2016年2月25日

アルバム『約束』

連ツイしたけど、読み返したい時の為に自分用纏め。
1
不気味遺産 @bukimi397

「私、これを最後の音楽活動にしようと思うの。」 「…ふぅん」 小さなライブハウスでの演奏を終えた後の打ち上げで、千早は打ち明けた。 あの雨の日以来、2人は時折一緒に演奏するような関係になっていた。 「レーベルからも、次で結果を出せないようなら、って言われたわ」 「…そーなんだ」

2016-02-25 00:49:51
不気味遺産 @bukimi397

正直ジュリアは心のどこかで千早を馬鹿にしていた。かつて千早にギターを教えたのは ジュリアである。今ではアマチュアで音楽を楽しんでいるとはいうものの、 その教えた相手が、未だに、自分がとうの昔離れた場にとどまっている ことに、嫉妬にも卑下にも似た感情を持っていた。

2016-02-25 00:50:37
不気味遺産 @bukimi397

そんな気持ちもあり、千早の「最後」という言葉を聞いて、 (まあ、そうだろうね)と思う程度だった。 「だから、最後の曲。…私の曲のアレンジ、ジュリアにお願いしたいの。」

2016-02-25 00:51:07
不気味遺産 @bukimi397

(…安く見られたもんだな)ジュリアは正直少し苛立った。 「ちょっと聞かせてみてよ」 最後の曲に、あたしを? 諦めて適当に作ったであろう曲に? どうせつまらない曲だろう、こっちこそ適当に理由をつけて断ればいい。 そんな風に思っていた。この時までは。

2016-02-25 00:51:53
不気味遺産 @bukimi397

「…ふざけんなよ。」 ジュリアが千早の曲を最後まで、声一つ漏らさず聞き終えたあとに出た最初の言葉。 「こんな…こんな曲作れるヤツがこれが最後って?どれだけあたしのこと馬鹿にしてんだ!」本心だった。嫉妬も世辞も一切ない気持ちだった。

2016-02-25 00:54:23
不気味遺産 @bukimi397

「…そういう覚悟で作った曲よ。人生最後の曲のつもりで。これが最後でもいいって。」 ジュリアは目からあふれ出る涙を、止めることができなかった。

2016-02-25 00:54:57
不気味遺産 @bukimi397

しばらくうつむいたままジュリアは何も言わず、大きくため息をついた。 「…わかった、やってやる。私がこの曲を、レーベルの連中が 頭下げに来るくらいの最高の曲にしてやる。その自信がある。 でも、一つだけ約束しろ。二度と、音楽をやめるなんて口にするな。」

2016-02-25 00:55:46
不気味遺産 @bukimi397

千早はしばらく黙っていたが、やがて小さくうなづいた。

2016-02-25 00:56:10
不気味遺産 @bukimi397

他人の曲で泣いたのはいつぶりだろうか… 趣味でいいと思ってた、十分だと思っていた、それで幸せだと思っていた、思いたかった。でも、あの曲に、いつかの くすぶっていた思いをぶん殴られてしまった。思い出してしまった。 あの頃の青い蒼い思いを。

2016-02-25 00:57:37
不気味遺産 @bukimi397

この日を境にジュリアは再びプロフェッショナルとして 音楽の道に進み始めるのだが、それはまた、別のお話。

2016-02-25 00:58:35
不気味遺産 @bukimi397

それから数か月後、30歳を迎えた如月千早の記録的ヒットを出したアルバム、『約束』 がリリースされた。全13曲の中の13番目に、彼女が生涯最後のつもりで書き上げたという曲が 収録されている。ラストを飾るその曲名は、『私のすべて』。

2016-02-25 00:58:58

コメント

コメントがまだありません。感想を最初に伝えてみませんか?