けるということがわかった。ああ、高校の倫理の教科書の最初のほうに書いてあったこと（マズローとかそういうの）は正しかったのだなあ、ということを発見したしだいです。

村井ニボシ @niboshi2000

で、それぐらいしか確固たる欲求がないがゆえに、その三欲は大事にしているわけで。私はニートのくせに食事にはうるさい。食べ物は何よりも大切なものだと考えております。料理というものを、人間文化のなかで、一等愛しております。

村井ニボシ @niboshi2000

食べ物は命よりも大切だ。なぜならば、命はおのれしか動かすことができないが、食べ物は他者をも生かすことができるからである。（詭弁）

村井ニボシ @niboshi2000

そんなわけであるからして、私にとってランチタイムは生きるか死ぬかのキヨミズ・ステージである。誰しも、街中でこれからどの店に入るかに思い悩み、彷徨した経験はあると思う。私は優柔不断で小心な性格も影響して、それはもう心の中で七転八倒する。すべては最善を意識するがあまりに。

村井ニボシ @niboshi2000

少年老いやすく、飯ありがたし。短い一生のうちのこの一昼飯を、どの店に託すかを思考しながら歩く私は、さながら祖国を追われた難民のごとくである。ただ単に腹を満たす事だけを願うものではない、『所属』を求めてもいるのである。

村井ニボシ @niboshi2000

今はからっぽで宙ぶらりんなこの消化器系の処遇を一任できる、そして寄る辺無なきこの身を預けられる場所を求めているのである。ランチタイムの放浪には、そういう側面がつきまとうものだと思う。

村井ニボシ @niboshi2000

さて、それだけの覚悟で『身請け』して貰う以上、店選びをしくじったときのダメージも大きくなるのだ。食べ物にこだわりがない人にはわからんのだろうけど、それはもう地団駄を踏まんばかりに残念無念なのだ。今日は私のランチタイムの失敗談をお送りします。（ここまでが前置き）

村井ニボシ @niboshi2000

「ちびまる子ちゃん」にもそういうこと言ってる部分があったけど、前もって食べたいもの（食べるもの）が決まっていると、『胃がその食べ物のカタチになる』ものである。ラーメンが食べたいときはラーメンの胃であり、フランス料理が食べたいときは胃がトリコロールなのである。

村井ニボシ @niboshi2000

連続ツイート失礼しております。こういうのって断るべきなのだろうか。

村井ニボシ @niboshi2000

で、食べるものの予定が崩されると、消化器系がガッカリしたり慌てふためいたりするのがわかる。「今日は天ぷらそばを食べよう」という腹積もりで入店したところ「そばが切れてしまいまして、うどんになりますが宜しいですか？」と言われ、まさか「じゃあ帰る」とも言えずに

村井ニボシ @niboshi2000

天ぷらうどんをすすることなどを想像するだに恐ろしい。期待通りの物を食べられないと、拭えぬ違和感を感じるものだ。対して、食べたいものが決まっていて、その通りのものを食べられると、おおむね満足できるものである。

村井ニボシ @niboshi2000

この「食べたいもの」は意識のレベルで決定していても意味がない。身体の意思で食べたがっていないといけない。で、こういうことってあんまりないわけですよ。「身体がハンバーグを欲している」とか確信できることって珍しいわけですよ。

村井ニボシ @niboshi2000

幸いなるかな、求める味が確かな者よ。満腹はあなたたちのものである。その昼、珍しく私は食べたい物が確固として定まっていた。カレーが食べたいと思っていた。それもスープカレーやインドカレーではない。CoCo壱番屋みたいな、ごく普通のルーカレーが食べたいと思っていた。

村井ニボシ @niboshi2000

冷たくなると表面に膜が張るようなやつがいい、人参玉ねぎ豚肉が入ってるのがいい、黄色っぽい昔ながらのカレーがいい、と具体的なイメージさえ固まっている。ここまで出来上がっていると、完全に一致するものを探すのが困難であるが、まあ近似値でいいのだ。街中ならカレー屋ぐらいいくらでもある。

村井ニボシ @niboshi2000

@tricken そうですか、ありがとう。

村井ニボシ @niboshi2000

私はその日の昼食の勝利を確信した。しかし、ここで私の精神的な脆さが顔を覗かせる。前にも一回書いたけど、私は吉野家やなか卯やすき屋に入ったことがない。なんとなくああいう店を敬遠しているのだ・・・。あの、ファーストフードだか普通の店だかわからん、食券だかレジだかわからんのが嫌なの！

村井ニボシ @niboshi2000

そういえば、大学に４年間行ってて、一度もファミレスにも入ったことないなあ・・・。なんか、定食屋よりも入りづらいの。ああいう店は、自分のあずかり知らないシホンシュギ的な巨大なシステムで回っているような気がして恐ろしいの。コンビニも嫌いなの。

村井ニボシ @niboshi2000

コンビニはそれほど嫌いでもないや、心底どうでもいい訂正。

村井ニボシ @niboshi2000

カレーの話に戻る。なか卯とかで、そういう普通のカレーがやってるのは知っている、しかし、今さらそういう店に入るわけにも行かない。きょうび吉野家に入ったことないなんて珍しいから、このパーソナルはキープしたい。人見知りをこじらせて、それをアイデンティティと誤認するようなものであるが。

村井ニボシ @niboshi2000

カレー屋というよりも「カレースタンド」といった方がふさわしいようなシンプルな店もあるが、そういうのにも入ったことが（当時）なかったから行きづらい。かといって、本格的なカレー屋だと変に手の込んだものが出てきてしまい、普通のカレーが食べたいという狙いが外される可能性がある。

村井ニボシ @niboshi2000

あ、思い出した。そのとき、カレースタンドっぽい「おの」っていう店に入ろうかとも思ったんだけど、その店の一番自慢、主力らしい商品が「オムライスカレー」だからやめたんだ。新規の店を開拓する場合は、その店のデフォルトの味を食べたいものであるので。

村井ニボシ @niboshi2000

ここまで選択肢が狭まると進退窮まったように見えるが、さにあらず、私には奥の手があった。洋食屋である。洋食屋ならば、たいていカレーをやっている。しかも、十中八九昔ながらのやつだ。欧風ビーフカレーの可能性もあるが、そのときはそのときだ。

村井ニボシ @niboshi2000

胃をポークとビーフのダブルスタンダードに調整しつつ、私は洋食屋を探した。そういえば、と思い出す。デパート上のレストラン街に、最近洋食屋がオープンしたはずだ。そんな記憶があった。

村井ニボシ @niboshi2000

デパートの入り口には、入ってる店の名前とその店の料理を写した写真を並べた看板が立っている。私はそれを見に行った。はたして洋食屋「赤クマ食堂」の名前があった。しかもカレーの写真が飾られていた。